診療すごろく COLUMN
医師国家試験に合格すると、医師免許をもらうことができます。では、免許を手にした日から患者さんを診ていいかというと、実は答えはNOなのです。前回のコラムでご紹介した「医師法」がここでも登場します。患者さんを診るためには「臨床研修を受けなければならない」と書かれています。この臨床研修中の医師がいわゆる「研修医」と呼ばれます。『ブラックジャックによろしく』や『祈りのカルテ』など研修医を主役にした物語もあるので、耳にされたことがある方も多いのではないでしょうか。
車の運転に例えると、研修医は若葉マーク付きの運転手にあたるかと思います。教習所でアクセルやブレーキの踏み方や道路標識について学び、運転免許をとれば法律的には一人で運転をすることができます。しかし、免許をとったばかりの時には知らない道を走ることや駐車には不安があり、自由自在に乗りこなすまでには免許をとった後にもたくさんの練習が必要です。
医学部では人の身体の仕組み、病気の種類や成り立ち、検査や治療に関しての知識を学びます。でも、知識だけでは患者さんを診ることは難しいのが現実です。患者さんの症状をどのように聞くか、何を考えてどんな検査を行うか、どの治療法を選択するかなどなど、大学で学んだ基礎知識という骨組みに、現場での考え方や行動を肉付けしていきます。例えば、入院している患者さんが眠れなくて困っている、転んで骨が折れているかもしれないと子供が外来にきた、胸が痛いと救急車できた…そんな時にどうするべきか。ベテラン医師の指導のもと実際に入院患者さんを担当し、救急外来の患者さんを診察することで、実践的に学んでいきます。
2年間の臨床研修で基礎力を身につけたあとには、領域を絞って深く知識や技術を磨いていきます。一方で、研修医の間はあえて領域を固定せず、色々な専門をもった指導医のもとを月ごとにローテーションして学びます。内科と外科の医師では、指導する側の得意な分野や教え方が違うので、多方向から学ぶことができる仕組みになっています。私の働く病院にも60人以上の研修医がいますので、私たちのところにも月替わりで研修医の先生がやってきます。私たちは手術のやり方は説明できませんが、顕微鏡での病気の見方は院内で一番わかりやすく説明できると自負しています。
医師としての礎をつくる臨床研修をどこで、どのように過ごすのか?は、医学部6年生の大きな悩みの1つです。次回はその就職活動、通称「マッチング」についてお話しします!
投稿者プロフィール
- 全方位に目があるんじゃないかという細やかな気配りのできる逸材。寛大で誠実、緻密な仕事ができるのに人に優しい。病理医とSTEAM教育研究者の二足の草鞋を履くお母さん。愛くるしいパンダに似ているのであだ名は「しんしん」。
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