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COLUMN
2024.04.01
2024.04.01
平安から令和まで!空気の中をただよう「はしか」
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37日(木曜日)東海道新幹線 のぞみ24号 6号車 新大阪駅から品川駅(1345分発⇒1608分着)に乗った方で、発熱などがあった場合には、必ず事前に病院に連絡してください。」

先月東京都からこんなお知らせがでました。新型コロナウイルス感染症のお話ではありません。麻疹、いわゆる「はしか」に関するニュースです。

◆はしかとは?

麻疹(はしか)は、最初に発熱・咳・鼻水などが現れ、一度熱が下がったあと、もう一度熱が上がるとともに全身に発疹がでるのが特徴的な感染症です。特効薬がないため、先進国でも1000人に1人が亡くなる可能性があります。世界で見ると、2015年の5歳以下の小児の死亡数では、麻疹による死亡が1.2%を占めると報告されました。

はしかといわれることが多いこの病気ですが、医学的な正式名称は麻疹です。医学部生のとき、感染症の勉強では正式名称と別名をセットで覚えるのが辛かったです。風疹と三日ばしか、流行性耳下腺炎とおたふくかぜ、伝染性紅斑とりんご病などなど、別名をもつ感染症が多くあります。

「麻疹」は中国由来の言葉で、発疹の形や色が麻の実に似ていることからきています。一方で、「はしか」は喉や皮膚がチクチクすることが麦の穂先でこすったような感じに似ていることから、稲穂先端の突起の芒(のぎ、はしか)やそこからきた「かゆい」の意味の方言「はしかい」が由来という説があります。同じ病気なのに、国によって例えが違うのが面白いですね。(それが医学生を苦しめるのですが!)

◆特殊能力「空気感染」

麻疹では、人から人への移り方に注意が必要です!

麻疹にかかった方が咳やくしゃみをすると、空気中にウイルスが浮遊し、それを別の方が吸い込むことでうつります。そう聞くと、新型コロナウイルスやインフルエンザと一緒に思えるかもしれません。しかし、麻疹では広がる範囲に大きな違いがあります。

多くのウイルスや細菌は水分と一緒に空気中に出るため、サイズが大きく、咳や会話でとんでも数メートルで地面に落下してしまいます。この感染経路を「飛沫感染」といいます。一方で、麻疹ウイルスはすごく小さな粒子で空気中に存在することができるため、なかなか地面に落下せず、遠く、長く空気中に存在します。さらに、小さな粒子であることから、普通のマスクでは防げません。そのため、冒頭の東京都からのお知らせのように、麻疹の方のすぐ近くにいなかったとしても、同じ飛行機や電車、レストランにいただけで、感染のリスクがあるのです。このような感染経路を「空気感染」といい、空気感染する感染症は結核・麻疹・水痘(水疱瘡)の 3つだけといわれます。

◆唯一の予防法

日本での最初の麻疹の流行は平安時代とされ、歴史上の人物では徳川綱吉も麻疹で亡くなったといわれます。麻疹は空気感染する上、感染力が高いです。「免疫を持たない人の集団で1人の患者から平均何人に二次感染するか」で表す基本再生数が、季節性のインフルエンザは1.3~1.8人のところ、麻疹では12~18人といわれます。免疫がない方ではほぼ100%発症しますので、日本でも歴史的に猛威をふるってきました。

一方、中高生のみなさんで、麻疹で友達が休んだ!という方はほとんどいないと思います。日本においては、2007年~2008年には流行がありましたが、それ以降感染者は大きく減り、今は海外からの輸入例のみという状況だからです。

新型コロナウイルス感染者の流行の時には、みんなでマスクをしました。では、普通のマスクで防げない麻疹をどうやって減らしたか、それは唯一の予防法であるワクチンの普及です!

日本では2006年より2回接種が勧められ、感染者が減りました。年齢によっては1回のみの接種、あるいは接種したことがない可能性があります。私自身幼少期には1回しか打っていなかったため、医学部入学後に追加で接種しました。予防接種をいつ打ったかは母子手帳で確認できます。ぜひこの機会に自分の記録を確認してみてくださいね。

 

ー参考文献・webサイトー

・加藤 茂孝. 人類と感染症との闘い 「得体の知れないものへの怯え」から「知れて安心」へ(第7回)「麻疹(はしか)」天然痘と並ぶ2大感染症だった. Modern Media. 2010.07;56(7):159-171.

厚生労働省 麻しんについて

国立感染症研究所 麻疹

東京都感染症情報センター 麻疹の流行状況

 

投稿者プロフィール

發知 詩織
發知 詩織
全方位に目があるんじゃないかという細やかな気配りのできる逸材。寛大で誠実、緻密な仕事ができるのに人に優しい。病理医とSTEAM教育研究者の二足の草鞋を履くお母さん。愛くるしいパンダに似ているのであだ名は「しんしん」。