「脳卒中」という言葉はみなさんも聞いたことがあると思います。日本人の死因第4位にランクインされていますが、改めて「卒中」って何だろうと気になってきたので調べてみました。
◆突然、あたる…!
『日本大百科全書』には、突然に急激な症状を発作的におこす場合を一般に「卒中」という、とあります。語源は、「卒然邪気や邪風に中る」からきているとのことで、卒然は突然の意味、中るは当たる、つまり、東洋医学的にはヨコシマな何か悪いものが突然やってきて具合が悪くなるということをいっています。
連載コラム「ミカタの東洋医学」のvol.1では、「よこしまな風…!?」と題して、華岡センセイが風邪について解説してくれていますが、病気は身体の外側から「悪いもの=邪」がやってきて引き起こされると考えられていたんですね。
一方、英語で卒中は、「stroke」。stroke自体は、約1300年頃、「武器、足、または手で与えられる打撃」という意味で単語した登場で、病気の(脳)卒中の意味で使われ出したのは、1590年代であるとか。Stroke of God’s hand「神の手の一撃」から来ていて、やはり、突然にガーンとやってくる衝撃的な症状をもって卒中(stroke)という言葉が使われてきた歴史があるようです。
特に現代においては、卒中はほとんど脳卒中のことで、脳の出血、血栓などの循環障害によって、突然に意識障害や運動麻痺をおこす病態をいいます。『日本大百科全書』の記述には、「肺卒中」という言葉もでてきましたが(エコノミークラス症候群の要因である肺動脈塞栓症の意味)、正直、医療現場で肺卒中という言葉はほとんど使われていません。ちょっと不思議です。
でも最近、突如として重篤な病気にかかるという卒中という言葉を効果的に使おうという動きもあるようで、高齢者の背骨や股の骨折(椎体骨折や大腿骨近位部骨折)を「骨卒中」と表現することで、高齢者が寝たきりになったり亡くなる原因となることに警鐘を鳴らす先生もおられます。
◆ふたつの脳卒中
さて、脳卒中は大きくふたつに大別されます。いずれも脳の血管に異常が生じるものですが、血管が破れる「出血」、そして、血管がつまる「梗塞」があります。
出血の方は、さらに脳内の血管が破れて生じる「脳出血」と脳の表面のくも膜と脳の間を流れる血管が破れて生じる「くも膜下出血」があります。脳はとっても軟らかい組織で、かつ、せまい頭蓋骨の中に入っていますから、出血が生じると流れ出た血液が脳を圧迫し、大変危険な状況になります。脳自体が、出血が要因で腫れ上がることもあり、いつも収まっている場所から脳の位置がずれてしまうこともあります(これを「脳ヘルニア」といいます)。
一方、脳梗塞には、動脈硬化によって脳の血管の内腔がせばまって生じる「アテローム血栓性脳梗塞」と、脳以外のどこかに生じた血栓が流れてきて、脳の血管にすぽっとつまってしまう脳梗塞があり、しばしば心房細動という不整脈がある患者さんは、心房の中に血の塊ができてしまい、それが流れて脳血管につまる「心原性脳梗塞」を起こしやすいので注意が必要です。
◆Act fast!
◆参考文献
脳卒中の基礎知識と予防のコツ|脳梗塞・脳出血|循環器病のトピックス|公益財団法人 日本心臓財団 (jhf.or.jp)
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投稿者プロフィール
- 趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。
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