2024年5月16日、順天堂創立記念日の翌日。MEdit学生部のみんなと一緒に、豪徳寺にある編集工学研究所を訪問してきました。そこには、「本楼(ほんろう):本に“翻弄”される場所」と名づけられた2万冊の本に囲まれるゴージャスな“編集アジト”があるのです!
豪徳寺から徒歩8分にある、編集工学研究所の正面玄関
ツアー前にお弁当で腹ごしらえ。みんな本楼がすっかりお気に入りの様子。探求心旺盛のゆっきーとふっく船長、そしてしかちゃんはさっそく梯子に上って本楼探検。この写真はふっく船長撮影
MEdit LabのMEditは、 [Medicine 医学]と[Edit 編集]をかけあわせた造語。ここでの編集は、編集工学研究所の所長である、伝説の編集者、松岡正剛さんが提唱する「編集工学」のメソッドを含む意味で使っています。
編集工学とは、情報のインプットとアウトプットのプロセスをすべて広く「編集」ととらえ、その情報の流れを検証することで、文章を書いたり、イベントを企画したりといった様々な表現方法をいきいきと面白くさせようというもの。編集力をつけるということは、情報のIN/OUTの方法を磨くことを意味しますので、それは“学び方を学ぶ”ことにもつながります。MEdit Labは、医学をテーマにしながら、学び方を学んでいこうというのがメインコンセプトなのです!
学生部のみんなは授業を終えて、すぐに各々豪徳寺へ!迎えてくださったのは、編集工学研究所の吉村堅樹さん。イシス編集学校の様々な講座の運営や企画、そして、『情報の歴史21』の編集長もなさっており、編集工学のエキスパートです。おしゃべり病理医も、『情報の歴史21』の編纂や講座の企画などのプロジェクトをお手伝いさせていただいてきましたし、STEAM教材の製作などで吉村さんのお力を借りてきました。今回は、おしゃべり病理医が特別にお願いして、吉村さんがナビを務めてくださっての編集工学ツアー、名づけて、「MEditツアー」を企画していただいたのでした。
イシス編集学校・学林局・林頭(林のカシラ、というユニークな役職名も編集工学研究所の面白いところ)の吉村堅樹さん。類まれな企画発想力の持ち主で、これまで数々のプロジェクトを立案運営してきたリントー。おしゃべり病理医とは10年近いおつきあい
◆いよいよツアースタート!
しんしんチョイスの焼肉弁当で夕食をすませ、いよいよツアースタート。まずは松岡正剛・著の『知の編集術』の冒頭をみんなで音読しながら、「編集」への理解を深めます。
配布された資料の数々。内容に応じてフォントや段組み、イラストの配置など、資料自体も編集の技が光っています~
高校?いや小学校以来ではないでしょうか?音読の時間。改めて音読の良さを感じます
吉村さんのナビは、「編集工学」の方向性や意味を確認しながら、今回のツアーの与件である「MEdit学生部が魅力的なコンテンツをサイトから発信するにはどうしたらいいか」という問いに向けて、いくつかの編集の型を使ってその方法を伝授くださるというものでした。
◆MEdit Labにないもの?!
まず、みんなが取り組んだのは「ないもの」というお題。『知の編集術』の冒頭には、「編集は不足からはじまる」という言葉がありますが、何か、魅力的なコンテンツを考えるときは、 “ないもの”を考えることが大切です。
「ないものには、3つの種類があるんです」吉村さんはいいます。「ほしいもの・不要なもの・ありえないもの、の3つです」。あったらいいなと思うけれど、今、ないものは商品開発では重要な視点ですし、無農薬野菜や無添加食品などに代表されるように、不要なものを削ぐと新しい価値が生み出されることも。そしてありえないものはファンタジーになりうる要素をはらんでいます。 “この場所に象がやってきたら?” “時計が逆回りしたら?”といったありえない設定は、ある種の物語を生み出す起点となります。
そのような説明のあとで、学生部のみんなにお題が出されます。
「MEdit Labにないものは何か」。
目の前の白い紙に書き出して考えてみます。ないものは無数にあるはずだけれど、いざ取り出すとなるとこれがなかなか難しい。ないものを探すコツをみんなで探りながらワークを進めます。
異口同音にみんながMEdit Labにないものとして「知名度」「資金」「部室」をあげているのに、おしゃべり病理医は苦笑しつつ、もっと学内外に働きかけて経済力と広報力をつけないとあかんなと反省しきりだったのですが、そういった抽象度の高い回答以外に「ユニフォーム」や「主題歌」などユニークな具体的回答を上げてくれる医学生もいました。
具体的な回答が挙がると、「なるほど!じゃ、今度、MEdit Labのスクラブ作る?」とか「歌を作ってYouTubeで配信する?」というように企画の種が生まれるのは面白いところです。これが「ないものを探す」威力だなと感心しました。
回答用紙は、みんなと共有。なるほど、これもあったか!と、仲間の回答にヒントを得ることも多い
◆その企画は、MEdit Labから発信する必然性はあるのか?
さらに、もうひとつのワークが「地と図」ワーク。MEdit Labを色々な視点で様々に言い替えてみるワークです。MEdit Lab学生部にとっては、「唯一自分たちから何かを発信できる場所」であり、医学部を目指す高校生にとっては「将来混ざりたい憧れのグループ」であり、おしゃべり病理医にとっては「ライフワーク」である、などなど。視点を変えることで、MEdit Labの見え方が変わってくることを実感しつつ、何かを世の中に発信するときに、受け手側の視点に立ってみることの重要性を実感したのでした。
以上のワークを通して、自分がMEdit Labのサイトから何かを発信するとしたらどんなことをやってみたいか、という最終的な課題に向かいました。
吉村さんは、「MEdit Labから発信する必然性が感じられなければ、意味がない」とぴしゃりと断言します。自分の個性や強みなどの与件と、MEdit Labが持っている与件を重ねたうえで、何を受け手が求めているか、世の中の“第三の与件”を考えなさいと説きます。
「自分がやりたいことから始めたら、面白いものはできないよ」吉村さんのさらなるアドバイスが響きまくるMEdit学生部のみんな。自分の与件をメタ認知し、MEdit Labの与件と合わせる方法をそれぞれが手探りで考えます。
その効果が発揮されたのが、その後の発表タイム。それぞれに自分が発信してみたいコンテンツを発表してくれましたが、なかなか面白いものがでてきていました。その内容は今はヒミツです。
きっと夏がはじまるあたりには、学生部コンテンツがMEdit Labのコラム連載に仲間入りできそうかな?期待が高まるおしゃべり病理医としんしんでした。
二時間を想定していたツアーは、結局は3時間半にもおよび、長々と本楼に居座ってしまいました。さくらキャンパスの寮から参加してきた医学部1年生のむねくんは、果たして無事に寮へと帰宅できたのか否か…?!
本に翻弄される本楼は、四方八方から本の編集力パワーを吸収できる、まさに編集工学本山的な霊験あらたかな場所なのでした。
吉村さん、素晴らしいエディットツアー、もといMEdit ツアーをありがとうございました!
追伸:この記事をみて「イシス編集学校、気になる!」となった方は、こちらのサイトへGO。一般の方にも開かれたエディットツアーが定期的に開かれており、Zoomで開催のものもあります。魅惑の編集体験、ご堪能あれ!
投稿者プロフィール
- 趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。
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