インフルエンザという名前の由来は、“星の影響”という意味の「Influentiacoeli (イ ンフルエンティア・コエリ)」にちなんで名付けられたとか。冬に流行することから、昔の占星術者たちは天体や寒気の影響で発生するものと考えていたようです。
臨床検査技師の私は、この年末年始、インフルエンザの検査で本当に大忙しでした。次から次へと届く検体。結果は陽性ばかり…。インフルエンザにまみれた検査室。
インフルエンザの検査といえば多くの方が一度は経験したことのある検査だと思いますが、「あの、鼻の奥に綿棒を入れられる痛くて苦しいやつ」というイメージがあるのではないでしょうか。10㎝もあるあのなが~い綿棒を、なぜあんなに奥までつっこまなくてはいけないのでしょう?
◆迅速簡易キット検査の限界
インフルエンザの検査方法は、大きく分けて2種類です。クリニックや検査室が小さな病院など、多くの病院で迅速簡易キットを用いた定性法で検査しています。この検査方法は結果を速く知ることが出来るという最大のメリットがあります。
一方で、身体の中に検出できるだけのウイルス量がなくては陰性となってしまうデメリットが。みなさんの中にも体調がすごく悪くて、確実にインフルエンザだろうと思って検査を受けても陰性だった、という経験がある方もおられるのでは? 体内でウイルスの量が多くなる、発熱してから12~24時間後以降の検査が望ましいとされています。
もう一つは、私の働く検査室でも用いられている、ウイルスの“量”を測定する定量法の検査です。定量法はキットで検査をするよりもはるかに感度が良く、非常に少ないウイルス量でも陽性の判定が出ますが、定性法よりも時間がかかってしまうというデメットがあります。
病院によっても、その時の流行の状況などによっても、検査の方法、使っている簡易キットは様々です。最近は、迅速簡易キットの供給不足が問題となっています。
◆検査は採取がカンジン!
どんな検査であろうと、検体が正しく採取されていなければ正しい結果は出ません。臨床検査は、採取がカンジンです!
インフルエンザの検査では、鼻の奥にある喉との境目の場所「鼻咽頭」まで綿棒を入れてぬぐった液が検体となります。なぜなら、鼻咽頭にウイルスが最もたくさんいることが、様々な研究で証明されているからです。(少し前の研究になりますが、インフルエンザウイルスに感染したひとの体内のウイルス量を部位別に調べた研究があります。迅速簡易キットで検出できる濃度以上のウイルス量があるか否かの確率は、うがい液で0%、咽頭ぬぐい液で42.0%、鼻腔ぬぐい液で54.5%、そして鼻咽頭吸引液ではなんと91.7%と違いがあったのです。)
これが、鼻の奥に綿棒をつっこまなくてはいけない理由です。検査技師である私も検体採取を行いますが、患者さんに採取の説明をすると、顔がこわばる方や「痛いからいやだわ〜」といった声が多いです。みなさんにぐっと我慢してもらい、ばっちり鼻咽頭から採取した検体を検査室に持ち帰り、検査を行います。
◆検査の準備は念入りに・・・
流行の時期には一度に数件まとめて検査することもあるため、患者さんの確認を念入りに行い、検査の準備をします。綿棒についたぬぐい液は、そのままでは検査できません。抽出液という液体に綿棒を浸して、綿棒を洗うイメージでウイルスを浮遊させます。私はこの作業では「ちょっとしつこく」を心がけています。せっかく採取したウイルスは逃しません!
寒さと一緒にまだまだ続きそうなインフルエンザ流行ですが、検体採取に検査にと奮闘しつつ、私も感染予防を徹底して乗り切りたいと思います。みなさんもどうかお気をつけて!
◆参考文献・URL
三田村敬子、菅谷憲夫「6.インフルエンザの診断と治療-臨床症例のウイルス排泄からの考察」ウイルス2006; 56; 109-116
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投稿者プロフィール
- 看護師の姉を追うように医療の世界へ。臨床検査技師国家試験合格後に、緊急検査士、細胞検査士と、専門を極めていくド根性ぶりとふわっとした雰囲気がギャップ萌え。好きなことは映画鑑賞とガチャガチャ。
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