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2025.10.23
2025.10.23
レベチです!広尾学園の底力がここに!「乳がん診療体験セミナー2025」
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広尾学園高校では、毎年けやき祭翌日の振り替え休日を使っての「乳がん診療体験セミナー」が恒例となっています。

おしゃべり病理医こと小倉加奈子が広尾学園で病理診断を体験するセミナーを開始したのは2014年。当初は、病理診断を体験してもらうことに重きを置いたセミナーを開催してきましたが、2016年から乳腺外科医の小坂泰二郎先生を招き、乳がんの診療全体を体験してもらう形に切り替え、毎年少しずつブラッシュアップを繰り返しながら、高校2年生限定の超ハイレベルなセミナーに進化してきました。

2016年当時に参加した生徒さんの何名かは、前期臨床研修を終えて、産婦人科や内科や脳神経外科のドクターとして活躍中で、たまに診療中に再会したり、連絡をもらったりして、長くこのセミナーを継続してきて良かったなぁとしみじみと幸せをかみしめたりすることもあります。

MEdit Labでは様々な学校で出張授業を行っていますが、時折、「広尾学園さんで行われている乳がん診療体験セミナーを本校でやっていただけませんか」というお問い合わせをいただきます。しかし残念ながら、ほぼすべてのご依頼をお断りしています。

なんといっても依頼される学校の先生方が主体的に本セミナーにコミットしていただくことが必須であり、先生方も本気で学んでいただく必要があること、プレゼンテーション力や答えのない課題に向かう忍耐力を育むような教育カリキュラムが整っていない学校では、どんなに学力レベルの高い学校でも本セミナーを開催すること自体が難しいからです。

広尾学園の先生方と生徒さんの学びの意欲と忍耐力と想像力の賜物である本セミナー、今年度のセミナーの様子をご報告しましょう。

◆病理医、乳腺外科医などあらゆる立場になって考察していく

セミナー冒頭のガイダンスで、病理医しんしんが、「多職種連携の重要性」について参加生徒さんにお伝えします。適切な治療につながるための的確な病理診断を下す病理医、病理診断をもとに様々な背景をもった患者さんにどんな治療を提案するのがいいのか深く考察する乳腺外科医。本セミナーでは主に病理医と乳腺外科医のそれぞれの立場から乳がんについて考察していきます。

◆診断から治療へ、適切ながん診療の流れを理解する

まる一日の本セミナーでは、乳腺外科医の小坂泰二郎先生と、おしゃべり病理医の講義を受けたあと、実際に検査で使う針や超音波を活用して、超音波下の針生検の体験もします。

小坂先生が毎回、鶏肉の中にがんに見立てたオリーブの実をあらかじめ仕込んで用意してくださり、その鶏肉を乳房に見立てて、超音波下でがんを見つけ、そこに針を刺して、検体を採取するという病理検査の流れを理解してもらいます。

その体験と合わせて、バーチャルスライドを用いた病理診断実習が並行して行われ、4つの乳がんのサブタイプの診断に挑戦してもらいます。

その後、グループに分かれて、それぞれ自分たちが担当してみたい患者さんの治療方針に関して、約2時間という非常に限られた時間の中で、様々な参考資料を参照しながら、仲間同士で考察し、まとめた内容をプレゼンテーションしてもらいます。

プレゼンテーションの時間は10分。限られた時間の中で、患者さんの乳がんのサブタイプがどんな種類のもので、どんな治療方針が立てられるか。科学的な根拠とともに、患者さんが個々に抱える様々な社会的要因に対してどのくらい掘り下げて考察できているかを私たちドクターズがジャッジしていきます。

◆レジリエンスとプレゼンテーション能力が試される

本セミナーで検討される事例は、いずれも乳腺外科医の小坂先生が日々の診療の中で、つねに悩ましいと思っている実際の患者さんの事例を参考に作っています。まだ医学部に進学していない高校生が考察するには無理な設定であるといえます。病理診断にしても、乳がんの病理診断は難易度が高く、研修医でさえ、まともに診断を経験したことがあるひとはごく少数です。もともとのセミナーの設定が高校生のレベルに合わせるようには配慮していません。

それでもやってみる。全くわからない状況から与えられた限られた知識を集めて、間違っている可能性があっても自分たちなりの結論を導き出す。可能な限りそれぞれの医療者そして患者さんの立場を想像してみる。そうした試行錯誤や失敗の経験こそを本セミナーでは大切にしています。

今回も広尾学園の高校2年生は、レベチな頑張りを見せてくれました。集中し、患者さんの置かれた状況を想像しながら真摯に治療方針を考える高校生の姿は大変頼もしく、ここから必ず、素晴らしいドクターが誕生するだろうという確信が持てて、私たちも大変励まされ、勉強させられるセミナーなのです。

 

■追伸

広尾学園と順天堂大学は2024年3月に高大連携協定を結び、様々な教育活動を展開しております。関連記事もご覧くださいね!

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