おしゃべり病理医スタンプ図鑑
おしゃべり病理医スタンプ図鑑 COLUMN
2023.10.05
2023.10.05
スーハー!「気管支の枝ぶりがすごい」
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MEdit Labメンバーは、おそろいの名刺を持っています。裏面はそれぞれお気に入りの細胞スタンプの絵を入れているのですが、「スーハー」は、デザイナーの佐伯亮介さんの名刺に入っています♪ デザイナーに選ばれるなんて、気管支冥利に尽きます~!

▲デザイナー佐伯亮介さんのMEdit Lab名刺の裏面。他のメンバーの裏面はどんな細胞スタンプなのでしょう?お会いした時に名刺交換しましょうね!

というわけで、今回のおしゃべり病理医スタンプ図鑑では、「スーハー 気管支 bronchus」をご紹介しましょう。

◆気管支は気管から

気管支を紹介する前に、手前の「気管」についてお話します。「気管(英語では”trachea”といいます)」というのは文字通り、空気の管ということで、吸ったり吐いたりした空気が流れる場所です。前回、コトバト通信で言語聴覚士の竹岩直子さんが、「嚥下の機能」について教えてくれました。食べ物を飲み込むときは、食べ物が気管に入らないような奇跡的ともいえるメカニズムが働くのでしたね。

私たち人間は、鼻と口から息を吸い、また別のタイミングで、口から食べ物を摂ります。気管は、食べ物が通る道である「食道」と同じように、口の奥でつながっていて、手前に気管、その奥に食道の入り口があります。みなさん、自分の首を触ってみてください。ごりごりとしたカタイものが触ると思うのですが、それは「甲状軟骨」というもので、気管を守るためのかぶとみたいな形をしています。そしてそのすぐ後ろ側にまっすぐに気管が走っています。気管の前側2/3の壁は、少し押されたりしてもぺしゃんとつぶれてしまわないように、やはり軟骨で作られていて、だいぶしっかりしたつくりになっているんです。

◆気管支の枝ぶり

気管は途中から左と右の肺に空気を届けるためにふたつに分かれます。分かれるところまでは口からだいたい10㎝くらい、分岐した先がそう、「気管支”bronchus”」といいます。

この気管支の分岐の細かさが病理医としてはなんともたまらんのですよ。それで細胞スタンプに絶対入れよう!と思ったのでした。まるで生い茂った見事な枝ぶりを示す植物のようで、自分の体のなかにちょっと小さめの形の素晴らしい木が1本、逆さまに生えているかのごとく! いや、広がりの向きとその分岐の細かさは、もしかしたら「地下深くへとどこまでも広がっていく根っこ」の方がイメージとしては近いかもしれません。

▲坂井建雄・河原克雅 編『カラー図解 人体の正常構造と機能』[全10巻縮刷版] 改定第4版 日本医事新報社 p.15 より引用

どのくらい細かいのか、なんとか説明していきます。気管は、左右の気管支に分かれると、さらにどんどん細かく分かれていきます。それぞれの部位と細さと構造に応じて、「区域気管支・細気管支・終末気管支・呼吸気管支・肺胞道・肺胞」と名前がついています。終点の「肺胞」は、袋のような形で終わっていて、そこで酸素と二酸化炭素のガス交換、つまり本当の意味での「呼吸」が行われているのです。

気管のところで直径10㎝だった管は、23回もの分岐を終え、肺胞に到達すると、直径250μmほど、1㎜の1/4の大きさになります。肺胞の数は左右で3~5臆個といわれています。肺胞はちょっと葉っぱのようにも見えます。息を吸うといっせいに無数の葉っぱが広がっていき、息を吐くとそれらが一斉にしぼんでいく。呼吸によって伸び縮みする小さなわたしの木…。「ミクロの世界って圧巻だなぁ」と、ガラススライド上にその一瞬を切り取られた肺の組織を観察しながら、その動きを想像してはため息をもらすおしゃべり病理医です。

▲顕微鏡で観察した気管支と肺胞。「動いている様子を一度見てみたいなぁ」と思います。

 

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投稿者プロフィール

小倉 加奈子
小倉 加奈子
趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。