診療すごろく COLUMN
医学部最終学年である6年生には大きな山場が3つあります。夏のマッチング、秋の卒業試験、そして冬の国家試験です。夏のマッチングなんていうと楽しそうに聞こえますが、残念ながらこれも試験のひとつなのです!前回のコラムでお話した臨床研修を行う病院を決めるシステムのことで、就職試験にあたります。
一般の就職活動では、自分が勤めたいところに応募し、それぞれの企業から採用・不採用の通知が届き、採用をもらった中から就職先を選ぶという流れが多いかと思います。それに対して、研修医の採用では「マッチング協議会」という団体が間に入り、日本全国9000人弱の医学生の就職先をなんとまとめて決めているのです! では、どうやって?
もちろん協議会が勝手に決めるわけではありません。就職先である病院は事前に筆記や面接などのテストを行い、医学生は希望する病院を受験します。人によっては複数の病院を受けることもあります。変わっているのはここからで、受けたテストの結果が病院から直接知らされるわけではないのです。
試験を受けたあと、医学生は自分の就職したい病院に“順位”をつけて、マッチング協議会に申請します。一方で、病院側も採用したい学生に順位をつけて協議会に提出します。臨床研修を希望する全ての医学生と受け入れる全ての病院がこれを行い、マッチング協議会が決められたアルゴリズムに則って、一斉に就職先を決定します!(アルゴリズムはやや複雑なので、気になる方はぜひこちらの動画をご覧ください!)
今年度(令和4年度)のマッチングの結果をみてみると、第1希望に就職するのは全体の66%。私自身が6年生の時には、学年みんなの就職先が一度に発表されるマッチング発表日はかなりピリピリした雰囲気でした。私は出身大学の附属病院に就職したので、発表後には未来の同僚となる同級生と喜びを分かち合いましたが、少数ですがマッチングで就職先が決まらない(アンマッチになる)同級生もいるので、廊下でこっそり喜ぶようにしていました。
そんなドキドキのマッチングを経て、来月からは私たちの職場にも“若葉マークのお医者さん”がやってきます!研修医の先生のエピソードもまたご紹介しますね。
追伸:
おしゃべり病理医は、研修医の選考にかかわっていますが、マッチングに関しては、病院側もものすごーくドキドキするイベントです。医学生に人気がないということは、勤め先として魅力がないということ。やる気がある方にたくさん希望してほしいですし、その方が病院の質も上がる! というわけで、私たち指導医は、日頃から医学生や研修医の指導に力を入れるのですが、その結果が毎年、「マッチング充足率」や「研修先人気ランキング」のように、“数字”として表れるということなのです。こわいですよー。ドキドキですよー。「この医学生、すごくいい子だったからぜひ、うちに来てくれないかなぁ~」と思っていても、マッチング結果にその子の名前がないと好きな子にフラれたような気持ちに…。
投稿者プロフィール
- 全方位に目があるんじゃないかという細やかな気配りのできる逸材。寛大で誠実、緻密な仕事ができるのに人に優しい。病理医とSTEAM教育研究者の二足の草鞋を履くお母さん。愛くるしいパンダに似ているのであだ名は「しんしん」。
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