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2024.01.15
2024.01.15
バナナの病理診断? 広尾学園中学校にてMEdit授業開催
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今年度2回目の広尾学園中学校MEdit授業。12月14日の午後、部活動がさかんな日だったので、参加者はやや少なめでしたが、インターナショナル・クラスの生徒さんを含む10名の中学1年生がラボに集まり、おしゃべり病理医としんしんとともに、“MEditづくし”のむちゃくちゃ楽しい3時間を過ごしました~。

夏のMEdit授業では、対戦型カードゲームの「MEditウイルスバトル」で遊びながら、ウイルスや感染対策の医学知識を学びましたが、今回は「医学×歴史」のMEdit動画教材を使って、3つのワークに挑戦してもらいました。

◆1時間目「熟し具合を判定? バナナの病理診断ワーク」

「医学×歴史」の導入篇となる1時間目の授業は、「バナナの病理診断ワーク」。「診断」は、病名をつける行為です。見方を変えると、健康な状態と区切りをつけて目の前の患者さんを「病気にする」ことを意味します。このワークでは、物事を区切るには適切な言葉が必要であることを学びます。

▲どこから熟している? どこで腐った状態になる? グループで話し合いながら大盛り上がりの生徒さん

3つのグループに分かれた生徒さんは、バナナの熟し具合を未熟・適熟・過熟の3段階に分けるバナナの病理診断に挑戦。病理医が細胞や組織をくまなく観察するように、バナナの色や硬さ、実とヘタの部分にそれぞれ着目するなど、バナナが熟していく連続的な過程をいったいどのような尺度とそれを表す言葉をつかえば適切に診断できるかを考えます。着眼点の異なる様々な「診断基準」が誕生しましたが、それはこれからこの授業を受けるかもしれないみなさんのためにふせておきましょう。

▲身振り手振りで、バナナの病理診断の基準を説明する生徒さん

▲「ヘタの熟し具合まで観察してくれたなんてすごいね!」と実際の病理診断も交えながら講評するしんしん

みなさんはどんな尺度で3段階に分けますか?

◆2時間目「授業中の眠気症状をどう名づける? 名づけワーク」

歴史を学ぶうえで大切なことのひとつに「名」という概念があります。モノゴトは名前がつくことで初めて、考えることのできる対象になります。モノゴトに“いつ”“どんな”名前がついたのか、名づけの来歴を知ることは、そのことについて深く考察したり理解するうえでとても大切です。

病名にももちろん歴史があります。特に日本語の病名は、伝統的に漢方医学に則って名づけられてきた様々な病名や症状を、明治維新以降、西洋医学への路線変更によって、大きく変更された歴史があります。もちろん漢方医学の名称がそのまま残っているものもありますし(例えば、「黄疸」など)、別の学術的、あるいは社会的な理由によって、各専門学会が病名自体を変更することもあります(例えば、「精神分裂病」から「統合失調症」への変更など)。病名の歴史を知ることで、その病気自体を深く理解できることも多いのです。

▲各グループを回りながらワークの様子を見守る広尾学園、岡田奈智先生。広尾学園のMEdit授業は奈智先生がほとんどのプログラムをアレンジしています。まさに、MEdit授業の理想形! 生徒さんの盛り上がりに目を細める奈智先生のまなざしが優しい。

さて、この名づけワークは、中高生にお馴染みの様々な「症状」に名前をつけてみます。名づけワークは、これまでも様々な高校のMEdit授業でも試みてきた鉄板ワークですが、今回は、最年少中学1年生のある方から素敵な回答が!

インターナショナル・コースに所属する英語が堪能な生徒さん。「スマホがないと落ち着かなくなる症状」に対して、「SAD」という病名をつけてくれました。「これは、“Smartphone Addiction Disorder” の頭文字をとった病名です」と、ネイティブに近い素晴らしい発音で解説してくれました。さらに、「スマホばかりと対話している本人もまわりのひとも悲しい気持ちになるという意味も込めています」とのこと! 中学1年生、おそるべし! ネーミングセンスがバツグンでした。

▲名回答が目白押しで、ついつい名づけの解説に熱が入ってしまうおしゃべり病理医

◆3時間目「CT検査を受けたら好きな子にモテる? if-thenワーク」

最後、予想以上に盛り上がったのが「if-thenワーク」。みなさんは、「風が吹いたら桶屋が儲かる」ということわざをご存知でしょうか。あるひとつの出来事が次々と連鎖して、思いもよらぬ結果をもたらすという意味ですが、歴史というのifとthenの連鎖による、思いがけない結果でできているといえます。MEdit動画教材では、その一例として、グーテンベルクの活版印刷革命が、細胞の発見をもたらすまでの、歴史的な事柄の連鎖を説明しています。

さて、そんな動画教材を踏まえて、中学生に挑戦していただいたのが「if-thenワーク」。ワークは、最初に「好きな子にモテるようになる」という最終結果(then)が設定されていて、スタートのifは「将来の病気がわかるCT検査を受ける」と「人工冬眠技術を使う」というSF的な出来事の2つ。どちらかを選んで、最終的に「好きな子にモテるようになる」ように、全部で五段階のif-thenの歴史的連鎖を考えてみる、というワークです。一例がこちら。

▲ある生徒さんのif-then回答。なんて素敵な歴史の連鎖でしょう!

このお題、とにかく盛り上がってほとんどの生徒さんが手を挙げて発表してくれました。どれもこれも面白い “物語” ができあがっていました。そう!歴史(history)は、物語(story)なのです。そして、どんな出来事もこうなりたいと願う将来に向かって、ポジティブにつなげていくことができる。

今回ワークに参加された生徒さんの将来は、希望がいっぱい。どんな出来事も自分が思い描く未来と関係していくんだという確信を持って、夢を捨てずに頑張ってほしいと思いました。

▲自分の回答を生き生きと発表する生徒さんたち。聞いている生徒さんもうんうんと同意したり、わーっと歓声をあげたり

おしゃべり病理医としんしんもこれからのMEdit授業のヒントをどっさりもらって、充実した学びの時間を過ごさせていただきました。

それでは、広尾学園のみなさん、次回、またお会いしましょうね。レッツMEdit Q!

★みなさんへ★

私の学校(あるいは職場?)でも開催してほしい!というご希望のある方は、MEdit Labのお問い合わせフォームからご連絡くださいね!