昨年度、MEdit授業で大活躍した病理診断体感カードゲーム「バナオーマ」。おかげさまで多くの方が気に入ってくださり、「このゲーム、売ってないんですか?」という熱い声までいただいていました。
そんなバナオーマ。このたび、バージョンアップして、デビューします!
その名も「バナオーマ/アデノーマ」です(わ~、パチパチ)!!

◆アデノーマって何? -ゆっくり大きくなる良性腫瘍のこと
アデノーマとは、英語で“adenoma” と綴りますが、日本語で「腺腫」という意味。腺腫とは良性腫瘍の一種です。
大腸内視鏡(大腸カメラ)の検査で、便の通り道にカメラを入れながら大腸の粘膜を観察していくと、ぽこっと飛び出てみえるのがいわゆる「ポリープ」。ポリープを見つけたら、その部分をぷちっとつまんできて、「病理検査」に出し、それをガラススライドにして顕微鏡で詳しく観察します。
ポリープの多くは、小さいものではたいがい「腺腫(良性腫瘍)」なのですが、腺腫の一部は放置しておくと、遺伝子異常が積み重なっていき、ついには「がん(悪性腫瘍)」になってしまうことも。この腺腫からがんへの進展のプロセスを「腺腫癌進展(様式) adenoma-carcinoma sequence」と呼びます。
良性腫瘍の場合は、増えるスピードがゆっくりであまり悪さをしませんが、悪性腫瘍では、増えるスピードがどんどん速くなり、まわりの組織を壊して、壁の奥に入り込んだり、他の臓器に「転移」したりする可能性が出てきます。がんになると腸の中を占拠するくらい大きくなったり、壁を突き破って腸の外に出てしまったり、潰瘍を作って大出血をしたり、肝臓や肺など他の臓器に転移したりする恐れも。ですから、良性腫瘍の段階で治療することは極めて大切です。
病理医の私たちは、今、顕微鏡で観察しているポリープが、腺腫の段階なのか、あるいはすでにがんに進展してしまっているのか、細胞の形や配列を観察しながら診断しています。見た瞬間、がん!とわかるものもあれば、“がん寄りの腺腫”であるとか“腺腫寄りのがん”といったグレーな病変もあり、診断に悩むこともあります。

これをバナナの熟し具合で疑似体験してもらうのが「バナオーマ」、ホンモノで体験してもらうのが「アデノーマ」。つまり、今回私たちがつくった「バナオーマ/アデノーマ」は、病理診断をバナナからホンモノの病気へと段階的に体験できるゲームなのでーす!
〇大腸がんになる前に早期発見しよう! -ポリープの“顔つき”で診断
食べ物は、口→食道→胃→小腸→大腸→肛門と、消化管を進みながら消化吸収され、約1~1.5日で便となって排泄されます。大腸は、主に食べ物の水分を吸収し、硬さのある便をつくる働きを有しています。カードの写真は、すべて大腸粘膜の“断面”を顕微鏡で見たもの。写真の上の空間が便の通り道です。水分を吸収したり、粘液を分泌したりする働きのある「腺細胞(せんさいぼう)」が「腺管(せんかん)」と呼ばれるストローのような筒状の構造を作って規則的に並んでいます。
腺腫やがんになると、腺細胞や腺管の形が変化していきます。細胞の大きさや並び具合、先ほど説明した腺管の密集具合や曲がり具合などで判断するのが、「病理診断」です。ポリープは悪くなればなるほど、正常の状態とは似ても似つかないものへと変わっていきます。
この腺腫からがんまでの変化を14段階に分けた写真が今回のアデノーマカードなのです! こちらの写真は、消化管病理の大家である、順天堂大学人体病理病態学講座・主任教授の八尾隆史先生が提供くださいました!むちゃ本格的!
14枚のアデノーマカードの写真をまずは並べてご覧ください。腺腫も正常に近いものからがんに近いものまで、がんも腺腫に近いものから、圧倒的に“顔つきの悪いもの”までグラデーションで並んでいる様子は圧巻です。

細胞の顔つきは、「異型」と「分化度」で判断します。正常からの形の変わり具合を「異型」といい、顔つきが悪い細胞、すなわち正常からの変わり具合が大きいほど、“異型が強い”と表現します。また、正常に近い状態を「高分化」ともいい、正常からどんどん形や構造が変わっていくにしたがって、中分化、低分化と、“分化度が低くなる”と表現します。
異型や分化度といった病理医が使う医学用語を駆使して、病理医になり切って病理診断してみましょう!
追伸:
ゲットできるチャンスは限られている~
1)2026年11月23日(日)/24日(月・祝)で、開催されるイシス編集学校「別典祭」
↓以下のリンクからお申込みいただけます。参加費無料♪
11月は別典祭へいこう! 二日限りの編集別天地?【11/23-24開催】(10/28更新)
2)来春のゲームマーケット2026に参加する?!かも?
「おしゃべり病理医とDr.カリーの大腸腫瘍 医学っぽい解説pdf.」←クリックしてダウンロード!
投稿者プロフィール

- 趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。