暑い夏のこの時期、楽しいレジャーやイベントが盛りだくさん!沢山遊んだ後、汗でべとついた身体はシャワーを浴びて気分爽快に過ごしたいものです。病院内は患者さんが療養する上で最適な温度に調整し、管理されていますが、汗をかいた、かいていないに関わらず、シャワーは患者さんにとって大切なケアのひとつ。シャワーは看護ケアの中で「シャワー浴」といい、大切な日常生活援助として位置づけられています。
◆シャワー浴の目的は「汚れを落とすこと」だけじゃない
シャワー浴の目的として1つ目は清潔保持のため。汗や皮脂の除去、感染予防のためにシャワー浴を行います。健康な成人が1日でかく汗の量(不感蒸泄を含む)は、おおよそ約500〜1,000mL。この中には、気づかないうちに皮膚や呼気から蒸発している汗(=不感蒸泄)が多く含まれています。実際に「ベタベタする」と感じるような汗はごく一部なのです。
2つ目は、皮膚・身体状態の観察のため。発赤、褥瘡、湿疹、皮膚トラブルの早期発見のため、看護師は全身の観察をしながらケアを行います。
3つ目は、身体機能へ刺激を与えるため。シャワー浴を通した適度な刺激は全身の血行を促進し、呼吸循環へ良い影響が。シャワーの蒸気を含んだ湿った空気が、気管や肺の奥の方を潤すのです。
4つ目は、精神的効果。爽快感、自律感、気分転換、生活リズムの維持に効果があります。
◆「気持ちよかった」その一言の重み
私が臨床の現場で働いていた時、身体の状態から3週間近く清拭(タオルで身体を拭く)のみしか行うことのできない患者さんがいました。患者さんを受け持ち始めたのは2日前からでしたが、どうも、表情や目に力がないことが気がかりでした。直近1週間の血圧やSPO2(酸素がどれくらい身体に足りているか)、体温などのバイタルサインは安定しており、全身状態も安定している。これなら!と、当時、新人看護師だった私は先輩に相談して、患者さんに「今日はシャワー浴、いかがでしょう?」と提案しました。次の瞬間、患者さんの表情はパッと華やぎ「ずっとシャワーを浴びたかったんだ」と前向きな言葉が。入院中の患者さんが「シャワー浴を終えたあとの笑顔」には、心と体の回復の兆しが表れます。好みのシャンプーやボディソープなどを持ち込めるようにすると、気持ちも安らぐ。また、立位の保持や上肢の可動域も広がることから、リハビリの一環としてもシャワー浴は有効です。シャワー浴は単なる“清潔保持”ではなく、自己肯定感の回復や生活感の再構築にもつながるケアなのです。
◆「その人らしさ」を尊重した入浴支援を
私自身も入院中、しばらくシャワー浴が許可されず、ベッド上での清拭のみの期間が1か月以上続いたことがありました。気管内挿管を受け、人工呼吸器で命を繋いでいた時期です。その後、気管切開の手術が無事に終わり、一般病棟に移ることができたのですが、術後初めてのシャワー浴。
とても不安でした。喉に穴が開いた状態でのシャワーはどうやってするのか?気管切開の穴から石鹸水が入れば、気管に鋭い灼熱感と苦しさを感じることに。そして、通常の水でも大量に入れば、溺れてしまうのです。
入院中に行ったのは、ラップを首元に苦しくない程度に巻き付け、その上からタオルを巻いてシャワーを浴びること。最初はシャワーから出てくる水の向きや水圧に慣れず、喉に水が入らないか怖さがありました。
今では、タオルなどで保護せずともシャワーを扱うことができるように。患者さんの中には、私と同じように、今まで生活してきた身体とは異なる状態で今後生活していかなければいけない方も多くいます。その中で、患者さんが安心して生活習慣を維持できるようにするにはそうすればよいのか。自宅に戻ってからも身の回りにあるもので応用可能か、など、その時々に合った工夫を看護師は提案できなければなりません。
今回は身近な看護ケアの一つでもある「シャワー浴」についてお話しました。シャワー浴は、五感に訴える数少ない看護ケアのひとつ。肌に触れる水の温かさ、香り、音、光。どれも患者さんにとって「生きている実感」となります。看護師は、単なる“つきそい”ではなく、“寄り添う”時間として、その一回のシャワー浴を、患者さんにとって意味あるケアにしていきたい、そう思いながら日々ケアを実践しています。
◆看護師のお仕事に興味のある人への参考URL◆
2025年最新【看護学生のための実践ガイド】シャワー浴援助の技術と安全管理
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投稿者プロフィール

- 勇気とガッツと愛嬌で難病を克服し、看護師の道へ。想像力と創造力がモットーで、プログラミングや動画編集もできちゃうアーティスト。愛犬と爆睡してエナジーチャージ。仲良しの妹は臨床検査技師。
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