ほっちの救急箱 COLUMN
サーファーのYくんはある夏の日以降、納豆が苦手になりました。なぜでしょう?
■増加中の病気、「アレルギー」
医学が発展した現代においても、着実に増えている病気の1つがアレルギーです。「私はアレルギーなんかないわ」という人であっても、身近には花粉症の方がいると思います。
身体には防御機構として「免疫」が存在していて、身体の中に本来はないはずの異物が入ってくると「免疫」がこれを排除しようとします。「免疫」が適当に働いているうちは問題ないのですが、過剰に働きすぎてしまうことで逆に身体に悪さをしてしまうことがあり、この現象のうちの1つをわれわれはアレルギーと呼んでいます。
みなさんがアレルギーと聞いてイメージするものはなんでしょう。卵などへの食物アレルギーや、喘息やアトピー、アナフィラキシーといった単語を思い出す方もおられるかもしれません。例えば食物アレルギーでは、原因となる食物に対しての免疫が働きすぎてしまうことによって、症状が起きます。
■納豆とクラゲ?
さて、サーファーのYくんは、なぜ納豆が苦手になってしまったか。きっかけはサーフィン中にクラゲに刺されたことでした。クラゲの触手には「刺胞」という毒があり、人間の肌に触れると毒針が発射される仕組みになっていますが、その際に「ポリガンマグルタミン酸」という物質が毒とともに体内に注入されてしまいます。ポリガンマグルタミン酸は異物であるため、「免疫」によって排除されますが、われわれの「免疫」は賢く、一度遭遇した異物を記憶することができます。
実はこのポリガンマグルタミン酸、偶然にも納豆のねばねば成分でもあります。そのため、クラゲに刺されたサーファーが納豆を食べてしまうと、なんと記憶されていた「免疫」が働いてしまい、アレルギー反応が起こってしまうのです。
このように、偶然、似た成分によってアレルギーが引き起こされる現象を「交差反応」といいます。ほかにも、マダニに刺された後の赤肉アレルギー(赤肉とは、牛肉や豚肉など哺乳類の肉をいいます)、医療従事者の手袋などに使用されるラテックスとバナナやキウイなどの果物アレルギーなどがあげられます。
サーファーのみなさん、くれぐれもクラゲに刺されないよう気をつけて波乗りを楽しんでください!
■参考図書■
河本 宏 (著), しおざき 忍 (イラスト), ビーコムプラス (その他)『マンガでわかる免疫学』オーム社
萩原 清文 (著), 山本 一彦 (監修)『好きになる免疫学』第二版 講談社
投稿者プロフィール
- 分析力と論理的思考力に優れる頭脳派救急医。しんしんの同級生で夫である。リーダーシップがある兄貴気質で研修医時代は「レジ代表」を務めみんなをまとめた(しんしんという内助の功があったのはたしか)。
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