日本では、宇宙における衣食住についての研究開発が、非常に進んでいること、みなさんは知っていましたか。特に、月で育て、月で食べる「月産月消」を目指し、日本の食文化を活かした研究が世界をリードしているのだとか。
宇宙ステーションではこれまでも宇宙飛行士が長期間、無重力の狭い居住スペースの中で様々な任務を遂行しながら生活を送ってきましたが、いよいよ宇宙に一般の人も旅することができるようになり、近い将来、月へ旅行したり、あるいは月に移住するという人が現れるかもしれません。
月の重力は、地球の6分の1。そして、空気がないため、昼の温度は、100度を超え、夜にはマイナス170度まで冷え込む世界。昼と夜が約14日間続くという地球とは全く異なる昼夜のリズム。そうした環境の中で、本当に人間は生きていけるのでしょうか。
本書は、冒頭に紹介したように、月での食問題、住居にまつわる話、上記のような月の環境における人体への影響やその対応策など、「宇宙にヒトは住めるのか」という問いに対して、衣食住にまつわるとても具体的な解説がなされた本です。
◆月面献立、人気はタコライス?
千葉大学園芸学部では、「月面農場」の研究が行われているのだとか! 基本的に真空の月では屋外で植物を栽培することはできないため、地球に近い気圧や気温や光などを屋内で再現しつつ、屋内の制約の中で効率よく食物を生産する必要があります。そのための様々な工夫がなされています。詳しくは本書で確認してもらいたいのですが、現在、月が育てることを目指す作物は、イネ、ダイズ、ジャガイモ、サツマイモ、キュウリ、レタス、トマト、イチゴの8種だとか。辻調理師専門学校による4週間分のメニューも開発されていて、人気はタコライス。お月見ならぬ「地球見」パーティーなど、食事を楽しむ場づくりにまで配慮されたメニュー表は一見の価値ありです。
◆低重力を活用した住空間?
月の住居はどうでしょう。竹中工務店では、「宇宙建築タスクフォース(TSX)」というプロジェクトチームを中心に、住居の建築方法から、実際の居住スペースの提案まで、本気で月に長く住める建物をつくる、ということを目的として様々な研究が進んでいるのだとか。重力が地球の6分の1なので、少し勢いをつけてジャンプすると、2階まで一気に飛び上がれる、といった楽しそうな月住まいですが、一方で、気圧や気温はどうやって一定に保つ? 一歩も外に出られない、あるいは出る場合は、宇宙服を着こまなければいけない、というような環境でどうやってストレスを軽減させられる? 建築資材をどうやって地球から効率よく運ぶ? 隕石落下対策は? などなど、考える課題は山ほどあります。
◆人体への影響はいかに?
そして、これは宇宙飛行士関連のお話で聞いたことがあるかもしれませんが、無重力あるいは低重力では筋肉を使うことがなくなり、一気に骨密度や筋肉が落ちてしまうといった人体へのネガティブな影響についてもとても詳しく解説されています。重力がないと、肉体の衰えは、10倍に加速するのだそう。他にも実は、視力に異常が出てきたり、宇宙酔いのような症状が出てきたりと、重力によって私たちの身体は自然と鍛えられているわけで、それが無い状況が、かえっていかに過酷なのか、医学的な研究が様々に進んでいます。
きっと若い方ほど、将来、月に住む可能性は高いわけでして、今後の宇宙移住計画には目が離せませんね。
おまけ:本書は、「ちくまプリマー新書」から刊行されていますが、この新書シリーズは、専門的な内容をとても平易に解説しているシリーズです。表紙も、他の新書と異なり、内容によって1冊1冊素敵にデザインされていて、新書ビギナーのみなさんにもおススメのシリーズですよー!
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投稿者プロフィール

- 趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。
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