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レッツMEditQ COLUMN
2024.07.04
2024.07.04
病理診断を体感するゲーム「banaoma バナオーマ」お披露目!
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MEdit Labは、 発足以来、 “医学を学びながら、学び方も学ぶ” というトライアルを重ねてきています。ワークショップや出前授業など、いろいろな体験を通し、参加者とともに、主催者側である私たちMEditメンバー自身も学び方をだいぶ学んできたなぁ~と自負しています。

特に感じていることは、「学び方を学ぶ」という視点で、自分たちの診療という仕事を観察すると、専門知識や技量ばかりが重要なのではなく、何気ない日常生活の中の “モノの見方・捉え方” にヒントがあるということです。ふだんは無意識に行っていることに改めて光を当ててみると、こんなところに診療との共通点があるんだな、と目を開かされることが何度もありました。

医療現場で行われているあれこれは、ドラマの影響もあったりして、特別な知識や技術が必要なんだと、その専門性ばかりが強調されすぎている、と思うのですが、決してそんなことはないのです。中高生をはじめ非医療従事者の方がそう思うのは仕方ないとしても、意外と医学生やドクター自身も、自分たちが特別なことをしていると思い過ぎているのではないか、とも感じます。

自分が知覚している情報をどのようなプロセスで処理するか、という大きな枠組みにおいては、医師をはじめとした医療スタッフの様々な診療行為も、中高生のみなさんの様々な科目の勉強法も、家の掃除や料理の仕方にも共通点が見出せるはずです。もちろんそれらはみんな違うわけですが、でも、類似点を知ることができると、新たな発見といろんな工夫の余地が生まれてきます。医学は医学部だけで学ぶものではなく、医療は医療現場に閉じているものでもありません。

◆バナナと病気のグラデーション

私たち自身がこれまで学んだ成果として、今年度のMEdit授業よりお披露目しているのが「banaoma バナオーマ」というボードゲームです! このゲーム、病理診断をバナナの熟し具合で疑似体験してもらうカードゲームなのですが、2019年にSTEAM動画教材用のワークとしておしゃべり病理医が考案したものを、病理医しんしんがカードゲームとしてデザインし直したものなのです。

おしゃべり病理医のMEdit Lab-医学Medicine×編集Editで世界を読む」
7コマ目・バナナの病理診断(医学×歴史 vol.1)
ここでのワークは、バナナの熟し具合を「未熟・適熟・過熟」の3段階にばちっと診断する「病理診断基準」をつくってくださいというもの

そもそも病気を診断するとは、「健常な状態から、連続的に変化していく病態の程度をどこかでバシッと区切って病名をつける」という行為です。ひとつの数値やひとつの所見で判断がつくシンプルなものではありません。白黒がはっきりしていることは稀で、薄いグレーから濃いグレーまで、微妙なグラデーションをよくよく観察し、今後、治療していくうえでこの診断がベストであろうという点を決める、というのが診断なのです。

病気の連続的な変化のメタファーとなるのが、まさにバナナの熟し具合。バナナの熟し具合を三段階で切ってみる、という行為は、まさに目の前にしている大腸のポリープを、正常とするか、癌化のポテンシャルを秘める良性腫瘍とするか、あるいはすでに悪性腫瘍=癌であるのか、というような、実際、病理医が日々の診療で行っている病理診断と類似しています。その類似性をヒントにして、医学知識がなくても簡単に “診断とは何ぞや?” のキモを掴んでもらうために考案したのが、このbanaomaなのです。

◆エディター&デザイナーコンビ、SaiQuicのセンス光る

テーマを決めたら、どんなルールにするのか。ボードゲームデザインについてもだいぶ学んだおしゃべり病理医としんしん力作のゲームということで、腕をふるってくれたのがMEdit Lab専属メディアチームのSaiQuicのおふたり。実は、エディターの金宗代さんとデザイナーの佐伯亮介さんは、これまでも角川武蔵野ミュージアムのEdit Townの書籍デザインなどを手掛けてきており、本をベースにしたプロジェクトの編集やデザインに定評があります。

YouTube 「Musashino50 Episode」角川武蔵野ミュージアムのエディットタウンの制作に関与した50名のインタビュー動画。「全く新しいミュージアムを作る」そのために集まった、ボードメンバー、スタッフ、スペシャリスト、ボランティアなどの話が聞けるシリーズですが、その中に佐伯さんと金さんのインタビューも!下の動画のサムネイルは左が金さん

これまでSaiQuicのおふたりには、このMEdit Labサイトをはじめ、毎年制作しているパンフレットなど様々なデザインを手掛けていただいてきましたが、今回の「banaoma バナオーマ」制作においても、ゲームの目的や意義を深く理解し、パッケージやカードデザインなどかなりのこだわりを見せてくださいました。出来栄えはこちら。かわいくて飾っておきたくなります~。

  

 

SaiQuicデザインの「バナオーマ banaoma」遊んでみたい方はぜひ、「医学をみんなでゲームする2」へ!

そうそう、言い忘れていました。7月20日からスタートする「医学をみんなでゲームする2」では、みなさんが制作したボードゲームをSaiQuicのおふたりがデザインしてくれるというチャンスがあるかも!

ぜひ、お楽しみに!

 

投稿者プロフィール

小倉 加奈子
小倉 加奈子
趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。