MEdit Labでは、「リベラルアーツとしての医学」というコンセプトを掲げているのですが、なかなかその意味を改めて伝える機会がありません。もっと医学は世の中に面白く発信できるに違いない。「医学は医学部で学ぶ専門的なもの」「正しい医学知識を専門家からきちんと学ぶべき」といった意見は、とっても正しいと思いつつ一方で、それだけが強調されすぎるのももったいないと感じていました。医学はもっと身近なはず。
だからこその「医学をみんなでゲームする」。医学を多様にとらえる方法を色々考えていきたいなという中で、ボードゲームづくりを進めて現在にいたっているMEdit Labです。
そんなMEdit Labに格好のテキストが登場しました!これまでもひょっこり(こっそり?)ワークショップにも参加してくださっていたレジェンドゲーム作家の米光一成さんの著書『ゲーム作家の全思考』(大和書房)です!
米光一成さんは、会社員時代に「ぷよぷよ」を制作され、その後、独立されてからも特にボードゲームを中心に様々なゲームを精力的に創られてきており、代表作品は、みなさんおなじみの「はぁって言うゲーム」などなど。
本書は、米光さんの自伝的なお話でもありますが、タイトル通り、どういうふうにゲームを作ってきたか、その思考プロセスが惜しげもなく明かされています。写真もふんだんにあって、とても読みやすい本ですし、あまりここで内容に触れてしまうとネタバレになってしまうので、なぜ、米光さんが本書を執筆しようと思ったか、その動機だけここでご紹介すると「どのようにして人生のあれもこれもが流れ込んで作品ができるのか」ということを伝えたかったのだそう。
とても共感します。
「米光さんがヒット作をバンバン出すのは天才だから」と言って無理やり納得するのは簡単ですが、そうすると、あまり努力せずにすぐにグッドアイディアを閃いてしまうすごい人というレッテルを貼ることになり、米光さんの思考から学べることはなくなってしまいます。
「あの外科医、すごく手術上手ですね」「うん、センスあるから」
という話とおんなじで、センスのひみつを探ってそこから参考になる何かを得る方がよっぽど学びになります。人知れず、糸結びの練習を自宅で毎日続けているのかもしれませんし、手術前後の予習・復習に人の数倍時間をかけているのかもしれません。医師も職人的なところもありますし、診療を進める際もいろんな発想が要求される場面も多く、ゲーム作家は専門が違うから医療人として学べることはないと思ってしまうのももったいないですね。
米光さんのモットーは、私の言葉で言い換えるなら、 “ゲームと生活を切り分けないこと”。これは私のモットーの“ポジティブな公私混同”と似ているように思います。みんな余暇という意味合いの「ライフ」のために、お金を稼ぐ「ワーク」をしなくっちゃ、と二項対立的に思いがちですが、たいがい生き生きと楽しく仕事しているひとは、「ライフ」と「ワーク」がくっついている。それは決して、働きすぎという意味ではなく、生活の様々なことが互いに関連づいて、他の行動を起こすときにあらゆることをヒントにできる力を持っているということ。
自分には才能がないかも、とか、色々行き詰っているひとに絶対効く、特効薬のような本なので、ぜひ、お試しあれ!
投稿者プロフィール

- 趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。
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