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レッツMEditQ COLUMN
2024.10.03
2024.10.03
ボードゲームを囲めば、即、仲良し!【MEditカフェ・VIRGO開催】
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2024年9月21日。2024年度のワークショップ「医学をみんなでゲームする2」の対面の会、第2回目です! 中高生は文化祭や秋の大会などで忙しいタイミング。前回よりも来て下さる人数が少なかったら淋しいなぁと思っていたのは杞憂でした。ボードゲームをチームで遊ぶにちょうど良い12名でMEditカフェを開催することができました。

この12名が、世の中の一般的なワークショップではありえないほど多様。世の中、「多様性、多様性」と叫ばれているけれど、真の多様性はMEdit Labにあり! 中1女子、高1女子、医学部女子2名、医学部男子2名、図書館職員男性、フランス語講師女性、薬剤師女性、ゲームエディター男性、そして、病理医2名。

どうですか? まぁ、医学関連の専門家がやや多めなのは否めませんが、推定の年齢差は50歳くらい?! 年齢も職種も立場も全く異なります。初対面の中1女子と図書館職員男性が会って5分後にゲームで一緒に遊ぶ、なんていうのはちょっと他にはないシチュエーションではありませんか!

これがボードゲームのすごいところです。ボードゲームを囲めば、即、みんな仲良し! ゲームで遊びながらすぐに会話も弾みます。そこに加えて、この12名は今、ゲームづくりのプロセスを進めている同志ですから、ゲームの仕組みなど、ゲームデザイナー視点の話題も共有できます。それぞれ違ったゲームをつくろうとしているワークショップですが、みんなで一緒にプロセスを楽しめる。なんて、素敵なワークショップでしょう(と、自画自賛するおしゃべり病理医)!

今回は、おしゃべり病理医や病理医しんしんが用意したゲームもありましたが、図書館職員のMEditネーム、しゅうぜさんと、ゲームエディターのいしがみさんが持ってきてくださったボードゲームが医学にも近いテーマで、かつ魅力的なゲームだったのでご紹介しましょう!

◆管理栄養士志望のあなたに「サラダマスター…野菜の栄養素を推理するゲーム

おしゃべり病理医がドはまりし、即、Amazonでポチっとしたゲームです。管理栄養士を志望しているみなさんにはドンピシャのカードゲームですよ。

様々な野菜のカードがあり、表には野菜の絵、裏側には100gあたりの栄養素が表示されています。最初に、3枚ずつの野菜カードがそれぞれのプレイヤーに配られて、お題カードも場に3枚開かれた状態でおかれます。これでゲームスタートの準備は万端。

親は、お題カードの3枚から1枚選びます。お題カードには「炭水化物が少ないもの」といったお題が表示されており、それぞれプレイヤーは自分の手持ちの3枚の野菜カードから、そのお題に一番フィットすると思うカードを場に出します。出されたカードの中で、最もお題に即したカードを出せた人が勝ちで、お題カードをゲットできます。お題カードをいち早く3枚ゲットした人が勝ちになります。

このゲームの面白いところは、自分自身の野菜カードの栄養素は確認できないこと。上の写真のように、カードの表だけを見て、自分の野菜の栄養素を推測する必要があります。逆に相手の野菜カードは裏面の栄養素がばっちり見えているために、相手の野菜カードの栄養素を参考に自分の野菜カードの栄養素を予想したり、会話は自由なため、相手をけん制したりすることができます。

「えだまめとそらまめってどっちがタンパク質多いのかな?」「とうがらしの100gあたりのカロリーなんて考えたことないよねぇ…」3名1組のチームだったので、チーム内であれこれディスカッション。野菜の予想外な栄養素のヒミツを知ることができて、勝っても負けても楽しめます。

◆どうしたって飲んでしまうの「今日からやめます…アルコール依存への理解を促すゲーム

打って変わって、登場したかなりシリアスなゲーム。いしがみさんが持ってきてくださった「今日からやめます」は、アルコール依存症患者への理解を促すゲームです。

上の写真のように、ひらめきカードと分岐点カードがあり、これだったらお酒に向かわないだろうなぁと思えるカードを選びます。裏をめくると、思考の軌跡が書かれており、左下に「○○杯」とどれだけお酒を飲んでしまったかが赤字で記されています。

100杯に達するとゲームオーバーです。実はこれらカードは何を選んでも程度の差はあるものの「結局飲んでしまう」ことになっています。そうなんです。アルコール依存の患者さんは、通常では考えられないような思考パターンでどんな出来事やひらめきも最終的には飲む理由やきっかけにしてしまうのです。健常な人だと、「どうしてそっち(お酒を飲む方)に行っちゃうのよ」と思っても、アルコール依存の人はそもそもお酒に対する認知が歪んでいるわけです。それこそが病気の本質であり、誰かが手を差し伸べてあげなければ、お酒を止めることができないということを理解する必要があります。

みんなで「アルコール依存症ってこんな悲惨な状況に陥るのか…」と、深々とため息をつきながら次のゲームへ…。

◆どこまで利他的になれるか「Turn the Town…糖尿病患者に溢れる町を商店街の自助努力で改善するSDGsゲーム

お次もいしがみさんが持ってきてくださったドクター考案のボードゲームです。糖尿病患者に溢れる町を商店街でさまざまなお店を構える住民たち自身が身銭を切りながら、改善していくというゲームです。

ボードゲームの箱の面には「不健康スパイラルの脱出」とありますが、ゲームのスタート段階ですでに、町の病院は糖尿病の入院患者が今にも溢れそうな状態というギリギリの状況。

色々なイベントがあるたびに、それが糖尿病を悪化するような内容であると、住民の何名かが糖尿病予備軍へ、予備軍から何名かが外来へと、町の状況は刻々と悪化していきます。

私たちはみんなで話し合って、それぞれお金を出し合い、ひとまず別の地域の病院にいま入院している糖尿病患者さんを何名か転院させることに。入院できるベッドに少し余裕ができて安心してしまった私たちは、自分のお店の利益ばかりを気にしながら、抜本的な糖尿病対策を打てずに、どんどんと町の状況を悪化させてしまいました。

ゲームマスター役のいしがみさんが、必死で、「自分のお店の収益のことばかり考えていないで身銭を切って町の状況を良くしないと!」と訴えるのですが、プレイヤーの私たちは「まぁまぁ…、とりあえず、ねぇ~」と言いつつ、「SNS映えパンケーキ食べ放題企画」などを立ち上げたりして、店の利益を優先し、住民を着々と糖尿病へと向かわせてしまったのでした。

中途半端なSDGsは、地球環境を一向に改善しない。そうこうしているうちに地球が壊れてしまう──

というような話はよく聞きますが、この架空の町の糖尿病改善対策でさえ、ままなりません。私たちは目先の利益、自分の利益だけを優先してしまって、環境を少しずつ悪くさせてしまう。悪気がなくても確実にその悪化要因の一員となってしまうこと。かなり身につまされるゲームでした。

以上、ゲームで遊ぶと4時間はあっという間! それぞれ特色の際立つボードゲームに触れ、自分が作りたいゲームのイメージが少し膨らんだのでした。

次回は、10月26日。そのころにはだいぶ自作のゲームも大まかな形が見えてくる頃合いです。これからもみんなでゲームデザインという方法を通して、医学のこと、社会のこと、そして学び方について、考えていきたいと思います!

投稿者プロフィール

小倉 加奈子
小倉 加奈子
趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。