診療すごろく COLUMN
◆うんちの色判定グッズ
「最近のうんちの色は何番ですか?」「うーん、4番ですかね」
わたしにはふたりの子どもがいます。赤ちゃんのころ病院で看護師さんと何度か交わしたのがこの会話。初めて聞くといったい何のことか驚きますよね。
今の母子健康手帳の中には必ず「便色カード」がついています。カードには1番〜7番までの「うんちの色見本」が印刷されていて、生後5か月までの赤ちゃんのうんちとカードを見比べ、何番に近いかを記録しておくのです。
▲「便色カード」の見本(川越市ホームページより引用)
「便色カード」は紙の種類やインクをどのような割合で混ぜるかまでが、法律によって細かく定められています。色がきれいに印刷できるように、紙は写真集や雑誌の表紙などに使われるアート紙が推奨されています。そのため、母子健康手帳の中で1ページだけぐっと紙質が良いページがこの「便色カード」です。
それにしても、なぜそこまでうんちの色を気にするのでしょう。
◆便の色のもとはなにか?
そもそもうんちの色は何の色でしょうか。私たちは毎日色々なものを食べます。白いごはん、カラフルなフルーツ、緑黄色野菜など色彩豊かなものを食べても、うんちはおおむね茶色っぽいと思います。この茶色は食べたものに由来するのではなく、食べ物を消化する消化液によるものなのです。
具体的には、肝臓でつくられる胆汁(たんじゅう)という消化液です。口から入った食べ物は、胃や大腸など消化管で消化・吸収されて、最後は便としてでてきます。胆汁は小腸の入口である十二指腸で食べ物に合流し、脂肪の消化を助けます。胆汁はビリルビンという色素により黄色ですが、大腸にいくとビリルビンが腸内細菌により茶色のステルコビリンに変化し、これが便を茶色くしているのです。
◆白いうんちに要注意!
白い母乳・ミルクしか飲んでいない赤ちゃんのうんちも、このステルコビリンによりうんちの色は黄色~茶色になります。これは便色カードでは4番~7番にあたります。
一方で、1~3番は母乳・ミルクに近い白っぽい色で、この時には1日も早く病院にいくよう勧められています。便を茶色にするステルコビリンが入っていない、つまりそのもとであるビリルビンを含む胆汁が分泌されていない可能性が考えられるからです。
生後数か月の赤ちゃんで、胆汁が分泌されない病気に、「胆道閉鎖症」があります。肝臓でつくられた胆汁を十二指腸に運ぶ管が閉じてしまう原因不明の病気です。十二指腸に分泌されない胆汁が肝臓にたまってしまうことで、肝機能が低下し、命に関わります。
早期治療が大切ですが、日本でも発見が遅れることが問題となっています。
そこで開発されたのが「便色カード」なのです!
◆うんちは体からのメッセージ
「便色カード」は生後5か月頃までの赤ちゃんにしか使えませんが、便の色やかたちが大切なのは大人も同じです。例えば、胃や大腸で血がでているとき。皮膚と違って、胃や大腸では少し血がでても痛みはありませんが、便の色が黒や赤に変わることで気付くことができます。
赤ちゃんでも大人でもうんちには体からのメッセージがたくさんあります。水を流す前に少し見てみてくださいね!
【胆道閉鎖症について】
・胆道閉鎖症の治療は、MEdit教材「カラダワーク」に登場する山髙篤行教授が率いる小児外科で行われます。YouTubeで山髙教授が解説する胆道閉鎖症の手術動画も公開中です!・参考ページ
難病情報センター「胆道閉鎖症」
国立成育医療センターホームページ
投稿者プロフィール
- 全方位に目があるんじゃないかという細やかな気配りのできる逸材。寛大で誠実、緻密な仕事ができるのに人に優しい。病理医とSTEAM教育研究者の二足の草鞋を履くお母さん。愛くるしいパンダに似ているのであだ名は「しんしん」。
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