今年のMEdit Labワークショップでは、参加者のみなさんに「おしゃべり細胞スタンプ」の缶バッジをプレゼントしており、それがワークを一緒に行うグループの目印にもなっています。
現在、10種類近くの缶バッジがあるのですが、今回は、その中でも「おつかれまくろふぁーじ」に続く汎用性の高いスタンプをひとつ紹介しましょう。
「今、出るところ」。
おしゃべり病理医は、職場を出るときに「これから帰ります」のメッセージとともにこのスタンプを使って家族にLINEしています。
さて、「今、出るところ」といいますが、いったい何がどこへ出ているのでしょうか。
■主役の細胞は「好中球」!
今回主役の細胞は、「好中球」です。
血液検査では、赤血球、白血球、血小板の数を調べます。赤血球は酸素の運搬担当、血小板は止血の役割があり、白血球は免疫を担当する細胞です。
白血球には、好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球があり、その中で最も多いのが、好中球です。
好中球は、病原体が身体に侵入してきたときにまっさきに動員される免疫細胞のひとつ。通常は、血液中におだやかに流れているか、血管の壁にくっついてじっとしています。
ところがひとたび、病原体侵入のサイレンが鳴り響くと、好中球は先を急げと現場に急行します。
好中球が、血液の流れに逆らって血管の壁にくっついていられるのは、「粘着力」があるからなのですが、病原体侵入のサイレンである「サイトカイン」が分泌されると、この粘着力が低下し、ぽとぽとと血管内に落ち、血流に乗って病原体が侵入する現場に次々運ばれていきます。
■現場に急行した好中球はその後?
はい。いよいよ現場にたどり着きました!そこで起きている現象がまさに「今、出るところ」であります。
病原体が侵入した場所では、血管の流れがゆるやかになっており、かつ、血管の壁に隙間ができ、血管の外側へと血液の成分が滲み出しやすくなっていきます。
怪我をしたり、何か虫に刺されてバイキンが入った傷口は、赤く腫れますよね。赤くなるのは、血液の流れが遅くなるからであり、腫れるは血液の成分が血管の外に出てその部分の組織がむくむからです。
「今、出るところ」スタンプは、好中球が現場に近い部分の血管の壁を越えて、炎症が起こっている組織の部分にまさに滲み出そうとしている瞬間を描いたものです。この現象を好中球の「遊走 migration」といいます。
好中球は、居合わせたバイキンをパクリと食べて自分の細胞質で消化、「殺菌」します。菌を殺すと同時に自らも死んでしまうため、好中球はとっても短命です。
好中球はみなさんのカラダを守る命がけの戦士なのでした!
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投稿者プロフィール
- 趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。
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