いよいよMEdit Lab初のワークショップ「レッツMEdit Q! 医学をみんなでゲームする」の締め切りが迫りました。申込み締切は4月30日(日)。参加希望者もぞくぞくと増えています。
前回、前々回のコラムでは、このワークショップで扱う「ゲーム」ってなんぞや?というお話をしました。今回は「医学をゲームする」という言葉に込めた、もうちょっと深い意味をお伝えしようと思います。
もしかしたら、応募に悩んでいる方のなかには「慣れない環境にいってみて、失敗しちゃったらいやだな」って心配している方もいらっしゃるでしょう。そりゃそうですよね。高校生のみなさんが大学キャンパスで行われるワークショップに参加したり、医学部以外の大学生のみなさんが医学系の学びに飛び込んでみたりするのは、足がすくんでしまって当然だと思います。
でもね、不安な方こそ、来ていただきたい。
もしかしたら、いまみなさんは、「正解・不正解」のはっきりした世界に生きておられるかもしれないからです。自分の一挙手一投足に対して、「このふるまいが正しい」「このふるまいは間違っている」って
ジャッジしてしまうから、失敗することが怖いのかなと想像しています。
学校ってわりとそうですよね。たとえば「自由に感想を書きなさい」なんていう課題で、「つまんないと思いました」なんて正直に書けない。嘘でも「学びがありました」って書くのが、“正解“とされる。どこにも明文化されていない“正しさらしきもの“という型に自分をあてはめていくのはとても窮屈だと思います。
でもね、MEdit Labで扱おうとしているのは「ゲーム」なんです。
ゲームのなにがいいって、そこには「絶対的な正解」はないということ。
2023年3月、藤井聡太さんが羽生善治さんを破った“世紀の決戦”がありましたよね。あのときは、ふたりとも、AIが示す最善手を選ばなかったんです。そのとき、外野で見ていた人たちは驚き、「これが藤井聡太の敗因の手になるかも」とか「羽生善治もミスをしたか」とハラハラしていました。
でもじつは、ふたりとも、現状のAIの判断を超えるような策で戦っていたのでした。
そこに予定調和なんてものはない。意外な一手こそが可能性を開いていたのでした。私はそれに感動しました。ふたりとも勝ち負けを超えて、将棋というゲーム自体の可能性を追求しているようにも見えました。
ゲームって、遊ぶというプロセス自体が楽しみであって、「正解」も「不正解」もないんですよね。
じつはね、医療にも正解がないんですって。
これは、文系ウメ子がおしゃべり病理医・小倉さんから聞いてびっくりしたことなんですが、ドクターたちも「絶対的な正解」なんてない医療の世界で、日々試行錯誤しているんだそう。
誰にどんなお薬を出すか、どんな手術をするのか、きっと患者さんによって選択肢は無数にあるのでしょう。いま、暫定的に「これが正解だね」と認識されている方法だって、今後医療の発展によって変わるかもしれない。
だって、『世にも危険な医療の世界史』(文藝春秋社)によれば、ナポレオンもリンカーンも「水銀」の一種を薬として服用したことがあるんですってよ。現代の我々からするとありえない選択肢だって、かつては広く信じられていたわけです。
「医学の常識」は、時代によって変わります。
とするならば、いまの医学で「あたりまえ」とされていることも、5年後には変わっているかもしれない。
そうやって医学の常識を覆すような発見のためには、既存の医学の知識にとらわれていない高校生・大学生のみなさんのアイデアこそが生きてくる可能性があるわけです。
私たちの生きる社会には、じつは確固たる「正解」なんてないんです。MEdit Labのワークショップでは、それを腹の底から体感いただけるはず。
もしこのコラムをお読みのみなさんで「何が“正解”か、いつも考えちゃってちょっと窮屈」とか悩んでいる方がいたらそのお悩みもMEdit Labのワークショップで解決できるかもしれません。
投稿者プロフィール
- 聞き上手、見立て上手、そして何より書き上手。艶があるのにキレがある文体編集力と対話力で、多くのプロジェクトで人気なライター。おしゃべり病理医に負けない“おせっかい”気質で、MEdit記者兼編集コーチに就任。あんこやりんご、窯焼きピザがあれば頑張れる。家族は、猫のふみさんとふたりの外科医。