重要なことを意味する、「肝腎(かんじん)」。
「肝腎要(かんじんかなめ)」と書けば、二つの言葉が重なり、さらに「ものすっごく重要!」と、意味が強調されます。
肝腎は、文字通りに、内臓の肝と腎のことです。「肝心」と書く場合もありますが、いずれにしても、生きていくのに不可欠な肝臓と腎臓、あるいは心臓という五臓六腑の三臓をつかった熟語になります。
さて、どのくらい重要なのでしょうか。どの臓器も生きていくのに不可欠な機能を有していますが、特に五臓に分類された内臓は、特に重要です。西洋医学的な観点でいうと、脾臓以外の臓器を失った状態では、生きていくことはできません。
◆肝腎ってどのくらい重要なの?
「不全」という医学用語は、“著しい機能低下”を意味し、「心不全」「肝不全」「腎不全」という言葉があるように、直接的な死因になります。不思議と「肺不全」とは言わず(どうしてそう呼ばないのか、調べてもわかりませんでしたので、どなたか分かった方はMEdit Labに連絡ください!)、「呼吸不全」といいます。脾臓だけは、仮に摘出してしまっても、感染症にかかりやすいなどの合併症が残るものの、特にそれで死んでしまうようなことはありません。現に、進行した胃がんや膵臓がんの手術では、脾臓が一緒に摘出されることも少なくありません。
心臓や肺は、たしかに動きが止まってしまったら死んじゃうだろうなとイメージしやすいと思いますが、肝臓と腎臓はいったいどういう役目を担っているのでしょうか。
肝臓は特にマルチな機能を持っており、たくさんの役割がありますが、特に腎臓の役割と重なる点は、「解毒」です。体内に蓄積していく老廃物を処理する能力が肝臓と腎臓にはあるのです。老廃物は、消化管から便として排出される経路と、腎臓を通って尿として排出される経路があります。また、体内で溜まった二酸化炭素は、肺から呼気(吐く息)として排出されます。
◆肝腎な肝腎症候群
肝臓と腎臓は特に解毒をはじめとしたさまざまな機能を連携して行っているため、時に肝臓の機能が落ちると腎臓の機能にも影響を与える場合があります。これを「肝腎症候群」と呼びます。かなり専門的な内容になりますが、慢性的に肝臓に炎症があると、次第に肝臓が硬くなり、「肝硬変」という状態になります。
肝硬変になると、肝機能がかなり低下し、タンパク質をうまく産生できなくなったり、硬くなった肝臓を通る静脈の圧が高くなったりすることによって、全身を巡る血流に異常をきたします。特にその影響が腎臓に顕著に出た状況が肝腎症候群で、腎臓の血管が痙攣して細くなり、腎臓を流れる血流が減少してしまうことによっておきます。
腎臓を流れる血液は、尿のもとになりますので、尿が出ない状態になり、老廃物をいつまでたっても体外に出すことができなくなります。肝臓と腎臓の両方が足を引っ張り合う形になりますので、かなり深刻な病態なのです。
肝腎が元気なことがカラダにとっては何よりも肝腎、なんですね~。
参考URL:肝硬変 | 肝炎情報センター (ncgm.go.jp)
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投稿者プロフィール
- 趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。
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