コトバト通信 COLUMN
こんにちは、言語聴覚士の竹岩直子です。先日のワークショップは盛況だったようですね! どんな医学ボードゲームができるか楽しみです。
医学のテーマは、まだまだ身近なところにもたくさんありますよ。
本日は、私たちの口の中を潤す唾液(だえき)についてのお話です。
◆唾液の量
唾液は、耳下腺、顎下腺、舌下腺という3つの大きな唾液腺といくつかの小唾液腺で作られ、健康な成人で一日におよそ1.5L分泌しているといわれます。毎日大きなペットボトルに近い量をだしていると考えると、結構な量ですよね。
ほかの動物はどうでしょうか。たとえば、唾液をたくさんだす動物に牛がいます。
牛は一日にどのくらい唾液をだすと思いますか?5L?10L?いえいえ、なんと90~180Lだそう!200L近くといえば、私たちが入るお風呂一回分ほどの量にもなります。
この唾液量の理由は、牛が「反芻(はんすう)」をおこなうからだそうです。反芻とは、飲み下した食物を胃で部分的に消化し、ふたたびそれを口に戻して咀嚼し、また胃に送る、という工程を繰り返す食事方法のことです。
牛の一日の反芻時間は6~10時間にも及び、大量に分泌された唾液は、餌を湿らせ食べやすくしたり、胃の中の微生物の働きを活発にして消化を助ける役目をします。
このように、唾液にはさまざまな役割があるのです。
◆唾液のはたらき
では、私たちの唾液はどんな働きをしているでしょうか。
主だった機能に以下のイラストのようなものがあります。みなさんはいくつ知っていたでしょうか?
参照:「高齢者のドライマウス 口腔乾燥症・口腔ケアの基礎知識」阪井丘芳著 医歯薬出版 chapter1 基礎知識の再確認 p.13 図5「口腔内における唾液の役割」
そのほか、咀嚼した食べ物を粘性のある唾液がまとめてくれたり、唾液という水分があることで味蕾細胞が味を感じやすくなったりと、食事でも唾液は大活躍してくれています。
唾液の量は常に一定ではなく、加齢やストレス、薬の副作用などによっても減ってしまいます。唾液が減少し口が乾燥し続けると、虫歯や口臭、消化不良、味覚障害、喋りづらさなど、さまざまな問題が起こってしまいます。
唾液は、ささやかな存在に見えて、実は私たちの体や暮らしを支える影のスーパーヒーローだったのです。
◆欠かせない口腔ケア
そんな頼れる唾液ですが、その出処の口の中が汚れていては、実力を発揮できません。
歯磨きをせず汚れた口腔内は菌の温床となり、虫歯や口臭、さらには感染症も引き起こします。また、汚れた唾液を誤って飲み込み気管に入ってしまうと、誤嚥性肺炎などの呼吸器の病気のリスクも高まります。
そのため、日々の口腔ケアがとても重要となるのです。
今年初めに起きた能登震災は記憶にも新しいですが、こうした災害時にも口腔ケアは重要となります。災害時の水不足が、歯磨きやうがいにも影響を及ぼすためです。
厚生労働省のHPには、災害時の口腔ケアをまとめたページがあります。
災害時のお口(くち)のお手入れについて (mhlw.go.jp)
こうした知識は防災や予防医学として、とても大切です。自身や大切な人の命を守るため、ぜひ家族やお友達にも教えてあげてくださいね。
さて、本日は唾液の秘めたる力と、それにまつわる口腔ケアのお話をしました。汚れた口や唾液は万病をもたらすといっても過言ではありません。まさに、「口は災いの元」。
食後は歯磨きやケアをしっかりおこなって、スーパーヒーローな唾液を大活躍させてくださいね!
それではまた次回、お会いしましょう。
投稿者プロフィール
- 絵本作家に憧れていたという少女は、若干、変化球的に進路を選択して「言語聴覚士」に。コトバのセンスがバツグンのマイペース大阪人で趣味は刺繍と空想。おしゃべり病理医おぐらとは「イシス編集学校」の仲間。
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