お知らせ
お知らせ NEWS
2024.08.05
2024.08.05
MEdit授業レポート「本郷高校」
SHARE

私立本郷高校は、旧高松藩松平家第十二代当主の松平賴壽が1923年に創立した由緒ある伝統校。教育目標は、強健・厳正・勤勉と男子校っぽい硬派な熟語が並んでいますが、実際に伺うと、思いのほか、のびのびと自由でさわやかな雰囲気の漂う素敵な学校です。

JR山手線の巣鴨駅から徒歩数分。こんな都会にこんなに広いグラウンドを持つ大きな学校があるなんて! MEdit授業に伺った日の午後は、野球部やサッカー部の生徒さんが元気にグラウンドで練習をしている姿が見えました。

順天堂大学には多くの本郷高校OBがおられますが、私たちMEdit Labメンバーは、初めて伺う学校で、ドキドキ。グラウンドを横目に歩いていくとその先で教頭の平井先生がにこやかにお迎えくださっていました。

◆MEdit授業開始!

先日の桜蔭高校でのMEdit授業で初お目見えのゲーム「バナオーマ」をしたがえ、今回も「バナナの病理診断」と銘打ったMEdit授業です。

まずは、おしゃべり病理医おぐらより、導入のお話。病理診断や病理医の仕事について説明していきます。

挨拶するおぐらの後ろには教育目標の3つの熟語。そして目の前には、教頭の平井先生がご用意くださった熟し具合の異なるバナナがたくさん…

そして、「バナオーマ」タイム! 病理医しんしんが軽快に遊び方を説明していきます。おしゃべり病理医としんしんで進めていく授業もだいぶ板につき、役割分担もスムーズに。

さっそく3つのグループに分かれてゲームを開始します。「バナオーマ」はチーム対抗戦。勝つためのコツは、メンバーみんなで、それぞれのカードのバナナの熟し具合を観察し、それを明確な言葉で共有しておくこと。これがどのくらい精密にできるかどうかで、バナオーマのゲームの行方が決まるといっても過言ではありません。

最初のシンキング・タイムでは、14個のバナナが並んだ一覧表で、バノン(未熟)・バナナ(適熟)・バナオーマ(過熟)の境界を定め、大きなカードを使って、詳細をみんなで確認していきます。ヘタや皮の色味など細かな部分まで観察し、言葉にしていきます。どんな工夫がそれぞれのグループで繰り広げられているか、このあとのバナオーマの行方はいかに!

さらに、バナオーマの経験を踏まえて、バナナの診断基準を行うワークへ!ここで本物のバナナが配られます。カードと違って、実物のバナナの病理診断となると、触り心地や香りも気になります。いったい何を診断基準として採用するか。ここも各グループの工夫の見せどころです。

触りすぎてみるみるみんなの手の中で黒ずむバナナたち…でもそのくらい真剣にバナナを手に取り、その様子をくまなく観察することはふだんないはず。大事な診断体験の一歩です(そっと後ろで見守る教頭の平井先生)

15分ほどのディスカッションタイムを終えて、各グループの診断基準の発表!

香りに着目するグループ、色の変化を詳細に伝えてくれるグループなどなど、各グループで診断基準も実に様々。

ふだんの医療現場においても、意識の状態から様々な疾患の確定診断まで、診断基準はたくさん活用されています。基準として大事なのは、微妙なラインにある事例においても分類できること。境界に近いものを迷いなく分ける基準を考えることはポイントのひとつ。数値を使うことなど、客観的な指標を使うのもコツです。生徒さんのみなさんはかなり苦戦していましたが、少しでも診断のリアルを疑似体験してもらう機会となれば良かったなと思います。

MEdit授業、これからも様々な試みを実験していきたいと思います。バナオーマのような例示を通して、医療の本質を体験してもらうこと、また、医学や医療を専門知識が必要なものと思いすぎず、ふだんの生活の中で何気なく触れる物事の接し方にヒントがあること…。参加された生徒さんそれぞれが、何か疑問や感想や気づきを得てもらえるよう、私たち自身の試行錯誤もまだまだ続きます。

本郷高校新聞特別号20240902