「宣伝しておくね~」と何かをふりまく形質細胞くん。
今日は、免疫担当細胞でもちょっとマイナーな形質細胞についてのお話です。
◆形質細胞はいちばん“成熟”したリンパ球
免疫を担当する細胞を一括して「白血球」といいます。その中でも末梢の血液に流れている免疫担当細胞を総称して白血球と呼んでいます。みなさんも白血球という言葉は聞いたことがあるかも。以前のコラムでも血液検査の項目で「WBC: white blood cell」として略されるという話をしました。
実は、白血球にはいろいろな種類があり、細菌をいちはやくやっつける好中球やアレルギーに主に関与する好酸球や好塩基球、ウイルス感染症に対応したり、カラダの炎症全般に関与する単球(ただし、血管の外に出ると「組織球」と名称が変わります)やリンパ球があります。
リンパ球にはさらに、B細胞、T細胞、NK細胞と生まれと育ちの異なる細胞たちがおり、それぞれに役目が異なります。
◆形質細胞ってどんな細胞?
形質細胞はいったいどんな細胞かというと、B細胞がいちばん成熟した段階の細胞をいいます。メジャーじゃないのは、末梢血に流れることがないから。主にリンパ節であるとか骨髄であるとか血液の外側で活動している免疫担当細胞なのです。
B細胞のBは「Bone marrow」のB。Bone marrowとは骨髄(=血液細胞がつくられている全身の骨の中心にある臓器です)のことです。B細胞は、骨髄で育つリンパ球で、ある程度すると自らが育った骨髄を出発して、リンパ節へ移動します。そこで、抗原提示細胞という厳しい指導教官から、「この抗体を作ってみろ!」と指導され、成熟します。ある病原体に特化した抗体をつくることができるようになった立派なB細胞の一部は、骨髄へ戻り分化して形質細胞になるのです。
◆ふりまいているのは抗体
つまり、形質細胞がふりまいているのは、ある特定の抗原に反応する抗体です。形質細胞のすごいところは、抗体を量産して、血液中に抗体をふりまき、次に同じ病原体がやってきたときにすぐに臨戦態勢につくことのできる準備を整えられるところです。
形質細胞は、その量産態勢に特化した形をしており、LINEスタンプのイラストのように核が細胞質の端っこに寄り、その近くに発達したゴルジ装置を有し、たくさんの抗体が効率よくできるようになっています。
◆時に家庭内暴力?
そんな有能な形質細胞ががん化するとやっかいです。出戻ってきた家(≒骨髄)を破壊するような暴挙に出ます。形質細胞ががん化したものを「多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)」といいます(別名、形質細胞腫瘍ともいいますが、骨髄で形質細胞ががん化して増えている場合は、前者の名前が使われます)。
がん化した形質細胞は、同じ抗体ばかりを過剰に産生しつづけます。この抗体は、M蛋白とよばれますが、あまりのM蛋白の量に血液がねっとりするほどです。さらに家を破壊する、つまり、骨髄の骨組みである骨を溶かす悪さもし、あちこちで骨折を引き起こす他、骨折によってカルシウムが血中に出てきてしまい、高カルシウム血症などいろいろな病態を引き起こします。
ふだん、縁の下の力持ち的に骨髄から適切な量の抗体を送り続け、カラダを病原体から守る役割を担ってくれている形質細胞。がん化するとなかなかに大変です。
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投稿者プロフィール

- 趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。
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