コトバト通信 COLUMN
こんにちは、言語聴覚士の竹岩直子です。
2月を迎え、お正月気分もすっかり遠くなりました。ふと思い出すのは、年末年始の食卓。クリスマスケーキに、海老天をのせた年越しそば、お節料理、お雑煮。そろそろチョコレートの季節ですし、なんだかいつも食べることに夢中な私です。みなさんは最近、どんな美味しいものを食べられたでしょうか。
さて、そんな皆様にここで質問です。
『食べているときの口のなかって、どんな動きをしている?』
と、あまりに突然のクイズでごめんなさい(笑)
でも、せっかくですからちょっと考えてみてください。
私たちは食べ物を口へ放ったあと、味や香りといった感覚は堪能する一方で、歯や舌や唇といった口の運動にはほとんど注目していないのではないでしょうか。今日は、そんな〈もぐもぐ〉と動く口のなかを覗いてみましょう。
食べ物を噛みくだくことを「咀嚼(そしゃく)」といいます。「噛む」ということで歯だけの運動と思われがちですが、実はそうではないんです。試しに歯と舌の動きを追ってみると…。
〈もぐもぐ〉
1.舌が食べ物を歯の上に「運ぶ」
2.上下の歯が食べ物を「かむ」
3.舌が落ちてきた食べ物に唾液を「混ぜ」、ふたたび歯の上に「運ぶ」
(2と3を繰り返す)
〈ごくん〉
こんなふうに「歯でかんで、舌で運んで、唾液と混ぜて」を繰り返し、飲み込みやすい塊となったところを〈ごくん〉と飲み込んでいるんですね。
また、この咀嚼の一連の動きは、お餅つきに例えることもできます。
上の歯が杵、下の歯(または口のなか全体)が臼。舌はというと、臼の横にしゃがんでもち米を返す「返し手さん」です。返し手さんは餅がまとまりやすくなるよう手に水をつけてもち米を返しますが、この手の水の役目が唾液というわけです。(どうでしょう、ちょっとイメージが湧いたでしょうか?)
私たちが日々何万回と繰り返す「咀嚼」は、歯だけでなく舌や頬や唇といった口腔器官の鮮やかな連携プレーに成り立っています。試しに、舌をまったく動かさないで、あるいは、口を閉じないで(大きく開けたままで)食べてみれば、その連携の大切さを実感できることでしょう。
何気ない行為も、あらためて意識すると新たな発見が潜んでいます。
ぜひ、次のランチタイムやおやつの時間、ご自身の歯や舌の動きを追いかけてみてくださいね。きっといつもより「食べる」を体感できるはず!
それでは、本日はこのへんで。また、次回お会いしましょう!
投稿者プロフィール
- 絵本作家に憧れていたという少女は、若干、変化球的に進路を選択して「言語聴覚士」に。コトバのセンスがバツグンのマイペース大阪人で趣味は刺繍と空想。おしゃべり病理医おぐらとは「イシス編集学校」の仲間。
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