診療すごろく COLUMN
2月と3月は試験シーズンですね。期末試験、入学試験、そして多くの国家試験も行われます。医師国家試験は2月3日・4日の2日間に渡って行われ、今週3月15日が合格発表です!
学校を卒業してもテストがなくなるわけではありません。医師であれば専門医試験や認定医試験がありますし、病院以外で勤める友人からもテストを受けたという話をしばしば耳にします。さらに、人間だけでなく、実は、病院が受けるテストというのもあるのです! 代表例が「病院機能評価」です。
◆病院の選び方
みなさんはどうやって病院を選びますか? 小規模なクリニックであれば、耳鼻科や消化器内科など診療科がポイントになりますが、大学病院のような大きな病院ではどうでしょうか。入院や手術となると、医師だけでなく、他のスタッフも含めてどんな病院なのかを知りたくなります。しかし、他の病院でどのような医療が行われているかは、私たち医師でさえわかりません。そんな時、プロの目で認められた「病院機能評価の認定病院」であるかどうかが、ひとつの参考になります。
◆専門家が厳しく評価!
「どんな病院か?」を知るには、実際の現場をみる必要があります。病院機能評価ではサーベイヤーといわれる専門家が病院にきて、審査を行います。サーベイヤーは医師・看護師・事務職と分野ごとに分かれますが、いずれも部長経験者など病院事情に詳しくないとなることができません。さらに、全国各地の病院をまわってきた病院をみるプロなのです。
そんなサーベイヤーが外来、病棟、検査室など普段は関係者しか入れないところにも回ってくるのです。私が勤める病理検査室は普段は患者さんが入らないため、人が来ることに慣れていません。訪問日には、整理整頓や顕微鏡まわりのホコリに注意したり、パリっとアイロンのかかった白衣に着替えたりして、ソワソワしながら審査を待ちます。
実際の審査は、細かな項目にわかれた評価表を使って行われます。私が驚いたのは「診療記録を適切に記載している」という項目です。診療記録とはカルテのこと。この審査では医師・スタッフが書いた過去のカルテが選ばれてチェックされます!研修医の時は「自分の書いたカルテが評価されるかも…」とドキドキしていました。
一つひとつの項目はS・A・B・Cの4段階で評価されます。ひとつでもCがある場合には、認定つまりは合格をもらうことができません。無事に認定された病院はホームページで検索でき、病院によっては評価表もみることができます。私が勤める順天堂大学医学部附属練馬病院の前回の審査では、複数の項目でS評価を頂きました。そのひとつが「救急医療機能」です。病院全体の協力はもちろん、近くの病院とも連携して、入院が必要な患者さんを受け入れる体制を整え、救急車からの依頼を断らない姿勢を続けてきたことが認められ、誇らしい思いです!
◆テストを受ける意味
病院機能評価は、抜き打ちテストではありません。そもそも受けるかどうかも病院の希望制で、受けると決めた場合には認定をとれるようしっかり準備をして臨みます。本番では色々な部署の人に質問するので、院長ひとりでいくら頑張っても認定をとるのは難しく、病院全体が一丸となるひとつの機会になります。
良い評価はもちろん嬉しいですが、結果よりもそれまでの準備を通して病院全体を良くしていくことが病院機能評価の真の目的なのです。
テストではどうしても結果に目が行ってしまいますが、当日の体調や緊張にも影響されますよね。テストまでの準備が自分のためになる、ということはどのテストでも同じだと思います。試験を受けるみなさんを心から応援しています!
-参考webサイトー
投稿者プロフィール
- 全方位に目があるんじゃないかという細やかな気配りのできる逸材。寛大で誠実、緻密な仕事ができるのに人に優しい。病理医とSTEAM教育研究者の二足の草鞋を履くお母さん。愛くるしいパンダに似ているのであだ名は「しんしん」。
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