おしゃべり病理医スタンプ図鑑
おしゃべり病理医スタンプ図鑑 COLUMN
2023.03.23
2023.03.23
なるほどーぱみん!
SHARE

WBCは盛り上がりましたね!選手たちの野球に対する愛情や喜びがびんびん伝わってきて、こちらも元気をもらいましたよね。それにしてもどの選手もみんなあの大舞台でのパフォーマンスがすごい。日々のメンタルトレーニングの賜物なのかな。試合に向かうための選手たちの個々の身体の整え方もとても気になります。

さてさて興奮冷めやらぬところで今回のコラムは、まさにその興奮の立役者となるホルモン、ドーパミンについてです!「ドーパミン=脳内快楽物質。ギャンブルや薬物やゲームなどの依存症は、過剰なドーパミン分泌が原因なのです」。こんなふうに説明している文章を最近、よく見かけますが、どんなホルモンも一言でその役割を言い切ってしまうと、誤った解釈をしてしまいます。

ドーパミンは、脳や脊髄で大事な働きを担っている神経伝達物質です。脳内快楽物質と呼ばれているのは、ドーパミンが、「報酬系」と呼ばれる脳内の神経回路になくてはならない物質だから。みなさんが、「よっしゃ、やるぞ!」と何かに意欲的になるときや「あぁ~、気持ちいい~」とポジティブな気持ちになるときには、決まってドーパミンがその「快」への気持ちや行動を後押しすべく分泌されています。だから、あまりにもそれが過剰であると「中毒」や「依存」といったネガティブな行動をもたらすと、ものの本では警鐘を鳴らしていたりするのです。

互いに拮抗する作用を持つグルカゴンとインスリンが、血糖をコントロールするように、ドーパミンもGABAというパートナーがいます。GABAはドーパミンに対して抑制的な働きを担っていて、脳内の興奮状態がつねに一定に保たれるように調整されています。たったひとつのホルモンだけが、私たちの行動や気持ちに影響を与えているわけではないのですね。WBCの選手たちの身体の中でも、ドーパミンとGABAが互いにうまく協調していたからこそ、最高のパフォーマンスを行えたのでしょう!

ドーパミンが足りなくなる有名な病気に、パーキンソン病があります。ドーパミンは、体をスムーズに動かすために脳の指令を筋肉に伝える役目もあり、中脳黒質というところで作られています。

ドーパミンの量は、老化や酸化ストレスなどによって、黒質の神経細胞が壊れることで減ってしまいます。誰でも120歳くらいの超高齢になればパーキンソン病になると言われています。実際、高齢化が進む日本において、パーキンソン病に罹患する患者さんは急増しています。

私たちが体を動かそうとするときにもドーパミンが分泌されるのですが、同時にここでもドーパミンとは逆の働きを示すアセチルコリンという物質が分泌され、このふたつのホルモンが協調し、姿勢や動きの程度などを調整して、スムーズな動きを助けています。

パーキンソン病の場合は、ドーパミンの分泌が少なくなり、アセチルコリンの働きとのバランスが崩れてしまうことで症状が出ます。

1.素早い動きができず、一歩目の足が出にくい「寡動・無動」
2.顔の表情筋を含めた筋肉が固くなる「筋固縮」
3.体のバランスが取りにくく転びやすくなる「姿勢反射障害」
4.何もしないときに体が震える「安静時振戦」

以上の4つの症状が運動に関する代表的なものです。また、同時に、物忘れがひどくなったり、気分が落ち込んだり、便秘や立ち眩みなどの症状も出たりします。

順天堂大学の脳神経内科では、服部信孝教授を中心に世界最先端のパーキンソン病の研究が行われています。興味を持たれた方はこちらのサイトもご覧くださいね。

順天堂大学のパーキンソン病治療.com

どんなホルモンも、多すぎても少なすぎても困っちゃうのだ。
なるほどーぱみん♪

投稿者プロフィール

小倉 加奈子
小倉 加奈子
趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。