ふしぎな医学単語帳
ふしぎな医学単語帳 COLUMN
2023.06.15
2023.06.15
Bluetooth病?いいえ「ブルートウ症候群」
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◆ブルートゥースじゃなくって?

Bluetooth、ではなく、「ブルートウ=blue toe=青いつま先」。
今日は、“青いつま先”症候群についてお話します。トウシューズを履きすぎたバレリーナがかかる病気ではありません。説明していきましょう。

酸素を豊富に含む動脈血は、鮮やかな赤色ですが、酸素が少ない静脈血は、どす黒い色をしています。血流が悪くなると、静脈血が滞り、その部分の皮膚全体がなんとなく青黒い色調になります。

さらに本格的に血流が途絶えてしまうと、途絶えた先の組織が死んでしまい(「虚血性壊死=きょけつせいえし」といいます)、真っ黒に変色します。手足の指などでこの状態になってしまうと、病原菌が付着して重症の感染症を引き起こしたりしますし、強い痛みも出てくるため、切断を余儀なくされます。

ブルートウ症候群は、まさに足の先の血流が著しく悪くなり、青黒く変色する様子そのものを表した病名ですが、別名「アテローム塞栓(そくせん)症」といいます。とっても怖い病気です。

◆どこからやってきたの?アテローム

「アテローム」は、脂質に富んだ成分のことで、「塞栓」とは、血管が何らかの物質によって閉塞することをいいます。つまり、アテローム塞栓症とは、どこからか血流に乗ってやってきた油まみれのカタマリ(アテローム)が、細い動脈のところでひっかかり、つまってしまった状態です。つまってしまうと、先ほど説明したようにその先の組織に血流が届かなくなり、虚血性壊死を引き起こします。

ブルートウ症候群は、つま先の部分の血管にとどまらず、内臓を含めた全身の小さな動脈にアテローム塞栓を生じるため、様々な臓器の働きに影響を及ぼし、重症の場合は、循環不全や多臓器不全となって亡くなることもあります。

そもそも、このアテロームはどこからやってきたのでしょうか。これは、もっと太い血管である大動脈の壁一部がちぎれたものです。その大動脈はひどい動脈硬化に陥っていることが大半です。

動脈硬化に侵された大動脈の壁は、イメージ的には“何年もお掃除していない水道管”さながらです。ヘドロがこびりついてべとべと。動脈の壁は、脂質がたっぷり含まれた血栓がこびりついています。血管壁には血栓がこびりついて炎症が起こり、ぼろぼろに。長くこびりついた脂質は変性してコレステリンという結晶に変わりながら、硬くて脆い“プラーク”へと変化していきます。

このプラークが何らかの原因で壊れると、粉々になったアテロームが血流に乗って、びゅーんと全身に運ばれてしまい、様々な臓器の小さな動脈でひっかかり、アテローム塞栓を引き起こすのです。

◆生活習慣病はコワイ!

やはり生活習慣病(メタボリックシンドローム)はコワイです。高脂血症の状態が長く続いたり、血管壁にダメージを与える血圧の高い状態が続くと、動脈硬化が進み、ブルートウ症候群のリスクがぐんと上がります。特に大人になったら、適度な運動、十分な睡眠、栄養バランスの取れた食事を摂るといった生活習慣を見直していかないと、知らないうちに血管がぼろぼろになります。

何かにぶつけたり、モノを落としたりしていないにもかかわらず、足の先が青くなったら(ご両親やおじいさま、おばあさまからそんな状態の足先を見せられたら)、すぐに病院に行ってみてもらいましょう!

※ブルートウ症候群の病院の情報はこちら

投稿者プロフィール

小倉 加奈子
小倉 加奈子
趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。