■食べられません「鼻茸」は
突然ですが、おしゃべり病理医は「鼻茸(はなたけ)」を持っています。美味しくはありません。そもそも食用ではなく、10年以上も持ち続けて現在に至ります。
だいぶ前、風邪を引いた後に顔面や頭が痛く、かつ、鼻もつまったままで体調がいっこうに良くならないので、たまりかねて職場の耳鼻科を受診したところ、先輩の耳鼻科ドクターが、私の鼻の中をちらっと覗いて、こう言いました。
「おまえ、鼻茸できてるぞ。しかも両鼻にな」
私が、慢性副鼻腔炎と診断された瞬間でした。
鼻茸とは鼻(と「副鼻腔」という鼻の奥の空間)の粘膜がむくんでポリープのようににょっきり、きのこのようにせり出した状態を言います。副鼻腔炎が長く続くと鼻茸ができるのです。鼻茸があまりに大きいと、空気の通り道をふさぎ、鼻がつまってしまいます。それにしても「鼻茸」、いったい誰がつけた名前なのでしょうか。センスありすぎです。
鼻づまり(鼻閉)の症状が強い場合は、ポリープを手術で切除することもありますが、喘息と関連し、難病指定されいている「好酸球性副鼻腔炎」は、治りづらく手術してもぶり返すことが多いため、別の薬物療法などが選択されたり、だましだまし様子を診ることもあります。
■病理診断で診断「好酸球性副鼻腔炎」
「好酸球性副鼻腔炎」の診断には、病理診断が活用されています。鼻や副鼻腔の粘膜を少し採取したり、手術で切除された鼻茸を顕微鏡で観察します。そして、アレルギーに関連する「好酸球」という白血球の一種である細胞が何個確認されるかを調べ、好酸球性副鼻腔炎であるかどうかを判定するというものです。
かくいう私は、自分で自分の病理診断を行いました。私の家系は喘息やアレルギー持ちのため、好酸球性副鼻腔炎の可能性が高く、耳鼻科の先生に少し採取していただいた自分の鼻粘膜を顕微鏡で観察したのでした。(結果、好酸球性副鼻腔炎の疑いが強いものでした~(涙))。
耳鼻科の先生には、すぐに強い治療をしなくても良いから、風邪を引かないように日頃から「鼻うがい」を毎日欠かさずやることが大事と言われ、そこから10年以上、「毎日帰宅したら鼻うがい」を励行しています。
今年は、コロナをはじめ、それ以外にもインフルエンザや様々な風邪のウイルスが大流行りで、慢性副鼻腔炎持ちのおしゃべり病理医にとって試練の夏となっています(そして、もう9月ですがいったいこの暑さはいつまで続くのでしょうね)。
風邪のあとに長引く喘息症状や鼻の症状がある場合は、耳鼻科を受診し、自分が「鼻茸持ち」であるかどうかチェックしましょう。また、コロナ感染症に関しては、「においがわからない」という症状がかなり有名になりましたが、副鼻腔炎、とりわけ、好酸球性副鼻腔炎の場合は、においがわからないというのも頻度の高い症状のひとつですから、コロナの後遺症だと早合点せずに、副鼻腔炎がないかどうかを調べることも大切です。
そして、なんといっても、鼻うがいはあらゆる感染症予防に超おすすめですよ!
おまけ:鼻うがいの方法ですが、わかりやすいNHKのサイトがありました!こちらから。
投稿者プロフィール
- 趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。
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