コトバト通信 COLUMN
こんにちは、言語聴覚士の竹岩直子です。
ところで、みなさんは「言語聴覚士」に対しどんなイメージがあるでしょうか。「言葉の先生?」「話したり聞いたりする人?」。ぼんやりとしたイメージはあっても具体的な仕事場面が浮かぶ人は少ないかもしれません。そんなちょっと正体不明な言語聴覚士ですが、実は私たちが専門とすることはみなさんにとっても身近なことばかりなんです。
前回もお話したように言語聴覚士はリハビリ専門職の一つです。言語聴覚士は英語でSpeech TherapistあるいはSpeech-Language-Hearing Therapistなどと表され、その頭文字をとってSTとも呼ばれます。英語を見ると、Speechは発話、Languageは言語、Hearingは聴覚と、いずれも「ことばのコミュニケーション」に欠かせない機能がみえてきます。そして、まさにこの「ことばのコミュニケーション」に係る問題をサポートするのが言語聴覚士の仕事なのです。
一言に「ことばのコミュニケーション」の問題といっても、その内容は多岐に渡ります。たとえば聴覚の問題、声や発音の問題、ことばや発達の問題、脳卒中や頭部外傷による後遺症からくる問題などあらゆるケースがあり、当然ながら症状も人それぞれに異なります。
言語聴覚士は、医師の指示のもと検査や評価を通して、その方の抱える問題がどこに根差しているかを見つめ、必要に応じた訓練や助言を行うことが求められているのです。
また、「ことばのコミュニケーション」とは異なりますが、「話す」と同じ口腔器官を用いる「摂食嚥下(食べたり飲んだり)」の問題にも対応しています。
言語聴覚士が関わる「話す」、「聞く」、「食べる」。どれもみなさんが日々繰り返していることばかりではないでしょうか。
けれど、みなさんのなかに「日本語の”さ”はこんなふうに発音する」とか「食べ物を噛むときは舌をこの位置にセットして…」なんていちいち考える人はいないでしょう。そんなこと意識せずとも、みなさんは食べたり話したりできてしまうはずです。
家族とご飯を食べ、友人と語らい、好きな音楽や自然に耳を傾ける。こうした時間は何気ないひとときでありながら、人生の温かさや歓びそのものに結び付いているでしょう。
そして、この当たり前のように行われる「話す」、「食べる」、「聞く」といった機能は、病気や年齢を重ねることで揺らいでしまうものでもあります。
何気ないけれど、かけがえのない。当たり前にみえて、当たり前じゃない。
そんなみなさんにとっていちばんに身近で大切な機能を支えるため、私たち言語聴覚士は日々学び、その人がその人らしい人生を謳歌するお手伝いをしているのです。
投稿者プロフィール
- 絵本作家に憧れていたという少女は、若干、変化球的に進路を選択して「言語聴覚士」に。コトバのセンスがバツグンのマイペース大阪人で趣味は刺繍と空想。おしゃべり病理医おぐらとは「イシス編集学校」の仲間。
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