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2025.10.30
2025.10.30
太さも色も多種多様!?注射針にせまる!
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我が家の6歳の娘は「病院行くよ!」というと、「注射?」と必ず聞いてきます。大人でも病院といえば「針をさされる」と思う方が多いのでないでしょうか。ちょうど今月からインフルエンザの予防接種が始まりましたが、私自身も予防接種や健康診断の採血で針をみると、やっぱり少しドキドキします。

苦手な方も多い「注射針」について、今日はご紹介していきましょう!

★針にはたくさんの種類がある!

病院では目的によって「針の太さ」を変えています。冒頭であげた予防接種と採血では実は針の太さが全然違います。インフルエンザの予防接種ではおおよそ0.4mm、採血ではおおよそ0.6mmと、1.5倍もの差があります!

もちろん細い針の方が痛みが少ないですが、採血の時に細い針を使ってしまうと、血液の中に含まれる赤血球が壊れてしまい(溶血)、検査結果が変わってしまうため、ある程度の太さが必要なのです。献血などたくさんの血液を採る時には、さらに太い針を使って採血時間を短くしています。日本の献血では1.2mmの針を使用していますが、世界的には1.6mmとさらに太い針を使うのが一般的だそうです。少しでも痛みや恐怖心を減らすため、日本赤十字では形や長さを工夫しています!

太さだけでなく、針の先端の角度にも種類があります。予防接種など皮膚や筋肉に注射するときには痛みが少ない鋭角な針を、採血など血管を刺すときには血管を傷つけないように鈍角な針を使います。ただし、その差はたった6度!この細かな工夫が患者さんを、そして針を使う医療者をサポートしてくれています。

★点滴の針は二重構造

病院で針というと、予防接種や採血のほか、点滴をイメージされる方も多いと思います。実は点滴の針は他の針と大きく構造がかわります。

点滴では、血管(静脈)の中に直接、薬を投与します。薬により投与時間は変わりますが、数時間にわたるものや何日も連続で投与するものもあります。その間血管の中にずっと針をいれておくわけにはいかないので、点滴の先端は柔らかいプラスチックでできています。しかし、プラスチックだけでは皮膚を貫通して血管にたどり着くことができません。そこで、点滴の針では、内側に尖った針、外側にプラスチックのチューブという二重構造になっています。針で皮膚をつらぬき、血管に達したところで、外側のプラスチックチューブだけを血管の中に残して、内側の針を抜いてきます。この手技を正式には「末梢静脈路確保」といいますが、日常診療では「ルート確保」と呼ぶことが多いです。

血管に針をさすというのは採血でもルート確保でも同じですが、チューブを残さなくてはいけないのでルート確保の方が難しいと私は思います。入院での治療はルート確保が必要なことが多く、また急変時にルート確保ができないと、必要な治療が遅れてしまう可能性もあります。研修医になってまず練習するのがルート確保です。同期や先輩の腕を使い、何度も練習しました!

★針がカラフルなワケ?

注射針もルート確保用の針も、プラスチックの部品やパッケージには色がついています。黄色、青、ピンク、緑など、並べるとカラフルで綺麗ですが、色がついているのはもちろん綺麗だからではありません。

ここまで針の太さをmmでお話しましたが、実際の表記はmmではなく、「G(ゲージ)」という単位が使われます。予防接種の針は27G、採血の針であれば23G、献血の針は18Gと、ゲージにおいては数が大きくなるほど太さが細くなります。もともとワイヤーの太さなどに使われていた単位とのことで、ゲージとmmの間には計算式等はなく、イメージが難しい単位ですが、メーカー問わずこの単位でつくられます。

日本国内では、ゲージに対応したカラーが決められています。そのため、どの病院に行ったとしても、ひと目で針の太さがわかるのです!できる限り早く注射やルート確保を行わなければならないときに、細かい字をみなくとも、針を選ぶことができるのはとても重要なのです。日常会話でも「ピンク針」なんて言葉が聞こえてくるほど、針の色は身近な存在です。

みなさんに嫌がられることの多い注射針ですが、色々な工夫がされています。注射や採血受けるとき、ぜひ針に注目して痛みを紛らわせてみてくださいね。

 

■参考webページ

日本赤十字社

・医薬品・医療機器等安全性情報
Pharmaceuticals and Medical Devices Safety Information No.234

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投稿者プロフィール

發知 詩織
發知 詩織
全方位に目があるんじゃないかという細やかな気配りのできる逸材。寛大で誠実、緻密な仕事ができるのに人に優しい。病理医とSTEAM教育研究者の二足の草鞋を履くお母さん。愛くるしいパンダに似ているのであだ名は「しんしん」。