おでかけしんしん
診療すごろく COLUMN
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2025.03.06
2025.03.06
医師国家試験ってどんな試験?
日本では2月・3月にたくさんの入学試験が行われますね。
そして、医療関連の国家試験の多くも2月に開催されます。今年は看護師国家試験が2月16日に、薬剤師国家資格が2月22日・23日に、そして医師国家試験は2月8日・9日に開催され、今月結果が発表されます。
★進化する医師国家試験
医師国家試験は2日間にわたり行われます。9:30から18:30まで、2日間あわせて13時間をこえる長丁場のテストです。テスト形式はマークシート方式ですが、出題される問題はなんと400問です!
今年119回が開催された医師国家試験ですが、その形式は時代により大きく変わっています。1984年までは年に2回開催されていましたし、2004年までは3月に試験が行われたため、おしゃべり病理医が受験した時代は4月1日から働くことができなかったようです(「あら~、年がばれちゃう~」by. おしゃべり病理医)。
私、しんしんは2017年に受験しましたが、私たちの年までは3日間かけて500問が出題されました。3日間にわたる試験は初めての経験で、初日の夜は「今日の出来は悪くなかったけども、まだ1/3だからなんとも言えないな…」と複雑な気持ちだったことを覚えています。
今の試験は単純に問題数が100問減ったからといって楽になったわけではなく、その分「臨床的な応用力」を問われる問題を増やすという狙いがあるようです。形式に囚われるのではなく、よりよい形を目指し試行錯誤 が続けられています。
★とにかく範囲が広い!
医師国家試験ではどんな問題が出題されるのか?
厚生労働省のホームページには医師国家試験出題基準が細かく載っています。ブループリントといわれる医師国家試験設計表が公開され、そこにはどんな分野からどの程度出題するかまで決められています。小項目までみると、病気の名前まで掲載され100ページを超えますので、今回は大項目だけみてみましょう。
【医学総論】
保健医療論 (約13%)
予防と健康管理・増進 (約17%)
人体の正常構造と機能 (約9%)
生殖、発生、成長、発達、加齢 (約9%)
病因、病態生理 (約12%)
症候 (約12%)
診察 (約7%)
検査 (約9%)
治療 (約13%)【医学各論】
先天異常、周産期の異常、成長・発達の異常約 (約5%)
精神・心身医学的疾患 (約5%)
皮膚・頭頸部疾患 (約11%)
呼吸器・胸壁・縦隔疾患 (約7%)
心臓・脈管疾患 (約10%)
消化器・腹壁・腹膜疾患 (約13%)
血液・造血器疾患 (約5%)
腎・泌尿器・生殖器疾患 (約12%)
神経・運動器疾患 (約9%)
内分泌・代謝・栄養・乳腺疾患 (約8%)
アレルギー性疾患、膠原病、免疫病 (約5%)
感染性疾患 (約8%)
生活環境因子・職業性因子による疾患 (約5%)
漢字ばかりでわかりにくいですが、【医学総論】では正常の身体の知識はもちろんのこと、「保険医療論」の中では法律や社会の仕組みに関しても問われます。そして、【医学各論】では全身から万遍なく疾患や検査、治療に関して出題されます。
医師国家試験は問題と解答がすべて公開されていますので、過去問演出をしながら、大学6年間の講義や病院実習で学んだことを総復習して試験に臨みます。医師国家試験の過去問はどなたでも見ることができますので、興味がある方はぜひトライしてみてください!
★恐怖!!禁忌肢問題
医師国家試験の合格基準は大きく3つあります。
ひとつは、全体の出来。全400問のうち、300問に関しては相対評価で、毎年合格基準が変わります。そのため、「私が難しい問題はみんなも難しいはず!」と心を強くもつようにしていました。
もうひとつは、必修問題の出来。残りの100問は「必修問題」といわれており、これが大変。必ず80%をとる必要があります。もちろん自信のない問題もありますので、試験を受けている時からドキドキしていました。
そして、最後のひとつが「禁忌肢」の選択数です。間違いの選択肢のうち、患者さんの死亡や不可逆的な臓器の機能廃絶につながる選択肢が出題されます。もう少し簡単にいうと、それを選んだら患者さんが死んでしまったり大きな後遺症を残してしまうかもという選択肢が含まれているんです。それをもし、複数、選んでしまった場合、どんなに点数が良かったとしても不合格になります。どの選択肢が禁忌肢であったかは公開されていません。過去問演習の時には間違いの選択肢についても勉強するように気をつけていました。本番は500問もあり、全ての選択肢を覚えていられないので、結果発表まで、まずい選択をしていないかと不安でした。
今年の医師国家試験は、いよいよ来週合格発表が行われます! 6年間、医学生を指導してきた教授陣もドキドキの瞬間ですが、新しいドクターの誕生がとても楽しみです。
追伸)順天堂大学医学部の医師国家試験合格率は、過去20年で全国第2位を誇ります。さらに、留年率の低さもトップクラス! 国家試験に落ちてしまいそうな医学部6年生を卒業させずに留年させることで国家試験の合格率を高く保つということをせず、6年間ストレートで医師に育てあげるという順天堂の医学教育は、定評があります!
参考URL:令和6年版医師国家試験出題基準 mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000128981_00001.html
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投稿者プロフィール

- 全方位に目があるんじゃないかという細やかな気配りのできる逸材。寛大で誠実、緻密な仕事ができるのに人に優しい。病理医とSTEAM教育研究者の二足の草鞋を履くお母さん。愛くるしいパンダに似ているのであだ名は「しんしん」。
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