「細胞ひとつから何がわかるの?」そんな疑問に向き合うお仕事があります。
臨床検査技師にはいろんなスペシャリストがいますが、その中でも細胞検査士は「診断」という大きな役割に関わることができます。
◆細胞診検査って何?
私の働く病理検査室から報告される検査結果は、大きく分けて2種類です。組織診断と細胞診断。このうち細胞診断は、細胞検査士が異常を拾い上げて、病理医が診断を完成させて報告します。つまり細胞検査士が異常を見過ごしてしまうと、病気の診断が遅れてしまう可能性があります。とっても責任重大なお仕事なのです。
細胞診断をするための検査を、細胞診検査とよんでいます。検体として届くのは、尿や痰などのなじみのあるものから、体腔液という身体のすきまにある水分や、子宮の細胞を綿棒やブラシで擦って採取した細胞など、体中のあらゆる細胞がいろんな形で提出されます。どれも採取するのに痛みが少なく、患者さんの負担が小さいのが特徴なので、スクリーニング検査や健康診断など、病気のふるい分けをしたいときに活躍します。それぞれの検体に合わせた方法で細胞たちを集めて、スライドガラスにくっつけることで標本を作っていきます。くっつけただけでは細胞の細かいところを観察するには難しいので、パパニコロウ染色という方法でカラフルに染めます。そうしてようやく、細胞診標本の完成です。
完成した標本を顕微鏡でのぞいてみると、いろいろな形の細胞が見えてきます。私たち細胞検査士は標本をじっくり観察して、悪さをしている細胞(がんを疑う悪性細胞)と、おとなしい細胞(正常の細胞)を、「細胞の顔つき」で見分けていきます。ここで悩んでしまうのが、一見おとなしそうに見える、よい子のフリをする悪いヤツです。そんなときは病理医と観察します。病理医は、細胞や組織から“病気の正体”を見つけるスペシャリストです。患者さんの情報を共有しながら一緒に顕微鏡をのぞき、どんなところが怪しいのか、周りにいる他の細胞たちはどうか、丁寧に観察して、相談しながら慎重に診断をしていきます。
◆細胞検査士になるには?
さて、この細胞検査士になるためには細胞検査士資格認定試験に合格しなくてはいけません。この試験は、臨床検査技師として主として細胞診検査の実務に1年以上の従事した者、細胞検査士養成所あるいは養成コースのある大学の卒業、卒業見込み者が受けることができます。私は希望していた病理検査室への配属が決まってから、細胞検査士を目指して勉強を始めました。仕事が終わった後やお休みの日に勉強会へ参加して、コツコツと勉強しながら1年目に筆記試験、翌年に実技試験と、2年かけて試験に合格することができました。そして晴れて細胞検査士!…とはいかず、私が細胞検査士になりたてのヒヨコだった頃は、テキストの写真通りの細胞に出会うことは少なく、試験と実際の患者さんの細胞の違いにたくさん振り回されました。先輩や病理医にたくさん鍛え抜かれて、少しずつ一人前の細胞検査士に近づいていきます。私もまだまだ道半ばです。これからもたくさんの検査に悩みながら、成長していきたいと思います。
◆参考:日本細胞検査士会ホームページ
◆バックナンバー
投稿者プロフィール

- 看護師の姉を追うように医療の世界へ。臨床検査技師国家試験合格後に、緊急検査士、細胞検査士と、専門を極めていくド根性ぶりとふわっとした雰囲気がギャップ萌え。好きなことは映画鑑賞とガチャガチャ。
最新の投稿
- 2025.10.13夢みる臨床検査技師細胞ひとつから何がわかるの?-細胞検査士の仕事-
- 2025.01.16夢みる臨床検査技師インフルエンザにまみれる検査室から
- 2024.01.25夢みる臨床検査技師血液のオモテとウラの顔
- 2023.06.05夢みる臨床検査技師採血のお作法とは? あなたの知らない採血トリビア