医学に効くほん!
医学に効くほん! COLUMN
2025.07.21
2025.07.21
こちら、空港医療センター!
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みなさんは、飛行機の中や旅先で具合が悪くなったことはありますか。異国の地での体調不良は、いつにもまして不安になりますし、機内で具合が悪くなると場所も狭くてかなりしんどい。海外旅行はわくわくするものですが、健康問題に関しては心配事がつきません。

韓国語の翻訳本といえば最近は、ハン・ガンさんの本が日本でも大人気ですが、今日ご紹介する「医学に効くほん!」は韓国の仁川国際空港にある空港医療センターの院長先生が書いた翻訳版、医療エッセイ「こちら、空港医療センター 救急ドクター奮闘記」です。

◆空港医師、シン・ホチョル先生

著者のシン・ホチョル先生は、空港医師。年間7千万人以上が利用する仁川国際空港は、都心から遠く離れた永宗島(ヨンジョン島)にあり、どこの病院からも距離があります。その医療アクセスの脆弱性を補うべく、医療センターが設置されたのは2001年。現在では、二十数名の医療スタッフが勤務する24時間年中無休の病院なのだとか。

シン・ホチョル先生は、学生時代に学生運動に参加して、一度、医学部を除籍になり、その後に韓国特有の兵役を経て医学部に入り直した遅咲きの医師で、専門は“家庭医学科専門医”。日本でいうところの「総合診療医」にあたり、あらゆる疾患に対応できるドクターとして、日々、空港で実に様々な患者さんの治療を担当されています。センターに駆け込む患者さんの多様性といったら、空港医療センターだからこそ!国籍も話す言葉も色々、ごくごく軽症な方から、命の危険が迫る重症の方まで疾患の重篤度も様々です。

患者さんは旅行客にとどまらず、空の安全を守るパイロットや航空管制官、整備士などの技術職や空港業務を支えるあらゆるスタッフの健康もシン先生がしっかりサポートしています。日々の健康診断もシン先生が担当。空港業務を知り尽くしたシン先生の視点で、そんな航空従事者の日々のプレッシャーについて、そして、気圧の変化や放射線など搭乗業務による健康上のリスクなども解説されていて、とても興味深いです。

なんといっても素敵なのは、シン先生の優しくて前向きなお人柄です。どんなに大変な状況についても、どこかユーモアが感じられる筆致は、まさにシン先生だからこそ。シン先生の思いやりは、読者にも溢れていて、旅行に出かけるときの注意点や航空病のあれこれもとてもわかりやすく解説されています。

◆シン先生からのクイズ

本書の最後の方で、シン先生が空港職員向けの健康講座で出したクイズが紹介されています。

「仁川空港では、いろいろなお仕事の方がそれぞれの職務を全うされていますよね。では、数ある職種の中で一日の歩行量が一番多いのは、どの職業だと思いますか?」

さて、みなさんはなんだと思いますか?

答えを知りたい方は、ぜひ、本書をお読みくださいね!

 

医学に効くほん! | MEdit Lab

投稿者プロフィール

小倉 加奈子
小倉 加奈子
趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。