2月3日、節分の日の午後、順天堂大学 本郷・お茶の水キャンパスのとある一室で、第1回MEditカフェが開催されました。
といっても大げさなものではなく、お菓子を持ち寄ってみんなで机を囲み、おしゃべりを楽しみながらゲームで遊ぶアットホームな会です。今回は、医学部1~3年生の有志数名が集まってくれました。
▲順天堂大学 本郷・お茶の水キャンパス7号館3階の素敵なお部屋で。ディスプレイはホワイトボードとしても使えてとっても便利
今日のMEditカフェのテーマは、自作ボードゲームの「テストプレイ」。今年度のMEdit Labワークショップ「医学をみんなでゲームする」の中でつくったゲームをさらに面白く楽しいゲームへとブラッシュアップするべく、テストプレイをしましょう!ということで集まったのでした。
◆UNOっぽい「五行色体表」ゲーム
まずは、医学部1年、ふくだくん作のUNOっぽいカードゲーム。東洋医学に興味を持つふくだくんは、東洋医学の理念の中でも「五行説」の内容が一覧となっている「色体表」をゲームにしようと考えました。色と数字の両方が組み合わさったカードゲームの代表例が「UNO」。ふくだくんは、色体表にUNOっぽさを見出してこのゲームを考案しました。まさにアナロジーのなせるワザです。
ちなみに、五行とは「木・火・土・金・水」のこと。この5つの要素によって自然現象や人間の身体や心の現象のすべてを解釈して説明しようとする思想を五行説といいます。学派によって、この五行説をどのように活用するかは異なりますが、東洋医学を理解するために五行色体表を読み解けるようにはなりたい。そんな目的でふくだくんはUNOっぽいゲームを考えたのです。
さて、いよいよテストプレイ。カードには、五行を基本として、五臓・五腑(六腑じゃなくて)・五色・五味・五液・五声などなど15種類あり、それぞれ5つの要素(色)が含まれるため、あわせて75枚あります。UNOと同じように、色が同じか、あるいは五“〇”が同じものであれば場にカードを出すことができます。例えば、五臓に含まれる『肝』というカードは、色は「木」であり、他の種類の「木」に属するものか、五臓の他のカード(例えば、『脾』など)のカードが手元にあれば、場に出していきます。
▲ふくだくん、まゆちゃん、しかちゃん、くろちゃんの1年生チームでいよいよゲーム開始
医学部1年生4名がゲームに参戦。みんなカードの真ん中に書かれた言葉の意味を理解するのはそっちのけで、とにかく色か右下に書かれた五行の種類が合うかどうかだけを気にしてゲームを進めている様子。
▲まゆちゃんの手元には数枚のカード。『悲』と書かれたカードは、五行のうち「五志」の「金」に位置するため、他の五志カードか、金(白色)のカードであれば場に出すことができる
「うーん、これだとゲームで遊んでもぜんぜん五行色体表を理解できないね」
とさっそくゲームの問題点が浮上してきます。
それだけでなく、UNOにある『ドロー2』や『スキップ』や『リバース』などのスペシャルカードがないために、ゲームが単調になるという問題点や手持ちのカードが残り1枚となった時に「ウノ!」という掛け声の代わりとなるものをどうするか、いろいろな改良点が出てきました。テストプレイの収穫は想像以上です。
◆睡眠改善ゲーム「Rest and Risk」
続いて、医学部3年、ふっく船長考案の睡眠改善ゲームをプレイしました。ふっく船長は将来、行政の仕事に携わりたいと思っていて、通常の授業以外に、特別に公衆衛生学教室で「睡眠」について学んでいます。
興味を持っているものをゲームにするのがいちばん!ということで、ふっく船長は睡眠の質をテーマにしたゲームを考えました。今日の会にちょっと遅刻したのはぎりぎりまでカードを作っていたから。美術部の部長でもあるので、カードのデザインにもこだわりが。
▲ふっくちゃん作「Rest and Risk」のカードたち 裏に表紙も貼りつけてあり裏うつりしないように丁寧に作成されている。さすが美術部部長
さて、こちらのゲームは、おしゃべり病理医のおぐらとしんしん、そしてエディターの金くんとふくだくんが参戦。
「一度もやってみたことがないから、途中でゲームが破綻するかも…」ふっくちゃんが不安そうにゲームの進行を見守ります。このゲームは、SLEEPカード2枚とACTIONカード3枚を手元に持ち、なるべく手元のカードが“健康的”になるように、場のカードと交換しながら進めていきます。月曜日から日曜日までの一週間を1タームとして、1日終わるごとにEVENT or ITEMカードを引きます。そのカードによって、エネルギーや健康リスクが増えたり減ったりして、日曜日が終わった時点で、最も健康リスクが低いひとが勝ちとなります。
途中、「認知症」カードを引いた金くんと、「肥満」カードを引いたしんしんは、そのタイミングから、つねに健康リスクが日を追うごとに追加されることに…。一方でおぐらはSLEEPカードで「抱き枕」をゲットし、睡眠の質が増すことになってにやにやと満足気。横にいる金くんは、「なんで俺が認知症になるんだ~!」とご機嫌ななめなまま、ゲームは非情にも週末へと向かっていきます。
▲おぐらと金くんがゲームに夢中になる様子に、安堵の笑顔のふっくちゃん(写真左)
ふっく船長が心配していたプレイの破綻はなく、想像以上に完成度が高く、面白いゲームで盛り上がりましたが、それでも様々な改良案が出てきて、ホワイトボードは改良ポイントのメモで賑やかに。
▲ふっく船長のゲーム「Rest and Risk」の改良ポイントメモ
睡眠について学習できるゲームとするには、もう少し睡眠そのものにフォーカスしたカードにした方がいいのではないか。運と駆け引きのバランスをもう少し考えた方がいいのではないか。みんなから次々に改良ポイントの指摘がなされ、大混乱のふっく船長。とりあえず溢れかえるアイディアを抱えて帰っていきました。
ふくだくんもふっく船長もきっと、東洋医学や睡眠についての医学的なこともさらに勉強しつつ、今日のテストプレイの改良ポイントをヒントに、さらにバージョンアップしたゲームを持ってきてくれることでしょう。他のみんなもきっとユニークなゲームを考えてきてくれるはず。
◆ボードゲーム研究しよう!
想像以上に大変な盛り上がりを見せた第1回MEditカフェ。次回は、3月末を予定しています。テストプレイの間に、與那覇潤さんと小野卓也さんの著書『ボードゲームで社会が変わる』も取り上げて、医学とボードゲームの相性の良さを確認したり、ボードゲームで遊ぶことの有用性やゲームデザインのプロセスこそが学びになることもみんなで改めて共有しました。
次回は、自作のボードゲームのテストプレイ以外に、世の中の人気ボードゲームを持ち寄り遊びながら、これを医学ネタにするならどうするか、というようなお題をもとにみんなで医学とゲームを研究していこうと思っています。
▲最後に「レッツMEdit Q~!」とパチリ
〇参考サイト・文献〇
・漢方専門医認定機関、日本東洋医学会 | 入口ページ (jsom.or.jp)
・日本漢方医学教育協議会編集『基本がわかる漢方医学講義』羊土社
・與那覇潤・小野卓也『ボードゲームで社会が変わる 遊戯するケアへ』河出新書
投稿者プロフィール
- 趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。
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