レッツMEditQ
レッツMEditQ COLUMN
2025.12.08
2025.12.08
医学とゲームは似ている?「米光一成×おしゃべり病理医」トーク&ゲームイベントレポ
SHARE

2025年11月23日と24日の二日間、編集工学研究所にて、イシス編集学校の本のお祭りが開催されました。近所の方もたくさん来場され(ゴボウが袋に刺さった買い物帰りの方なども!)、とっても賑やかで楽しく、本がゲームや写真や大河ドラマや軽井沢や連句やコーヒーなどなど、様々なものと組み合わさる、世にもユニークなお祭りとなりました。

MEdit Labは、11月24日の午後2時から、「米光一成×小倉加奈子のトークショー&ゲームプレイ」と題して、2時間たっぷりのイベントを開催しました。イシス編集学校の吉村堅樹さんも加わってくださっての鼎談スタイル。

まずは、吉村さんがおしゃべり病理医の新刊『細胞を間近で見たらすごかった』をご紹介してくださいました。編集学校界隈ではすでに “まぢすご” で親しまれるようになった?一冊。「小倉さん、ついに境地に達しましたね」と過分なお言葉をいただき、おしゃべり病理医ちょっと照れました。

MEdit Labのご紹介をしつつ、米光一成さん、いよいよご登場です! 米光さんが、MEdit Labに関わってくださるようになったきっかけなどから3人でのトークショーをスタートしました。

「僕は、何を見てもゲームに見えてしまうんですが、特に医療はゲームに似ていると思うんですよね」。

ルールがあること。人間の営みであるから、失敗することもあること。人の命を預かる使命を有する医療がゲームと似ているというのは不謹慎と言われるかもしれないけれど、それでも、最大のリスペクトを持って、医療とゲームは似ている、と米光さんは言います。

昨年度、初めてMEdit Labのワークショップ「医学をみんなでゲームする」に参加された米光さんが制作した医学ゲームのタイトルは、『ずっこけホスピタル』。医師がプレイヤーとなって、重大な医療事故につながる可能性のあるヒヤリハットをテーマにしたゲームでした。

医療って専門性が高い!医療って尊い!といったイメージから少し外れる形で、「お医者さんだって人間だし、焦ったりミスったりすることもあるのでは?」と、フラジャイルな側面に光を当てるのが米光さんの編集力なのです!

◆米光さんのアイディアの森

そんな米光さんのゲーム制作のヒミツに迫る吉村さんとおしゃべり病理医。米光さんのご著書『ゲーム作家の全思考』の中には、「アイディアの森」という言葉が登場します。

ゲームづくりについては、いきなり「これだー!」というアイディアを閃くというものではないんです、と米光さん。日々の生活の中で、一見ゲームにつながらないような雑多なことを考えていくと、なんとなくそれらが積み重なった先にアイディアが生まれていく、というのが米光さんの方法です。

米光さんのお仕事部屋は、壁中、メモだらけ。「歯という漢字はなんとなく顔に似ている」といった、落書き、メモ書きがあちこちに貼られているのだそう。

「本棚と一緒です」。米光さんはそう言います。

本棚に並ぶ、本の背表紙の並びから、脳が刺激されるように、ランダムに貼られた雑多なメモ書き同士が組み合わさり、それがゲームづくりのきっかけになる。米光さんのアイディアの森は、連想が生まれる豊かな場所なのです。

そんな米光さんの新作ゲームの名前は、『席替えゲーム 崖っぷちアニマル』。席替えするゲームを作ってみたいなぁ~というところから、席替えすることがゲームのメカニクスの中心になるようなゲームを考えたのだそうです。米光さんいわく、このゲームは、『ハンカチ落とし』『フルーツバスケット』と並ぶ、世界三大席替えゲームのひとつなのだとか(笑)。みなさん、ぜひお買い求めの上、三大席替えゲームのひとつをお楽しみくださいね。

この後も米光さんからゲームづくりについての様々なことを聞きだした吉村さんとおしゃべり病理医ですが、もっと米光さんのことを知りたい!という方は、米光さんのご著書を読まれるか、MEdit Labのイベントに参加してくださいね!

◆みんなで本を持ち寄って!

さて、しばしトークを楽しんだ後は、2万冊の本に囲まれた会場を存分に活用したゲームをみんなで楽しみました!

米光さんが会場にぴったりでは?と提案してくださったのが『みんなで本を持ち寄って』という本を使ったゲームです。様々なお題カードがあり、そのお題にふさわしいと思われる一節を本の中から抜き出して回答する、というコミュニケーションゲームです。

「手術中に聞こえてきたら嫌なセリフ」というお題に応えるべく、壇上の3人も手持ちの本から面白い一節を探します。けっこう必死。

会場にいらっしゃる30名近いお客さんも、本楼にある本を借りて参加。詩集、エッセイや小説、ヤクザ本から日本文化の本まで。十人十色、様々な本を手に取って、ゲームに参加します。

シンキング・タイムは、なんと生演奏のBGMが。多読アレゴリアのクラブ「音づれスコア」の上杉さんと瀬尾さん。プロの音楽家として活動しているおふたりの演奏なんてなんと贅沢! 残り30秒になるとテンポが上がっていくところもゲームっぽく。

壇上のわたしたちに加えて、会場のみなさんからも積極的に手が上がって、次々に珍回答が重なっていき、本楼は笑いにどんどん包まれていきます。やっぱり米光さんが創り出す場は、温かくて愉快なのでした。

ゲームの後は、質疑応答の時間に。「無理ゲー」とはいったい何か。無理なゲームっていったい?という質問から「親ガチャ」のようなゲームっぽいメタファーが多く用いられる社会現象について話が広がったり、人類の歴史においてゲームや医療の行く末を大きく変えた出来事についてなど、質問から様々なテーマにお話が広がりました。

最後は、ルールを少し変えただけで既存の事象が大きく変わる具体例として「チョキじゃんけん」で遊んでフィニッシュ!

とっても面白いイベントになりました!

↑Photos by Yukari Goto

◆イベント番外編・MEdit Labブース写真レポ

▲『細胞を間近で見たらすごかった 奇跡のようなからだの仕組み』は別典祭特典、しおり付で1000円で販売!

▲初お披露目!病理診断体験ゲーム『バナオーマ・アデノーマ』試遊した後、気に入ってくださって購入されたみなさんも

▲上段にある米光さんコーナー、飛ぶように売れました!

▲本大好きで、好奇心いっぱいの米光さん。おみくじ本に挑戦。どの引き出しにするか真剣に選びます

▲『まじすご』とお汁粉。別典祭では、来場者にお雑煮やお汁粉もふるまわれました。楽しくて美味しい大人の文化祭

来年の行われる予定の別典祭! 今回、参加できなかった方、超おススメです。また来年会いましょう♪

 

■参考URL

🕵 ことば探偵 | 【GINZA】東京発信の最新ファッション&カルチャー情報

米光ゲーム

 

投稿者プロフィール

小倉 加奈子
小倉 加奈子
趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。