お昼に食べたカレーや、朝の味噌汁、昨日の夜食べたりんご…
こんな普通の食べ物が、実は体の中で想像以上の複雑なことをしているって知っていましたか。
2025年5月8日、世界最高峰の医学雑誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』(NEJM)に発表された研究では、私たちが毎日食べている食品に隠された秘密の一端が報告されていました。今日はその最新発見と、実は2000年以上前から東洋医学が言ってきたことがどんなにソックリなのか、みなさんにも分かりやすく紹介します!
◆「未知なる栄養素」〜食べ物に隠された14万の謎の物質〜
「栄養素」というと、学校の授業で習う炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルくらいしか思いつかないですよね。でも、NEJMの論文によれば、実は私たちが食べている食べ物には約13万9000種類もの小さな化学物質が含まれているんです!研究者たちはこれを「Nutrition Dark Matter(未知なる栄養素)」と名付けました。
例えば、ニンニク一つとっても、栄養成分表に載っているのはたった69種類の栄養素だけど、実際には6802種類もの物質が含まれているそうです。アリシンやアホエンというニンニク特有の成分は、心臓を守ったり、細菌をやっつけたりする力があるとわかってきています。
もっと驚きなのは、今使われている薬の約23%が、この「栄養のダークマター」の中に含まれている成分と同じだということ!たとえば、消炎鎮痛剤として知られるアスピリンはヤナギの樹皮から、コレステロールを下げる薬のロバスタチンは紅麹(べにこうじ)からヒントを得て作られたのです。つまり、私たちの食べ物は、実は「薬」に近い働きをしている可能性があるということなのです。
◆東洋医学における医食同源
ここからが面白いところ!実は、この超最新の医学発見、東洋医学では何千年も前から「当たり前のこと」として伝えられてきたのです。
中国や日本などのアジアの伝統医学では「医食同源」(いしょくどうげん)という考え方があります。これは「食べ物と薬は同じ源から来ている」という意味で、私たちの食べ物は単なるエネルギー源ではなくて、体の調子を整えるものだと考えられてきました。
東洋医学では、食べ物を「四性」(しせい)と言って、「寒・涼・温・熱」の4つに分類します。例えば、スイカやキュウリは「涼性」で体を冷やす作用があると考えますし、生姜やニンニクは「温性」で体を温める作用があると考えるのです。さらに「五味」(ごみ)といって、「酸・苦・甘・辛・鹹(かん、しょっぱいこと)」の5つの味で分類もします。
例えば、生姜は「温性」で「辛味」があるから、体を温めて、「気」の流れを良くすると東洋医学では昔から言われてきました。現代の科学研究でも、生姜に含まれるジンゲロールという成分が、実際に血管を広げたり汗をかきやすくしたりして、体温調節に役立つことが証明されているのです!
また、有名な漢方薬の「高麗人参」(こうらいにんじん)は、「気虚」(ききょ)という、現代で言うところの「慢性疲労」みたいな状態に効くと昔から言われていました。現代の研究でも、高麗人参に含まれるジンセノシドという成分が、エネルギー代謝や免疫機能を高めることが分かってきています。
東洋医学で「気・血・水」の流れを整えると言われてきた食材や漢方薬の多くが、この最新研究でも人間の体の中の複雑なタンパク質ネットワークと相互作用することが示されています。みかんの皮に含まれるヘスペリジンという成分は、東洋医学では「気の巡りを良くする」と言われてきましたが、現代医学でも血管の内側の細胞に働きかけて血流を改善する効果があることが分かってきているのです。
◆東洋医学と現代医学の出会いがもたらすもの
NEJMの論文では「Food Is Medicine(食は薬である)」というプロジェクトが進められていると紹介されています。これは東洋医学の「医食同源」そのものですね!
この最新発見を踏まえると、私たちも食事に対する見方を少し変えてみるといいかもしれません。東洋医学が教える「五色」(赤・白・黒・緑・黄)の食材をバランスよく食べること、季節や自分の体調に合わせて食材を選ぶこと、相性のいい食材を組み合わせることなど、古来からの知恵を日常に取り入れてみませんか?
最新医学の発見と東洋医学の古代の知恵が出会う、この興味深い時代に生きている私たち。「未知なる栄養素」という新しい概念は、東洋医学が何世紀も前から教えてきた「食べ物の持つ複雑な力」を、現代科学がようやく追いついて証明し始めたということなのかもしれません。食べ物を選ぶとき、「ただのエネルギー源」ではなく、「体に様々な影響を与える複雑な物質の集合体」として見る視点を持てば、より健康的な毎日を送るヒントになるのではないでしょうか。
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投稿者プロフィール

- 生まれも育ちも石川県。地域医療に情熱を燃やす若き総合診療医。中国医学にも詳しく、趣味は神社巡りとマルチな好奇心が原動力。東西を結ぶ“エディットドクター”になるべく、編集工学者、松岡正剛氏に師事(髭はまだ早いぞと松岡さんに諭されている)。
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