入院したときに病院で提供されるお食事「入院食」にはどんなイメージがありますか?お正月コラムでは、元日のメニューをご紹介しましたが、今回は普段のお食事についてお話します!
★栄養もお金もキッチリ!
入院食の大きな特徴は、厚生労働省からの決まりごとが多いことです。
まず、予算は1食あたり640円と決められています。そのうち患者さんが払うのは460円で、この25年で200円以上高くなっています。しかし、これは医療保険から患者さんへのサポートが減っただけで、1日の予算である1920円はこの25年間、1円もあがっていません。人件費や光熱費、材料費が高くなっている中で、今後予算をどうしていくかは厚生労働省でも審議がされていますが、今は病院がやりくりを工夫している状況です。
その一方で、栄養バランスに関しては、「日本人の食事接種基準」を満たすことが求められます。例えば「病院食は味がうすい」と言う方がいますが、それは使える塩分に制限があるからです。栄養基準は5年ごとに改訂されますが、今は1日あたり7.5gが目安です。1食2.5gというのがどれだけ少ないか…。この頃は外食のメニューやレトルト食品のパッケージには塩分が表示されていますので、ぜひ普段のお食事の塩分量と比べてみてください!
他にも食事の温度や提供時間についても決まりがあります。細かいようですが、どこの病院に入院しても患者さんが安心して過ごせるようになっています。
★1食200種類!?
もうひとつの特徴は、1つのメニューでは足りないことです。病院には生まれたばかりの赤ちゃんから、100歳をこえるご高齢の方まで老若男女が療養しています。離乳食が必要なお子さんもいますし、飲み込む力が弱い方、消化管の手術をした方など、普通のお食事では十分に食べられなかったり、喉に詰まらせてしまう方もいます。さらに、治療中の病気によっては、塩分やカリウム、タンパク質などの栄養素を減らした特別なメニューが必要になります。
入院する全ての方に、身体に合ったごはんをお出しするために、練馬病院では1食につき、なんと200種類ほどのパターンをご用意しているんですよ!
★食事のプロ「管理栄養士」
入院食の種類を決めるのも、治療の司令塔である医師です。しかし、200パターンの中から最適なものがどれかを悩む場面はしばしばあります。さらに、患者さんの状態によっては、その方のためだけのメニューを用意しなければいけないこともあります。そんな時に頼れるのが栄養管理のプロフェッショナルである管理栄養士です。管理栄養士は、医師から共有してもらった患者さんの病気、飲み込む力、栄養状態などの情報をもとに、メニューを提案します。時には看護師やリハビリテーションスタッフもいれたチーム全体で検討することもあります。
法律で決められた要件、患者さんの体調と、入院食にはたくさんの制約があります。でも、お食事はただ栄養をとる手段というだけでなく、日々の楽しみという側面も大きいですよね。前回紹介した行事食はもちろん、普段の食事も味だけでなく、彩りや盛り付けを工夫しています。入院食を統括する管理栄養士は、3食の食事を通して、患者さんの身体心をサポートするために欠かせない存在です。
管理栄養士は入院食の統括のほか、患者さんのお家での食事内容の指導も行っています。管理栄養士の仕事に関しては、下記リンクもご参照ください。
・順天堂大学医学部附属練馬病院 栄養科
・日本栄養士会