ミカタの東洋医学
ミカタの東洋医学 COLUMN
2026.07.02
2026.07.02
夏の夜、寝苦しくて眠れない方必読!東洋医学では〇〇が不眠に効くのだった!
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布団に入っても、胸のあたりがほてってざわざわする。足はひんやりしているのに。そんな夜、ありますよね。

今から約1800年前、中国の医師・張仲景(ちょうちゅうけい)がこんな記録を残しています。「心中(しんちゅう)煩(はん)し、臥(が)するを得ず」。心がざわめいて、横になれない。不眠を訴える方のなかに、こうした訴えは一定数あります。夏になると、その訴えが増える印象があります。東京などでは、熱帯夜の日数もこの数十年で大きく増えました。1800年前にも、きっと似たような夜があったはずです。

◆深部体温と睡眠

眠りに落ちるには、深部体温(からだの内側の温度)が約0.5〜1℃下がる必要があります。眠くなると手足がポカポカしてきますよね。あれは、体の内側の熱が皮膚の表面に移動して外へ逃げているサインです。この熱が逃げて深部体温が下がると、はじめて眠りのスイッチが入ります。

ところが熱帯夜では気温が高すぎて熱が逃げにくく、体は眠ろうとしているのにスイッチが入りません。

もっとも、暑さばかりが原因ではなさそうです。クーラーで部屋は涼しいのに、布団のなかで足先だけが冷たく、頭や胸はほてって寝つけない。そんな経験はないでしょうか。気温のせいだけなら、上も下も同じように暑いはずです。なのに実際は、上はほてり、下は冷える。熱が上のほうにかたより、うまく巡っていないように見えます。なぜ胸がほてって足が冷えるのか。じつは、この問いへの答えは、西洋医学でも十分には語られていません。

◆東洋医学でひもとく不眠の原因

東洋医学では、心(シン)は五行では「火」に属し、精神・意識を主ります。腎(ジン)は「水の臓」で冷却・うるおいを主ります。健康なときは、腎の水が心の火を冷やし、心の火が腎の水を温める。水と火が互いに交わり、バランスをとっています。これを「心腎相交(しんじんそうこう)」と言います。

けれど、夏の暑さと発汗で腎の陰(冷却のためのリソース)が消耗すると、心の火を制御できなくなります。火は上に昇り、水は下に沈んだまま。これが「心腎不交(しんじんふこう)」です。胸がほてってざわめき、眠れない。

では、何をすればいいのか。ここで一つ、やりがちな罠があります。「暑いからアイスを食べて冷やそう」という行動です。たしかに胃のあたりは冷えます。ただ、眠りのスイッチを入れるのは、内側を冷やすことではなく、深部の熱を皮膚からにがすことでした。内から急に冷やすと、体はかえって熱をにがすまいと身構え、その流れを閉じてしまいかねません。だから、冷たいもので冷やそうという発想は、的外れなのです。

手がかりになりそうなのは、足もとです。上にのぼった火は、上から冷やすのではなく、足もとへ引いて、もとの居場所へ帰す。これを「引火帰元(いんかきげん)」と呼びます。火を引いて、元へ帰す、という意味です。東洋医学ではこの火を、水では消せず冷やすほど燃える「龍の火」にたとえました。さきほどアイスが的外れだったのも、根は同じです。引いて帰す先が、足裏の中央にある「湧泉(ゆうせん)」。腎の水が湧き出る泉、という名のツボです。

◆真夏に足湯??

ここをふくむ足全体を温めるのが足湯です。ふしぎなことに、温めると血管が広がって内側の熱が逃げ、深部体温はむしろ下がります。近年は、足を温めると眠りの質が上がったという報告もいくつか出てきました。確かな証拠はまだ十分ではありませんが、ここまでの話とも無理なくつながり、害もほとんどない。私は、試してみる価値は十分にあると思います。就寝の1時間ほど前に、40〜42℃のお湯で10〜15分。効いたか、効かなかったか、よかったら教えてください。

 

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参考文献

[1] 張仲景. 傷寒論・辨少陰病脈證并治(黄連阿膠湯条). 後漢期成立(宋改訂本).

[2] Kräuchi K, Cajochen C, Werth E, Wirz-Justice A. Warm feet promote the rapid onset of sleep. Nature. 1999;401(6748):36-37. doi:10.1038/43366. https://doi.org/10.1038/43366

[3] Haghayegh S, Khoshnevis S, Smolensky MH, Diller KR, Castriotta RJ. Before-bedtime passive body heating by warm shower or bath to improve sleep: a systematic review and meta-analysis. Sleep Med Rev. 2019;46:124-135. doi:10.1016/j.smrv.2019.04.008. https://doi.org/10.1016/j.smrv.2019.04.008

 

投稿者プロフィール

華岡 晃生
華岡 晃生
生まれも育ちも石川県。地域医療に情熱を燃やす若き総合診療医。中国医学にも詳しく、趣味は神社巡りとマルチな好奇心が原動力。東西を結ぶ“エディットドクター”になるべく、編集工学者、松岡正剛氏に師事(髭はまだ早いぞと松岡さんに諭されている)。