中高生のみなさんは、キャリアについて考える授業やイベントに参加する機会が少なくないと思うのですが、いきなり「将来、何になりたいですか」と言われても困りますよね…。「夢を持つことは大事だ」と力説されても「自分が今、好きなことと、キャリアが結びつかない場合はどうしたらいいか」ということなんて、先生もAIも教えてくれません。キャリア教育って、やたらと「将来どうするの?」とけしかけるわりには不親切なのでは?と思うこともあります。
今回は、そんなキャリア教育に一石を投じるような親切な本『生きのびるための事務』(マガジンハウス)をご紹介します!しかもマンガですよー♪
坂口恭平さんは、作家、画家、音楽家、建築家など多彩な活動で知られているアーティスト。早稲田大学で建築を学んだものの、就職活動が嫌すぎて、何もしないまま卒業したという坂口さん。本書は、そんな20年前の頃の坂口さん自身の生活をもとに描かれた本(マンガ)で、自分の“好き”を仕事にしていくにはどうしたらいいかという問いについて回答したものです。
◆将来の現実?
坂口さんのいう「事務」とは、「抽象的なイメージを数字や文字に置き換えて、具体的な値や計画として見える形にする技術である」といいます。事務は、すべての人に必要な、生きるための方法論であるということ。そして、自信や自己肯定力なんて全く不要であると坂口さんは断言します。「失敗」も他者が下す抽象的な評価に過ぎないといいます。自分が好きなことで食べていくために、好きなことを継続する方法論こそが重要であると。
坂口さんが提示する方法論は、好きなことを継続し、それでいずれ稼いでいける未来と、今現実の生活をつなげること。「将来の現実」と表現されていますが、漠然と抱いている“遠い将来の夢”をぐっと自分の近くに引き寄せて、「じゃ、今、何をどうする?」と具体的に考えることを提案します。
夢を叶えるのは、才能があるからではありません。叶えるまでの道のりを自分で計画し、地道にその通りに実行できるか否か。そういった事務の能力こそがどんな仕事であっても必要不可欠であることを本書は教えてくれます。まさに、キャリアを考えるうえでの非常に親切なガイドブックであるといえましょう。
◆どんな職業にも必要な事務のお仕事
本書を読んで、私もちょっと自分の生活を振り返ってみましたが、病理医としての私の生活も“事務”に満ち溢れていました。日々の病理診断においては個々の症例の診断に向かう際、集中力を高めて取り組むための段取りがあります。
MEdit Labの活動においてはかかる費用をどこから捻出するか、年間計画を立てつつ予算配分を考えます。短期、中期、長期とMEdit Labの未来予想図を思い描き、そこに向かってコツコツと今、やれることを楽しく継続する。その繰り返しです。
仕事の大半はあらゆる雑務、事務から構成されており、それらがどのくらいうまくいっているかによって、自分の目標や夢に少しずつ近づいていることを実感しています。
みなさんもまずは、本書を熟読しましょう。幸いマンガですから大変読みやすい。1日で読み終えることができます。そして、ご自分の生活を支えてくれる相棒のジムさんと対話し、夢に向かってまずは今を変えていきましょう!
追伸:活字がいいな、という方のための新書版も登場しています。マンガじゃなくて活字が好きという方はそちらを♪
投稿者プロフィール

- 趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。
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