文系ウメ子ちゃんねる
文系ウメ子ちゃんねる COLUMN
2023.06.26
2023.06.26
【写真レポ】史上初!Medit Labでリアルワークショップ第1回を開催しました
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世に、大学で開催されるワークショップや講義はたくさんあります。しかし、ゲーム好きの15歳から50代のドクターまでがともに学ぶ場は、MeditLabのほかにないかもしれません。

2023年6月18日、MeditLabリアル&ウェブワーク「医学をみんなでゲームする」が開催されました。この記事ではその日のようすをダイジェストでお送りします。このワークショップは、「Medit isLand」のなかを歩くように進んでいきます。この記事で「Medit isLandのマップ」と照らしあわせていただくと、より全体感がつかめるはずです。


ようこそ、Medit isLandへ


この日、東京は最高気温31度を超える真夏日。14時ころには汗をふきふき、参加者たちが順天堂大学 本郷・お茶の水キャンパスへ集まり始めました。お茶の水駅から道案内記事を見て到着した参加者を歓迎したのがこちらの会場。

▲半円アーチのファサードが印象的なこの白亜の建物が、会場となる7号館です。このファサードは、明治39(1906)年に竣工した順天堂医院のデザインを引き継ぐ由緒正しいもの。圧倒されます。そんな入り口に、あれれ。なにやら右から2本目の柱付近にポスターがチラリ。

▲ポスターをたどっていくと、建物のなかへ。MeditLab リアル&ウェブワーク2023「医学をみんなでゲームする」というロゴ入りポスターがお出迎えです。

▲14時半のワークショップ開始をまえに、ぞくぞくと参加者が集まってきました。なにやら、受付でカラフルなグッズが手渡されていますね。マップやキカク書にくわえて…

缶バッジまで! あら、見覚えのあるイラストじゃないですか。そうなんです、LINEスタンプが缶バッジになりました! 参加者は8チームに分かれ、チームごとにバッジが配られました。
今年は「テッペキだね!チーム」「スーハーチーム」「消化中ですチーム」「おつかれさまくろふぁーじチーム」などなど。参加者のみなさんは、全4回のリアルワークで毎回異なるチームに配属される予定なので、4回参加すると、4つのバッジが参加賞としてゲットできるわけです。あなたならどれが欲しい?


おしゃべり病理医からのご挨拶


さあ、14時30分になりました。いよいよ、ワークの始まりです!
▲ナビゲーターはもちろん、MeditLab主宰・おしゃべり病理医こと小倉加奈子先生。「みなさん、ようこそMedit islandへ!」。ゲームをつくるこのワークショップ自体が、PRG仕立てになっているのです。参加者のみなさんは、Medit isLandを旅する勇者たち。

▲Medit isLandの冒険者は総勢46名。高校生25名、大学生10名、高校の先生方3名、順天堂の先生方3名、大学職員さんなど5名。MeditLabメンバーやスタッフをあわせると56名という大所帯。15歳のゲーム好きの高校生から、50代の医学博士までが一同に会して、4面のスクリーンが用意された大講義室を埋め尽くしました。

このワークショップのゴールは「ゲームをつくる」こと。ということで、まずはゲームがなんたるかを知るために「ワーマンの洞窟」なるダンジョンへ足を進めます。


みんなでゲームをしてみよう


「ワーマン」とは、TEDの創設者でもあるリチャード・ソール・ワーマン。ワーマンは『理解の秘密―マジカルインストラクション』(NTT出版)を執筆し、「世界の半分はインストラクションで成り立っている」と言い切った人物。インストラクション(説明)の威力を感じてもらうために体験したのが「ブラインドスケッチ」というゲームです。「ゲーム」いうとコンピュータ・ゲームがイメージされる方も多いと思いますが、鬼ごっこやトランプ、人生ゲームなどのアナログ・ゲームもれっきとしたゲーム。
▲「ブラインドスケッチ」のルールは簡単。自分が見た絵を、絵を見ていない相手に言葉だけで伝えるというもの。MeditLabの動画教材では、順天堂・小児外科医の山髙篤行先生や、元ラグビー日本代表・福岡堅樹さんにもトライしてもらいました。

制限時間の5分間で、このシュールレアリスムな絵を言葉で説明しないといけません。あなたなら、絵の左側にある羽つきの謎の物体をなんて紹介しますか。風車のような羽のついたタンス? 店員さんを呼ぶベルが上にのっている、茶色い立方体?

▲制限時間がすぎると、出来上がった絵と元の絵を見比べます。「思ってたのと、ぜんぜんちがう!」。ほうぼうから悲鳴や歓声が上がります。高校生のインストラクションがじつに見事だったり、順天堂スポーツ医学研究室のドクター(写真右から2番目)が素晴らしい作画崩壊を見せたりと盛り上がります。この「ブラインドスケッチ」というゲームは、うまくいくと嬉しいし、へんてこりんになるとそれがまた面白い。

▲それぞれのチームが描いた絵が集まりました。見比べてびっくり。同じ絵から、これだけ多様な作品が出来上がってしまうのです。どのチームもそれぞれ、絵のなかで注目しているところが違うんですよね。この作品群の元ネタは、大きな鯉のぼりが縦に描かれた浮世絵。でも、作品のなかには、横向きの鯉もたくさん。鯉のぼりといえば横向きというイメージが反映されているのがわかります。

▲「医学をゲームする」というワークショップで、どうして「お絵かき」するんだろう? そんな疑問に、“しんしん“こと發知詩織先生がこたえます。病理医のしんしん先生のお仕事は、手術で採取した細胞を顕微鏡で見るということ。病理医が細胞を見て、分析。その結果を担当のお医者さんに伝えます。担当のお医者さんは、直接、その細胞を見ることはないんですって。これって、なんだかブラインドスケッチに似ていますね。

ブラインドスケッチと実際の医療が似ているのは、これだけではありません。お医者さんは「カルテ」を書きます。つまり、文字だけで患者さんの様子を伝える必要があるのです。手術をしたお腹の具合はどうか、顔色はどうか、歩き方はどうかなどなど、目で見て感じた様子を言葉で書き記す必要があるのです。
さらにいえば、医療の現場は、お医者さんだけではなく、看護師さんから栄養士さん、リハビリの先生までさまざまな立場の人との連携が欠かせない。となると、言葉で患者さんの様子を伝えるというスキルがとても重要になってくる、というわけです。

「ブラインドスケッチ」というゲームを遊ぶことによって、医療現場で必要なスキルも身につけることができる。MeditLabのワークショップは、こんな感じで「遊ぶ」と「学ぶ」を往復しながら進んでいきます。

▲年齢も立場もバラバラなメンバーが協力しておこなうゲームでした。


山本貴光先生の話を聞いてみる


アタマがほぐれたところでいよいよ、核心に迫ります。そもそもゲームってなんでしょう。ゲームデザインとは何をすることなのでしょうか。レクチャーしてくださったのは、文筆家・ゲーム作家で東京工業大学リベラルアーツ研究教育院 教授の山本貴光先生。「専門学校や大学では2年〜4年かけて教える内容を、今日は30分に凝縮してお伝えします」と前置きしてレクチャーが始まりました。

▲「ゲームで遊ぶとき、私たちは何をしているんでしょう?」。不思議な問いが、会場に投げかけられました。山本さんの答えは「うまくいかないことを楽しんでいるのです」。

▲山本さんは『戦国無双』などのゲームを世に送り出したほか、『ゲームの教科書』(ちくまプリマー新書)などでゲーム開発の方法を後進に惜しみなく伝えておられます。
今回は、おしゃべり病理医がMeditLabのコラムにて、山本さんが翻訳された『ルールズ・オブ・プレイ―ゲームデザインの基礎』(ニューズゲームズオーダー社)という本に言及したところ、山本さんがTwitterでその記事に目を留めてくださり、ご協力いただくことになったのでした。会場には、20冊近い山本さんの著作や訳書、そしてMeditLabメンバーが持ち寄ったゲームたちがずらりと飾られていました。

▲「クリエイターは、メモ帳を持ち歩いています。アイデアをとどめておくために、こまめにメモを取ります」という山本さんの言葉を受けてか、参加者たちはメモを取る手が止まりません。

▲「もし、何の苦労もなしにゲームが終わっちゃったら、たとえ勝ったって面白くありませんよね」「ゲームクリエイターは、プレイヤーを邪魔しないといけません」。ゲームに必要な4つの要素を、ホワイトボードに板書しながらレクチャーは進みました。


▲高校生から大学生、そしてドクターや大学の事務職員さんまでが渾然一体となって学ぶようすを見て、山本先生は「デコボコした場のほうが面白いアイデアが生まれやすい」と太鼓判。Medit Labではさまざまな立場の人たちが意見を交わすことによって、互いの視野を広げていきます。


「システム思考」を学んでみよう


▲山本さんのレクチャーが終わると、おしゃべり病理医小倉先生にバトンタッチ。ゲームの基本構造が見えてきたところで、今度はゲームを「システム」としてとらえる見方を学んでいきます。そこで、ものごとを《要素・機能・属性》に分けてみるという方法が伝えられました。

「ブラインドスケッチ」というゲームを《要素》に分解してみたら?と問いかけられて、参加者たちはいっせいに考えます。

▲ノートに書いたり、

▲マイクを持って発表してみたりして、

▲情報をINPUTしたらすかさずOUTPUTして、ゲームを「システム」という観点から深めていきます。ここが今日のワークショップのキモ。


 興味のある「医学ネタ」を探してみよう


さ、思い切りアタマをつかったら、リフレッシュ。Medit isLandには、HPとMPを回復してもらう秘湯もあるみたい。ここまでの冒険を終えた勇者たちに、こんな不思議な「成分表」がみなさんに配られました。

▲なんでしょう、これは。人体図のまわりには、10個の問いが書かれています。「カラダの構造や機能などで気になることや知りたいことは?」「医療医学のニュースで気になったものは?」「好きな科目や苦手な科目は?」

▲このワークショップでは、参加者が「医学にまつわるゲームをつくる」のです。ということは、医学についての専門知識がないとムリなの……?!と思いきや、じつはそうではないらしいのです。病理医のしんしん先生は、医学についてのテーマは「みなさんのなかにすでにある」と参加者に話しかけます。

医学とは、「人体や病気の本態を研究し、病気の予防・治療を行い、健康を維持するための学問」。つまり、カラダにまつわること、病気に関わること、そして健康に関することすべてが「医学」の領域になるのです。

たとえば、「どうしたらもっと記憶力が良くなるんだろう?」「効果的な筋トレ法は?」「冷え性を解消するにはどうしたら」「痛くない採血の方法はないの?」「大学病院の待ち時間を短くできない?」などなど、素朴な疑問でオッケー。それが、医学への入り口になります。

▲「五臓の湯」とは、MeditLabのコンセプトを体現するキャラクターである「五臓さん」から名付けられました。古代中国医学の「十二経奇経八脈図」がMeditLab風に蘇ったのが彼です。パンフレットに五臓さんの詳しいイラストが載っていますのでご覧ください。アイデアの源泉は、みなさんのなかにある。アイデアがあふれるような源泉を掘り当てようとの願いから、このワークは「五臓の湯」と命名されたのでした。

そんなこんなであっという間に17時。初回のワークショップは、源泉探しの旅へ出るところで解散です。

 

▲MeditLab リアル&ウェブワーク「医学をみんなでゲームする」は、冒険の入り口に立ったばかり。次回のリアルワークは8月26日(土)開催となります。7月には、オンラインで体験できる「ウェブワーク」が実施されます。ワークショップ参加者でなくとも挑戦いただけます。ご興味ある方は、LINE登録のうえお待ちください。

撮影:後藤由加里


MEdit Lab 順天堂大学STEAM教育研究会
with スポーツ医学研究室 主催

「レッツMEdit Q !」リアル&ウェブワーク
-医学をみんなでゲームする!-

■リアルワークの会場
順天堂大学本郷・お茶の水キャンパス
〒113-8421 東京都文京区本郷2丁目1−1
  https://www.juntendo.ac.jp/access/

第1回2023年6月18日(日) 14時半~17時半 7号館1階 会議室(終了しました)
第2回2023年8月26日(土) 14時半~17時半 10号館1階 会議室
第3回2023年10月28日(土) 14時半~17時半 7号館1階 会議室
第4回2023年12月16日(土) 14時半~17時半 7号館13階 大会議室
※開催場所は変更になる可能性があります。参加者宛のメールをご確認のうえ、会場へお越しください。

■ウェブワークについて
Medit Labのサイト上に「お題」を掲載いたします。約2週間の回答期間中に、GoogleFormに回答を寄せてください。その回答をまとめて、後日Medit Labサイトでお返事差し上げます。ハンドルネームでの公開となりますので、気軽にご参加ください。

投稿者プロフィール

梅澤奈央
梅澤奈央
聞き上手、見立て上手、そして何より書き上手。艶があるのにキレがある文体編集力と対話力で、多くのプロジェクトで人気なライター。おしゃべり病理医に負けない“おせっかい”気質で、MEdit記者兼編集コーチに就任。あんこやりんご、窯焼きピザがあれば頑張れる。家族は、猫のふみさんとふたりの外科医。