ふしぎな医学単語帳
COLUMN
2022.11.09
2022.11.09
タンパク質の便秘「アミロイドーシス」
先月、元人気プロレスラーで政治家のアントニオ猪木さんがアミロイドーシスで亡くなりました。アミロイドーシスという病気、聞いたことがないひとも多いと思いますが、最近、増えている病気です。
アミロイドーシスとは、ナイロンに性状が似た異常なタンパク質が臓器のあちこちに沈着して、その臓器の正常な機能をおびやかす病気の総称です。“タンパク質の便秘”といった感じでしょうか。
異常なタンパク質は、現在では、31種類あることがわかっていて、沈着する臓器によって、症状も異なります。アミロイドーシスの「シス」は英語で「-osis」と綴りますが、「~症、~状態」といった意味が含まれる接尾語です。シスで終わる病名が他にも色々あります。
アントニオ猪木さんのアミロイドーシスは、「ATTRwtアミロイドーシス」といって、高齢者で多いタイプのもので、特に心臓に異常なタンパク質が沈着して、心臓の動きを妨げ、心不全を起こします。
みなさんは、アルツハイマー病という、認知症の原因となる病気を聞いたことがあると思いますが、この病気も脳に「老人斑」と呼ばれる異常なタンパク質が沈着することが原因ですし、脳出血の原因となるものには脳の血管壁に異常タンパク質が沈着し、血管壁が弱くなる「アミロイドアンギオパチー」という病気もあります。(ちなみに「パチー」は「-pathy」と綴りますが、この接尾語も、~病、~症など“苦痛”を意味するもので、色々な病名に使われています。特に神経系の病気で多いかも)
アミロイドーシスは、意外にも身近な病気なんですよ。脂肪だろうとタンパク質だろうと糖だろうと二酸化炭素だろうと便だろうと、どんな物質であっても身体の中に溜まりすぎると良くないんですね~。
投稿者プロフィール
- 趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。
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