医学生や友人や大学の事務さん、そして初めて会った方から、「おしゃべり細胞スタンプ」使ってますよ!と言っていただくたびに、とっても嬉しいのですが、一方で、「これ、いつ使うんだよ」というスタンプも少なくないんじゃないかと、若干、心配になることも…。
そこで、やや使用をためらいそうなスタンプも、ちゃんとコラムにして取り上げようと思い立ち、選んだ第一弾が「トイレ、行ってきま~す」です。夏は脱水症になりやすく、膀胱炎が起きやすいので、水分をこまめにとってLINEトーク中でもトイレを我慢しないでいただくように…と思っています。
◆伸縮自在のレインコートみたい?
「膀胱」の漢字はいずれも「ふくれるもの、袋」という意味があり、英語名のurinary bladderも尿の袋の意味。bladderが袋であり、gallbladderは胆嚢の英語名です。胆嚢は、肝臓が作った胆汁を十二指腸に送る手前で一時的に溜めておく巾着袋のみたいな形をした臓器です。
膀胱はスタンプの絵にあるように、腰の位置にある左右の腎臓で作られた尿を排尿するまで一時的に溜めておく臓器です。膀胱の容量は、300~500ミリリットルですが、だいたい200ミリリットル以上の尿が溜まってくると「トイレ行きたいなぁ…」と尿意を催します。
500ミリリットルというとペットボトル1個分ですので、膀胱はかなりぱんぱんに尿で張っている状態になります。膀胱はとても柔軟な壁でできており、壁を裏打ちする膀胱の粘膜も伸縮自在の形状でできています。
粘膜は、尿路上皮という特殊な細胞たちがくっつきあってできています。みなさんの皮膚や口の中の粘膜などを構成する重層扁平上皮という細胞に似ているのですが、より伸び縮みしやすい柔軟性を持っています。特に、一番表面の細胞は、「傘細胞(かささいぼう)」と呼ばれており、細胞膜に特殊な構造を備えていて、膀胱が伸び縮みするためのジャバラのようなひだひだで分割され、特に自在に表面積を広げたり、小さくしたりする伸縮性に富んだ構造を有しています。言ってみれば、体格に応じて自在に形と大きさを変えられる高性能レインコートのような感じです!ぱんぱんに尿を貯めても簡単には破裂しないように、かつ、いざ、排尿するときは一気に収縮して尿を押し出す力を出せるような構造になっているんですね。
◆2つを閉じて1つを開ける?
膀胱はさらに巧妙かつ繊細なしくみがあります。左右の腎臓で作られた尿は左右の尿管を通って、膀胱に流れ込み、膀胱に溜まっている尿は、尿道を通って排出されます。つまり、膀胱には、尿が流れ込んでくる「尿管口」が左右ひとつずつあり、底の部分には尿が出ていく、尿道への出口、あわせて3つの出入り口があります。
排尿時は、左右の尿管が閉じ、尿道だけが開くしくみになっていないと困ります、よね? 左右の尿管口がうまく閉まらないと、排尿時に尿が尿管に逆流してしまうからです。重症の場合は、腎臓まで逆流してしまうケースもあります。「膀胱尿管逆流症」という病気ですが、尿が逆流すると細菌感染に伴う腎盂腎炎を起こしやすくなり、腎臓の機能が落ちてしまうこともあります。生まれつきの場合も多いので、先日ご紹介した小児外科医が逆流しないような手術を行って治療をすることもあります。
健常な膀胱では排尿時のしくみは非常にうまくできていて、溜まっている尿を尿道へと押し出すために、ぎゅーっと膀胱の壁が収縮することで、ひだひだと折りたたまれていく膀胱の壁によって、左右の尿管口を完全に封鎖するようになっているのです!
さぁ、今日も、しっかり水分補給をして、我慢をせずにトイレに行ってらっしゃ~い♪
参考URL:膀胱尿管逆流症 – 一般社団法人日本小児外科学会 (jsps.or.jp)
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投稿者プロフィール
- 趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。
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