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I♡ナース COLUMN
2024.11.18
2024.11.18
お口から輝け!「看護師の口腔ケア」
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寒くなってきて、朝起きるのがとても辛い…。そんな朝でもおざなりにできない生活習慣と言ったらなんでしょう。私は歯磨きなのですが、みなさんはどうですか。物心つく前の乳歯が1本生え始めた、赤ちゃんの頃から始まる歯磨き。すっかり生活の一部になっているのではないでしょうか。歯磨きと言えば、口の中を清潔にするだけでなく、歯や口の疾患を予防し、口腔の機能を維持するために重要な習慣です。看護では「口腔ケア」といい、大切な生活援助として位置づけられています。

 ◆歯が1本も無い場合でも口腔ケアは必要?

 先ほど、赤ちゃんの乳歯が1本生え始めたら歯磨きが始まるとお話しましたが、たとえ歯が1本も無くなったとしても口腔ケアは必要です。口の中にはたくさんの口腔内細菌が存在しています。よく歯磨きをする人でも、なんと、その数1000~2000億

食べ物をかみ砕き、飲み込む力や機能が弱くなると、よくむせこむようになり、お口の中の細菌が肺に落ち込むことがあります。これを「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」と呼びます。令和4年(2022年)の人口動態統計では死因の順位6位で年間約56,000人の方が、この誤嚥性肺炎で命を落としているのです。口腔内細菌は、他にもさまざまな全身疾患を引き起こします。特に要介護高齢者は、健康な人にとっては病原体とはいえないような細菌によって、日和見感染症を引き起こしたり、感染性心内膜炎や誤嚥性肺炎に陥ることがあります。

つまり口腔ケアは、単に歯や歯ぐきのためだけではなく、生活援助に加えて全身疾患の予防など、生命の維持・増進に直結したケアでもあるのです。

 ◆口腔ケアを怖がる患者さん

自分で歯磨きができない、口腔ケアができない患者さんには看護師が援助をします。

医療現場では、歯磨きをとても怖がる患者さんもいます。みなさんが自分で歯磨きをするとき、歯磨きを怖いと感じることはないと思いますが、何をされるのか分からず、とても不安が強い認知症の患者さんは口を開けるのさえ拒否されることも…。

事前に「歯磨きをしましょう」とこれから行うことの声掛けをして理解を促すことや、「歯磨きをしたらすっきりして気持ちがいいですよ」と前向きな声掛けをするなど事前に心の準備をする時間を取ることも必要になります。患者さん個々に合わせた物品の準備も欠かせません。お口の中を観察し、虫歯や口内炎などで痛みがないか、乾燥していていないかも必ず観察した上で必要な準備を進めます。

 ◆口腔ケアが生きる力に

私自身も入院中、看護師から口腔ケアを受けたことがあります。気管内挿管を受け、人工呼吸器で命を繋いでいた時期でした。口から気管内まで管が入れられていて、機械から圧をかけて肺まで酸素を流し込む処置です。

2週間以上、ずっと口は大きく開きっぱなし、誤って管が口から抜けないように、身体の動きを抑制されているため、頭を自由に動かすことや、寝返り、鼻の頭が痒くても自由に掻くことすらできません。ご飯はもちろん、水を飲むこともできない、そんな状況の中で私の唯一の楽しみは「口腔ケア」でした。

なぜ口腔ケアが楽しみだったのかというと、唯一、味を感じられる機会だったから。口の中がすっきりするため好きなケアでしたが、何より絶飲食が私にとっては眠れないほどの苦痛でした。そんな中で、看護師は「ぶどうやメロン味の歯磨き粉」の準備を私の家族に提案したのです。目が丸くなるほど私は驚き、目にいっぱいの涙が溢れました。生きたい、どんなに辛くても治療を頑張らなきゃ、その気持ちを支えてくれたのです。この経験から、私は「どんな体験も患者さんにとって生きる力になり得る」と実感し、臨床現場で患者さんにケアを行う際も活かしてきました。

今回は身近な看護ケアの一つでもある「口腔ケア」についてお話しました。秋から冬にかけて、美味しいものをいっぱい食べた後は、しっかりと歯磨きを忘れずに!

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投稿者プロフィール

村上 愛実
村上 愛実
勇気とガッツと愛嬌で難病を克服し、看護師の道へ。想像力と創造力がモットーで、プログラミングや動画編集もできちゃうアーティスト。愛犬と爆睡してエナジーチャージ。仲良しの妹は臨床検査技師。