おしゃべり病理医のMEditラジオ COLUMN
MEditLabのポッドキャスト番組「てゆーか医学」の第14回放送は、「ゆるっとMEdit」、通称「ゆるメディ」をお届けします。
今回は、2026年7月26日に開催予定のMEditLabイベント「医学をみんなでゲームする」を前に、なぜMEditLabは医学をテーマにしたゲームづくりに取り組んでいるのか、その背景をじっくり語ります。
医学というと、難しい知識を覚えるもの、偉い先生の話を聞くもの、というイメージがあるかもしれません。でもMEditLabが大切にしているのは、医学を「教わる」だけでなく、自分たちで手を動かしながら「学び方を学ぶ」こと。ゲームづくりは、そのためのとてもよい入口になります。
ウイルスバトルゲームから始まったMEditLabのゲームづくり。そこには、編集工学、システム思考、マジックサークル、試行錯誤、そして「失敗しても大丈夫な場」をつくりたいという思いがありました。
おしゃべりの内容は、
・誰でも参加OK!「医学をみんなでゲームする」イベント開催(2026年7月26日)
・なぜ、MEditLabはゲームづくりをするのか?
・「学び方を学ぶ」ってどういうこと?
・ゲーム作家・山本貴光さんとの出会い そうよ、私は水瓶座の女!
・キーブック『ルールズ・オブ・プレイ』と『一般システム思考入門』
・編集は遊びから始まる 伝説のゲーム作家・米光一成さんも参加
・遊びと創造 やわらかなデザイン頭を養うゲームエクササイズ25
・MEditLabは喜んで「失敗できる」場所にしたい
・「巧い」と「面白い」の違い AI時代にこそ考えたいこと
などなど。
ゲームは、ただ遊ぶものではなく、世界のルールを見つけ、組み替え、試しながら学ぶための方法でもあります。
AIが「巧いもの」をすぐに作れてしまう時代だからこそ、うまくいかなさや試行錯誤の中にある「面白さ」を大事にしたい。
医学、編集、ゲーム、AI、そして失敗を楽しむこと。
MEditLabがこれからつくっていきたい学びの場について、少し熱めに語る回になりました。
ちなみに、ゲームづくりの原点を振り返る中で飛び出したのが、「そうよ、私はみずがめ座の女!」という謎(?)の一言。思い立つと不思議なご縁に恵まれるという、水瓶座エピソードもちょっぴり登場します(笑)。
それでは、ごゆるりとお楽しみください。
▼その他配信先
・Apple Podcasts:https://x.gd/LUfXT
・Amazon Music:https://x.gd/IArL6
・YouTube:https://youtu.be/LugicabIrXs
▼チャプター
・誰でも参加OK!「医学をみんなでゲームする」イベント開催(2026年7月26日)
・なぜ、MEditLabはゲームづくりをするのか?
・「学び方を学ぶ」ってどういうこと?
・ゲーム作家・山本貴光さんとの出会い 「そうよ、私は水瓶座の女!」
・キーブック『ルールズ・オブ・プレイ』と『一般システム思考入門』
・編集は遊びから始まる 伝説のゲーム作家・米光一成さんも参加
・遊びと創造 やわらかなデザイン頭を養うゲームエクササイズ25
・MEditLabは喜んで「失敗できる」場所にしたい
・「巧い」と「面白い」の違い AI時代にこそ考えたいこと
▼全文公開
●誰でも参加OK!「医学をみんなでゲームする」イベント開催(2026年7月26日)
QUIM:
順天堂大学STEAM教育研究会、MEdit Labがお届けするPodcast番組「てゆーか医学」、始まります。よろしくお願いします。
今日は「ゆるっとMEdit」、ゆるメディということで、小倉さんと僕が、主には本の話をしていますけれども、映画だったり、あとMEdit Labではゲーム作りもやっていますからね。そういうお話をしているんですけれども、今日はどんなお話をしましょう。
小倉:
はい。今度の7月26日の日曜日に、MEdit Labのイベントを予定しているんですね。
MEdit Labは、さっきQUIMくんが言ってくれたように、医学をテーマにしたゲーム作りのワークショップを毎年開催していて、今回が……3回目かな? あれ、3回目?
いや、4回目ですね。2022年の秋にMEdit Labを発足して、今度が4回目です。
そもそも「なんで医学ゲームなの?」っていう話があると思うんです。しかも、ゲームを遊ぶほうではなくて、ゲームを作るほうなんですね。
よく「シリアスゲーム」という分野があります。特に医学系って、この間QUIMくんと私たちでパンフレットを作ったシミュレーションセンター、順天堂大学にはメディカルテクノロジー・シミュレーションセンターという施設があって、医学生だけじゃなく、いろいろな学部の学生さんや、ドクター、それ以外の医療職種の皆さんも自由に使える、シミュレーターがたくさんある部屋があるんですよね。
シミュレーターというのは、たとえば手術とか、腹腔鏡の手術とか、その手前の気管挿管とか、医学にはいろいろな手技があるんだけれども、いきなり患者さんに「やりなさい」と言われても、誰しもできるものではないから、そういうもので練習してから本番に臨むということがあるんです。
そのシミュレーターというのはすごく発達していて、医学系って、シミュレーターとゲームは違うんだけれども、「本番ではないもの」で、「仮想空間でやってみる」みたいなことは結構やられているんですよね。シミュレーションゲームってありますよね。そういう感じで。
QUIM:
僕もシミュレーションセンターに行きましたけど、画面があって、ゲームのように操作したりというものもありますもんね。
小倉:
そうですね。
授業でも、PBL、Problem-Based Learningといって、座学で知識をバーッと聞いて覚えるのではなく、そういう知識は個人個人で学びましょうと。そのうえで、たとえば「こういう患者さんがいます」というテーマが設定されていて、それに対してグループでディスカッションしながら、「こういうときにどういう治療をすればいいんだろう」「どういうサポートをすればいいんだろう」と考えるようなことをやっているんです。
だから、医学を学ぶうえでは、シミュレーションであるとか、そういったものは結構近いところにあるんですよね。
でも、それは後から気づいたところもあるんです。
●なぜ、MEditLabはゲームづくりをするのか?
小倉:
MEdit Labは「MEdicine × Edit」で、私とQUIMくんが出会ったイシス編集学校で学べる編集工学を土台にしています。編集工学というのは、情報の扱い方をいろいろ自分で工夫することによって、情報が生き生きするとか、いろいろな企画ができるようになるとか、物語が書けるようになるとか、そういうことをやるわけです。
せっかくそのメソッドを医学と掛け合わせて、MEdit Labとして活動していくときに、中高生を呼んで、単に医学テーマの話をするだけでは、あまり意味がないなと思ったんですよね。
QUIM:
学校の授業とかで聞いたりすることもありますもんね。そのテーマで話を聞くというのはね。
小倉:
そうなんです。
なんとなく医学部って敷居が高いし、医学そのものも敷居が高い。ドクターの偉い話をありがたく聞く、みたいになりがちなんですよね。キャリア教育の現場にドクターが呼ばれて話すこともあるけれども、かっこいいお話を聞いて、「すごい」と思う。
それで憧れて、「よし、私も医者になる」とモチベーションがすごく高まることももちろんたくさんあると思うんですけれども、もうちょっと違うアプローチで医学に触れてもらう機会が、日本には少なすぎるんじゃないかなと、すごく思っていたんです。
じゃあ何をやろうとなったときに、編集工学ではよく言われるし、私もよく言っている「学び方を学ぶ」というアプローチができる。私も10年ぐらい、編集工学で松岡正剛さんが提唱してきたことを自分なりに咀嚼してきて、いろいろな企画の方法とか、編集の方法とか、物語の方法とか、いろいろ学んできたんです。
そこで、「ゲームもいけるじゃん!」と、なんとなくなったんですよね。
QUIM:
なるほど。
小倉:
いきなりなんでゲームになったかというと、QUIMくんと私が初めて一緒に仕事したのが、初めてでもないのか。編集学校で別のプロジェクトを一緒にやっていたこともありましたけれども、経済産業省の「未来の教室」のSTEAMライブラリー事業に参画して、一緒に動画教材を作ったときに、ウイルスバトルという対戦型のカードゲームを、素人ながら作れちゃったんですよね。
あれはビギナーズラックだと思うんですけど、ゲームを作るプロセスがすごくよかったんです。私はウイルスの専門家ではなかったけれども、ウイルスについてすごく勉強したし、ゲームを作るときって、自ずとその物事について勉強しなくちゃいけない。しかも、プレイしてみてルールをちゃんと決めなきゃいけないし、それが面白くなくちゃいけないから、いろいろ考える要素もある。
そのプロセスが、すごく教育的だなと思ったんです。
●「学び方を学ぶ」ってどういうこと?
QUIM:
「学び方を学ぶ」というのは、要するに、たとえば医療の中の何かについて学ぶんだけど、その対象自体を学ぶだけではなく、そのときの学び方、学ぶ方法自体を学ぶということですもんね。
小倉:
うん。学力って、結局、自分なりの学び方を完成させた度合いにかなりよるんじゃないかと思っていて。
それは医学に限らず、中高生がこれから高校受験なり、大学受験なり、資格試験なりをやるときに、それぞれ多分、独自の勉強の方法を編み出すと思うんですよ。それがものすごく効果的であるかどうかで、学力の差もつくのではと思うし、やり方がいいほうが面白く勉強できるから、自ずと長くやれる、長い時間やれるということもあると思うんです。
結局、学び方を学ぶことが学力にも直結するんじゃないかと思ったし、そのためには試行錯誤もしなくちゃいけない。そういう意味でも、中高生にとって有益だなと思ったんです。
単に偉い人の専門的な話を聞くよりは、自分も手を動かしてみる。
あともうひとつは、私の個人的な性格の問題というか、「ちゃっかりついでに、おせっかい」がモットーということもあって、せっかくだから私も勉強したいんです。参加者が勉強できるだけではなくて、主催する私たちも勉強できるものをやりたいなと思ったんですね。
ビギナーズラックで、ウイルスバトルは学校でも楽しく遊んでもらえるような完成度にはなっていて、できちゃったんですけれども、じゃあ一回、ちゃんとゲーム作りというものを学んでみたいと思った。
あとは、編集工学では今まで、企画の方法、編集の方法、物語を作る方法などがあったけれども、ゲーム作りにも応用できるかなと思ったんです。ゲーム作りの編集工学的なカリキュラムみたいなものも作れたらいいな、というのはありました。
●ゲーム作家・山本貴光さんとの出会い 「そうよ、私は水瓶座の女!」
小倉:
そこで、すごくラッキーだったのは、初回から山本貴光さんが助けてくださったということです。これは大きかったなと思います。
この間、しいたけ占いの2026年下半期の運勢が出ていたんですよ。それで水瓶座のところを読んだんです。私は水瓶座の女なんですけど、水瓶座って、自分が「これをやってみたい」と思ったときに、思いがけない幸運がやってくる運勢なんだそうです。
それを読んで、「そうなの?」と思ったんだけど、すごく思い当たる節があって。たとえば今回、MEdit Labでゲーム作りをやるとなったときに、山本貴光さんが助けてくださる。ど素人で、しかもゲーマーでもなく、ゲームについても大して詳しくない私を、山本貴光さんがサポートしてくださるなんて、そんなラッキーなことはないじゃないですか。
山本貴光さんは、今は東京科学大学のリベラルアーツ研究教育院の教授で、哲学を教えていらっしゃいますけれども、もともとはコーエーというゲーム会社で、『信長の野望』とか『三國志』とか『戦国無双』などを作ってきた、本当に一流のゲームデザイナーさんなんです。
QUIM:
コーエーのゲームはよくやりましたね。『三國志』とか『信長の野望』とか、めちゃくちゃ楽しかった。
小倉:
そうです。知っている人からすれば、本当にレジェンドの会社ですよね。
山本さんは、今までいろいろなところでゲーム作りを教えてこられたと思うんですけれども、私が勝手に考えたカリキュラムに乗ってくださったのもすごいことなんです。
だって、山本貴光さんには、山本貴光さん流のゲーム作りのプロセスがあるはずなのに、ど素人の私が「この流れで参加者の皆さんとゲーム作りをやっていきたいんです」と提案したら、それに合わせて講演してくださった。初回のMEdit Labのワークショップでは、山本さんが4回来てくださって、講演をしてくださったんですよね。
QUIM:
そうでしたね。
小倉:
そういう幸運もすごく後押しして、今に至るという感じなんです。
QUIM:
山本さんは、本当にそういうタイプというか、その場に合わせてくださる方ですよね。自分、自分というところがないじゃないですか。自分の持っている手札を、その場に合わせて出してくださる感じがすごくありますよね。
●キーブック『ルールズ・オブ・プレイ』と『一般システム思考入門』
小倉:
ありますね。
ゲーム作りをやろうとなったときに、最低限の下調べというか、私もゲームについて勉強したほうがいいかなと思って読んだのが、山本貴光さんが訳されている、エリック・ジマーマンの『ルールズ・オブ・プレイ』です。
本屋さんに行ったら素通りしてしまうような装丁なんですよね。A4ぐらいの、薄い楽譜みたいな本で、4冊組で、目立たない感じでゲームコーナーに置いてありました。
QUIM:
前はそうじゃなかったんですよね。1冊の本だったんだけど、その後、分冊化されたんだと思います。
小倉:
そうなんだね。
その4冊に分冊されている中の1冊目に、ゲーム作り全体のマップのようなものが結構網羅されているんです。1冊目をしっかり読むと、2、3、4巻はそれの詳しい解説という形になっているんですよね。だから1冊目を結構読み込みました。
読んだときに、編集学校で学んだ編集の方法と、すごく似ているところがあるな、同じことを言っているなと思いました。
松岡正剛さんがやっていらしたブックナビゲーション『千夜千冊』に、ジェラルド・M・ワインバーグの『一般システム思考入門』(紀伊國屋書店)という本があります。私はそれがすごく好きで、結構ぶ厚い本ですけど。
松岡さんの『千夜千冊』でいうと、1230夜なんですけど、この『一般システム思考入門』は、いろいろな物事を観察するときに、「システム思考」という見方があるよ、ということを提示している本です。そこに「境界」と「見方」というキーワードが出てくるんですよね。
その見方が、ゲーム作りでもすごく大事なんです。
「境界」と「見方」は、編集学校でもすごく鍛えられるところじゃないですか。見方というのは、ひとつの視点だけではなく、いろいろな視点でひとつの情報を見ることによって、まったく見え方が変わるというエクササイズをしたりする。境界も、どこで区切るかによって情報の見え方が変わるとか、意味も変わってくるということをやるじゃないですか。
まさにゲーム作りも、境界設定がすごく大事なんです。その設定によって、面白さも全然変わってしまう。ちょっと変えただけで、「こんなに面白くなるのか」ということばかりですよね。
『ルールズ・オブ・プレイ』の最初のほうにも、その説明があります。ゲームの場合は「マジックサークル」といって、ゲームというのはひとつの世界だから、その世界の中で成り立つルールに沿って、プレイヤーは遊んでいくわけです。だから、そのルールが及ぶ範囲のことをマジックサークルと言うんですよね。
そういった説明を読んで、「これ、システム思考じゃない?」と思ったんです。
私は初学者なんだけれども、「これは私が今までやってきたことや、仕入れてきたことと結構似ているから、取りかかりやすいな」という感じがしました。
だから、ゲーム作りをMEdit Labで真剣にやっていこうと思ったのは、間違いじゃなかったかなと思っています。
QUIM:
そうですよね。
学びというと、どうしても「勉強する」というイメージになってしまうけれども、そこにどう遊びを取り入れていくかは、すごく大事ですよね。そこがうまくできていると、勉強も学びも変わるだろうし。
松岡正剛さんは、もともと雑誌の編集をやったり、映像制作をやったり、いろいろなことをされてきた方ですけれども、基本的には本や出版に関わってきた人で、「どうやってこれを面白く見せるのか」ということをずっと考えてきた人でもあります。
「編集は遊びから始まる」ということを、ずっと言っていましたよね。まさに、それを医療の学びにどう持ち込むかということですよね。
●編集は遊びから始まる 伝説のゲーム作家・米光一成さんも参加
小倉:
そうですね。
ゲームというと、遊び、いわゆる表層的な遊びとして捉えられがちです。テレビゲームのイメージがどうしても強いですからね。ちょっとアレルギー反応を起こしてしまう方もいるんです。
日本では、ゲーム障害的なイメージもあるじゃないですか。夜中までゲームをやって、昼夜逆転してしまうお子さんがいる、みたいなステレオタイプもある。ゲームに関して、すごくネガティブなイメージがどうしてもあるんですよね。
でも、もうちょっと学習の現場にゲームが入るというのは、すごくいいなと思っています。
「ちゃっかりついでに、おせっかい」じゃないですけど、私たち自身も、結局、ゲーム作りを勉強できる機会を得たことになりました。毎年ワークショップを開催するたびに、初年度からずっと山本貴光さんが関わってくださっていますし、その後、ゲーム作家の米光一成さんがひょんなことで、ふと気づいたら参加してくださっていたりもしました。
そうして、いろいろゲーム作りのアドバイスをしてくださるようになって、私たち自身も、参加者さんと一緒にゲームを作ったりするようになったんです。
今、いい循環が起きているなと思うのは、自分たちで作ったゲームを出張授業で使っていることです。医学の出張授業を、私たちは「MEdit授業」と称して、いろいろな中学校や高校に出向いて、年間15回ぐらいやっているんですけど、そこで自分たちが作ったゲームを持っていって、医学の授業をしています。
ゲームをプレイしている生徒さんの様子を見て、「こんな複雑なことも、ゲームをやるだけで、すごく簡単に理解してもらえるんだ」と思うことがある。ゲーム学習の効果を目の当たりにすることもできるようになりました。
ゲームを作ったら、そのゲームを使ってみる。そういういい循環が、今、起きているかなと思います。
それから、山本貴光さん関連でいうと、エリック・ジマーマンの『ルールズ・オブ・プレイ』で最初に勉強したんですけれども、その本は結構、学術書っぽいんですよね。装丁も含めて、少しとっつきにくい方も多いかなと思います。
●遊びと創造 やわらかなデザイン頭を養うゲームエクササイズ25
小倉:もう1冊紹介したい本があって、これもエリック・ジマーマンなんですけど、『遊びと創造』(ビー・エヌ・エヌ)という本があります。副題が「柔らかなデザイン頭を養うゲームエクササイズ25」。
簡単に紙とペンでできるゲームなどが紹介されつつ、「ゲームとはこういうものだよ」ということが、わかりやすい文章で書かれている本です。ジマーマンがずっと研究してきて明らかにしてきたことが、かなり入門しやすく書かれている。暇だったら、この中にあるゲームで実際に遊べたりもするし、デザインのコツのようなものもわかりやすく解説されています。
この日本語版が出るときに、山本貴光さんが巻末に日本語版解説を書いてくださっているんです。「ゲームデザインを攻略するために」というタイトルの説明文がついているんですけど、それもすごくいいんですよね。
そこでは、ゲームデザインとはどういうものかについて、こう説明されています。
解くべき課題を設定して、その解決に向けてルールや道具を整えて、邪魔する要素を考え、他の人と協力しながら、試行錯誤と発見を積み重ね、失敗を通じて理解を深めては、解決法を再調整する。それがゲームデザインの営みです、と。
それは実際、私たちが日常や仕事のさまざまな場面でもやっているよね、ということが書かれていて、本当にそうだなと思いました。
●MEditLabは喜んで「失敗できる」場所にしたい
今、タイパとかコスパという言葉がすごくありますよね。特に中高生は、勉強で忙しいというのもあると思うんですけど、そういうことを気にする。でも、試行錯誤するということは、このゲーム作りではめちゃめちゃやらなくちゃいけない。やらざるを得ないんです。
でも、それが結構楽しい。試行錯誤も結構楽しいな、ということを感じてもらえればいいかなと思っています。
だから、なるべく失敗しても大丈夫な安全な場所にしたい。今、MEdit Labはそういう場になりつつあります。
月に1回、「MEditカフェ」というものを開催していて、自作のゲームを自由に持ち寄って、みんなでプレイしてみて、いろいろなアイデアを出し合うということをやっています。
自分のゲームを持っていくのって、結構緊張するんですよね。
QUIM:
批評されますからね。
小倉:
そうですね。
ただ、かなり温かい環境の場にはなっています。誰もそれをけなそうとする人はいないし、「こうしたらいいんじゃないか」という建設的な意見が出てくる場になっている。
それを失敗と呼ぶかどうかはわからないけれども、安心して失敗できる場があるのはいいなと思っています。4年目なんですよね。今度が4回目です。
だいぶMEdit Labは、そういう意味ではいい場所に成長してきたなと思っています。
QUIM:
なるほど。
「タイパ」「コスパ」という言葉が出てきたときに、みうらじゅんさんが「一体何なんだ」と思ったらしいんですよ。
みうらさんがすごいのは、いきなりその言葉を受け入れないんです。「タイパ、コスパ」という言葉に対して、「それって、青空タイパ・コスパだな」と、芸人なんじゃないか、コンビ名なんじゃないか、みたいに名づけるんですよね。「青空タイパ・コスパ」みたいにして、一旦置いておく。
みうらじゅんさんは、そういう造語とかネーミングの方ですけど、まあ、それは別にどうでもいい話なんですけど。
失敗とか、うまくいかないことって、今は何でも、生成AIでも何でもそうですが、「いかにうまく作るか」「いかにうまくやっていくか」と考えるじゃないですか。
でも逆に、うまくいかないことを楽しもうということが、僕はすごく大事だなと思っていて。みうらさんも、そういうことを言っていたと思うんです。だから「青空タイパ・コスパ」としたんだと思うんですよね。タイパ・コスパで行こう、とはしないで。
小倉:
私たちのワークショップも、「みんなで絶対にゲームを完成させましょう」「最後まで行きましょう」みたいな奨励は、ほとんどしていないんです。
だから、みんな結構離脱していくんですよ。
一応、12のカリキュラムに分けて、企画書まで作りましょうという流れにはなっているけれども、本当に企画書まで書ける人は3割を切ります。その中から、実際に12月のクロージングイベントで自分のゲームを持ってきて、みんなで遊ぼうという段階に来る人たちは、本当に1桁です。
60人ぐらいから始まって、5、6人とかしかいないんですよね。でも、全然それでいいと思っていて。
完成まで行くといっても、その完成も、本当の意味では完成ではないんですよね。途中なんです。いくらでも改良できる段階なんです。ものになるまで行ける人は、そのくらいしかいないということもあるんだけれども、途中で終わったとしても、そのプロセスの中で、その人なりに試行錯誤するタイミングがあるはずなんです。
その体験が、私は大事だなと思っています。
ゴールすることだけを奨励しようとすると、ちょっときつくなる。それこそ、コスパ、タイパが出てきてしまう。だから、なるべくそこはなくしたいんです。
●「巧い」と「面白い」の違い AI時代にこそ考えたいこと
QUIM:
特にAIが出てきたら、デザインでも何でもそうですけど、うまくやってくれるじゃないですか。うまいものって、以前よりも面白くなくなっている気がするんですよね。
小倉:
そうかもしれない。
QUIM:
だから、ちょっとうまくいっていないなということのほうが、面白いと感じるようになってきている気がします。
自分自身も、「これだったら別にAIが作るし」と思うことが増えて、うまくいかないほうにどうしても行こうとしてしまう。最近はそちらのほうが楽しいんです。もちろん、うまくいかないのはつらい部分もありますけど、締め切りとか仕事になるとね。
小倉:
それは思います。
AIとの付き合い方は難しいです。今度のワークショップも、AIを使ってもらってもいいことにしたほうがいいよね、と話していました。
今の時代、使わない、禁止するということ自体に、あまり意味がない気がしています。
でも、AIが出てきたら、そのAIと試行錯誤することが大事なんです。AIが出してくるアイデアは、ゲーム作りに関しては、正直そのままだとあまり面白くない。どこかのゲームに似ているというか、既存の型に寄ってしまう。
でも、それでいいんですよね。それを土台にしてもいい。ただ、それをそのまま出すのだったら、何の試行錯誤もないわけで、そこがスタートだと思ってほしいんです。
今は、AIに何か聞きたいことがあって、バーンと出してくれました、はい終わり、という使い方になりがちです。でもゲーム作りでは、むしろ「とりあえず聞いてみるか」と。「ルールはどんなものがあると思う?」と聞いてみる。それがスタートになる。
だから、AIを使ってもいい。使って、ひとまずものになるなら、それはそれで楽しいから。ただ、AIの力を借りてもいいけれども、AIをパートナーにして試行錯誤する、ということがこれからすごく大事かなと思っています。
QUIM:
どこで、どういうふうにAIを使ったのかは、はっきりさせたほうがいいと思うんですよね。
自分のためにも。別にそれを全部明かさなくてもいいんだけれども、そうしないと、AIを使ってできたものは、他の人もできるということになってしまう。あまりにもそのままだと、そこが問題ですよね。
実際、調べものをするときも、検索やAIを使うわけです。だから使わないということは、ちょっと不可能だと思います。大事なのは、どういう使い方をして、そこからどうなったのかということだと思うんです。
あと、ゲームというと、すごく壮大なものを想像する場合もあると思うんですけど、最悪、紙と鉛筆でもいい。じゃんけんだって、何も使わないわけですから。それでもいいわけですよね。
小倉:
本当にそうです。
ゲーム作りについては、特に米光一成さんですね。『はぁって言うゲーム』とか。もともと米光さんも、ゲーム会社に所属されていたときは『ぷよぷよ』を作っていて、そういう意味では、山本貴光さんと同じように、デジタルゲームも作った経験があるゲーム作家さんです。レジェンドですよね。
でも、米光さんが作られるゲームは、基本的にはすごく日常に即したものが多いんです。ちゃちゃっと作った、という言い方は変かもしれませんけど、ちょっとした変化があって、ルール的にはすごく簡単なものが多い。
私はあまりゲームに詳しくないだけに、米光さんの作ったゲームは、ルールがすごくシンプルで、だけどじわじわと面白い。そして、ルールが簡単だから、誰のことも拒絶しないゲームを作られるなという印象があります。
米光さん自身も優しい人ですよね。
QUIM:
優しい人ですね。
小倉:
そうなんです。それもいいなと思っています。
医学って、なんとなく堅苦しくて、専門性が高くて、敷居が高い。でもそれとゲームを掛け合わせて、米光さんのゲームのように、メカニクスがシンプルなものとうまく掛け合わせられたらいいなと思うんです。
みんなが楽しく遊んで、医学知識がちょっとだけ深まる。そんなゲームが作れたらいいなと思っています。
QUIM:
医学も広げれば、人体のことすべて医学ですからね。いろいろありますから。頭を柔らかくして、やっていただけたらいいんじゃないでしょうか。
小倉:
はい。こんなところで、とりあえずちょっと熱く語ってみました。
QUIM:
素晴らしいです。
小倉:
最後にひと笑いして。ありがとうございました。
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投稿者プロフィール

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メディアのプロとして、立ち上げから今日に至るまでMEdit Labの運営を
全面的にサポートしてくれているSaiQuicのエディター。20代から伝説の編集者、故・松岡正剛にその才能を見出され、数々の松岡プロジェクトに参加してきた。大学時代は勅使川原三郎ゼミに所属し、ダンサーやモデルや役者もできちゃうマルチタレント。
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