実りの秋、食欲の秋を過ごし、いよいよクリスマスシーズンに突入ですね。美味しいご飯を食べる機会が多くなる季節、みなさんのお腹のなかでは「小腸」が大活躍です。
小腸がないと人間は生きていくことができません。食べたものを吸収する働きを一手に担っているのが小腸だからです。そんな小腸の構造ってどうなっているのでしょう?
◆小腸のひみつ
おしゃべり病理医は小学生の頃、学研のひみつシリーズ『からだのひみつ』が大好きで、内臓の絵を描いて楽しむ変な子でした(その頃から絵の対象が内臓っていうのも…)。「小腸のひだひだを広げるとテニスコート一面分くらいになるよ」と書いてあるのを読んで、人間のからだってなんてすごいんだろう!と鼻息を荒くして興奮したこともよく覚えています。
井上大助・著、吉田義幸・監修『からだのひみつ』学研プラス
そうなのです。みなさんが食べたり飲んだりしたものから無駄のないようしっかり栄養を吸収できるように小腸の構造は極めてよくできています。小腸は、胃につながった消化管ですが、十二指腸、空腸、回腸と3つのパーツに分かれています。お腹の中では、腸間膜に吊り下げられ、からまらないようにうまくおさまっています(からまってしまうと「腸重積」という病気になります)。イメージ的には、フレアースカートの先の部分に小腸がくっついている感じでしょうか。さらに小腸の壁は筋肉でできており、食べ物が入ってくるときゅっきゅと収縮し、おしりの方に運んでいきます(「蠕動運動」とよびます)。食べ物が入っていないときも、ちょっとだけ筋肉が収縮していて(腸管が伸びきらないようにきゅっとしているのです)、お腹の中ではだいたい3メートルくらいの長さになっていますが、むにゅ~っと引き延ばしてみると、その倍以上の長さになります。
◆小腸の“ひだひだ”
さて、広げるとテニスコート一面分になる“ひだひだ”というのは何でしょうか。それが今回のおしゃべり病理医スタンプ図鑑のイラストに書かれています。小腸の内側には吸収するための粘膜が覆っているのですが、この粘膜はなんと大中小の3つのレベルで「ひだひだしている」のです。まず大きなレベルのひだひだを「輪状ひだ」といい、肉眼でもみえるひだひだ構造があります。さらにここから顕微鏡レベルになりますが、だいたい1㎜くらいの長さの中くらいの「絨毛」と呼ばれるひだひだがあります。さらにそのひとつひとつのひだひだには無数の細胞がみられるのですが、その細胞の表面に1マイクロメートル(1㎜の1000分の1です)の「微絨毛」があるのです。こうすることによって、小腸の表側の面積に比べて、内側の食べ物を吸収する部分の面積は、なんと600倍にもなるのです!
▲LINEスタンプ用のイラストよりもうちょっと細かく描いてみました。「微絨毛」は絨毛の表面に細かな刷子(ブラシ)たあるようにみえるため「刷子縁(さっしえん)」とも呼ばれています。絨毛の先端の方にまで、ミクロの毛細血管やリンパ管が張り巡らされていて、栄養をいつでも吸収して運ぶ万全の体制が整っています。
ちなみに微絨毛を持つ細胞たちは、24時間で新しく生まれ変わるようになっており、つねに万全の状態で栄養を吸収できるようにしています。
たまにはご飯を食べながら、小腸の細胞たちを「がんばってるね~!」とねぎらってあげましょう(笑)。お腹を冷やすと細胞たちの動きが悪くなります。消化酵素の分泌も悪くなりますし、免疫担当細胞たちも温かくないと思いっきり動けません。お腹を温める栄養たっぷりの食事を摂って、コロナやインフルエンザに負けないよう年末を迎えましょうね!
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投稿者プロフィール
- 趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。
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