血液型には、オモテとウラがあるんです。いったいどういうことでしょうか。
◆血液型のオモテとウラ
血液型検査とは、患者さんの血液の型を調べる検査ですが、オモテ試験とウラ試験というのがあるのです。
血液は、「血球」と呼ばれる細胞と、「血漿」と呼ばれる液体成分で構成されています。オモテ試験というのは、赤血球に存在する抗原を調べる検査、ウラ試験というのは、血漿中の抗体を調べる検査を意味します。血液型は、オモテ試験とウラ試験の両方を行い、その結果に矛盾がないことを確認して(これを、業界的には「オモテとウラが一致する」といいます)はじめて決まります。
抗原と抗体は一対のパズルのようなもので、凹凸がはまるとお互いにくっつき合って集まっていきます。この集まっていく反応を“凝集する”と表現します。オモテウラ試験では、凝集するかどうかを臨床検査技師が目で見て判定しています。
▲各血液型のオモテ・ウラ検査の一覧表(西岡夢実・作)
頭がこんがらがると思うので少し説明します。オモテ試験は、血球を調べますので、それに反応する抗Aまたは抗B血清という試薬を使います。例えば抗A血清を加えたときに、血球が固まれば(凝集すれば)、その血液は「A型」を意味します。一方、ウラ試験では、液体成分の血漿の方を調べますので、用意する試薬はもともとA型やB型とわかっている血球を用います。A型の患者さんの血漿には、A型の血球を固める抗体は含まれていませんから、凝集が見られません。
つまり、オモテ試験とウラ試験では凝集の結果が逆になります。自分の血液の中の血球と血漿がたがいにくっつきあい固まってしまったら体のあちこちに血のかたまりができてしまいますよね。理屈を考えると、必ずオモテ試験とウラ試験の結果は逆になるのです。
図のように、オモテとウラの試験の結果を組み合わせて、血液型が決まります。
◆オモテとウラの試験の結果が合わなかったらどうするの?
高齢者や特定の疾患をもつ患者さんは凝集が弱いことがあるので、カルテや検査データを見直し、原因を探ります。オモテ試験とウラ試験の結果が不一致の場合、検査の手順や患者間違いの可能性もあるため、原因をしっかりと突き止めることがとても重要なのです。
間違った血液型の血液を輸血すると、血管内で血液中の赤血球が壊れてしまい、命の危険に直結してしまいます。目で見て判定するとはいえ、安全な輸血のために検査の結果は確実正確でなくてはいけないのです。
◆C型? ゼロ型?
ところで、血液型というとA、B、O、AB型ですが、なぜA、B、C、AB型ではないのかと不思議に思ったことはありませんか?
実は、血液型が発見された100年以上前はなんとA、B、C型だったのです! 赤血球の表面に抗原が二種類あると分かり、A抗原とB抗原と区別されたのがそのままA型、B型となりました。同時にA、Bどちらも持っていないC型で血液型が決まり、その約1年後には両方持っている、AB型が発見されました。
では、なぜCからOになったのか…察している方も多いと思いますが、「どちらの抗原も持たないならCではなく0(ゼロ)でいいじゃないか!」と言うことで、最初は0型に変更されました。しかし0(ゼロ)とO(オー)が文字で書くとよく似ているせいで、人から人へ伝わっていくうちにいつの間にかO型に変わり、定着してしまったというわけです。なんだか力が抜ける決まり方ですね(笑)
●参考資料●
血液型検査や輸血検査に興味を持った方はこちらがおススメです
投稿者プロフィール
- 看護師の姉を追うように医療の世界へ。臨床検査技師国家試験合格後に、緊急検査士、細胞検査士と、専門を極めていくド根性ぶりとふわっとした雰囲気がギャップ萌え。好きなことは映画鑑賞とガチャガチャ。
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