また流行りだしましたね。そうです、コロナです。ちょっと落ち着いたかと思ったら、すぐに患者数が増え始めますね。
人類が新型コロナウイルスに遭遇してから、3年半が経ちました。どなたにとっても人生でいちばん「ウイルス」に触れた時期だったと思いますが、ウイルスの特徴をどれくらい知っていますか? コロナウイルスがなぜ、あんなにどんどん変異していくか、説明できますか?
……正直、なかなか仕組みがわからない人がほとんどだと思います。ご安心ください、文系ウメ子もみなさんの仲間。
MEdit Labはですね、そんなみなさんのために、楽しんでウイルスについて学べるツールを開発しました。
それが、「MEdit ウイルスバトルゲーム」です。
おしゃべり病理医こと小倉加奈子先生と、しんしんこと發知詩織先生、そしてコラム連載中の言語聴覚士・竹岩直子さんが2023年9月10日(日)、大阪・金蘭千里高等学校にお邪魔して高校生38名といっしょにウイルスバトルゲームに挑戦してきました。この日は休日。にもかかわらず、医学に関心のある生徒さんこれだけ集まってくださったのでした。高校1年生が22名、高校2年生が16名です。
舞台裏からお話ししますとね、じつはこの授業の前日、金蘭千里の先生方でこのゲームの予習をしてくださったんですって。生物の先生から、国語の先生、化学の先生、そしてゲーム好きの先生までが、職員室ではじめてこのカードゲームで遊んでみたと。すると、「とてもよくできている」という賞賛とともに、「ルールがやや難しいのでは」という懸念も生まれたそうなんです。
たしかにこのゲーム、トランプの七並べとか百人一首の坊主めくりのように、誰でもすぐに出来るものではありません。「DNAウイルス・エンベロープ有り」とか「形質転換」とか「N95」とか、まあまあ専門的な用語がバンバンでてきます。その用語の意味を覚えないと、どんなカードを出してよいか選べないのです。
初めてこのゲームで遊ぶ高校生のみなさんが、果たして、どこまで楽しんでくださるのか……。一抹の不安を抱えながら、Meditチームは授業に臨んだのでした。が、心配は、杞憂に終わりました。
最初の1回戦こそ戸惑いが見られたものの、ものの20分もすればスムーズな対戦へ。金蘭千里のみなさんのポテンシャルの高さがなせるわざでしょう。
そして、プレイを重ねるにつれて「経口感染を防げなかった……」とか「うわー、逆転写酵素!」なんて言葉が自然と出てくる没頭ぶり。遊びながら、DNAウイルスとRNAウイルスの違いや、それに対する対応策まで一挙に頭に入っていく様子でした。
一時間ほどしたところで、小休止。おしゃべり病理医やしんしん先生から、ちょっぴり専門的なレクチャーがなされました。
「コロナウイルスは、RNAウイルスのエンベロープ有りです。エンベロープがあるから、アルコール消毒が効くんです」
ゲームで遊んだあとならば、ウイルスにDNAウイルスとRNAウイルス、エンベロープ有り、無しの4種類があること、そしてそれらの特徴がなんとなくわかるわけです。その状態で聞くと、なぜ私たちが、この3年間、アルコール消毒をし続けたのか納得できます。
しんしん先生が続けます。
「ノロウイルスは、RNAウイルスでエンベロープがありません。つまり、アルコールが効きません。じゃあその代わりに何を使ったらいんでしょう。ご家庭なら、ハイターなどの次亜塩素酸が効きます。でも、ハイターで手を消毒するわけにはいきませんよね」
「だから、やっぱり手洗いなんです。私たち医療従事者は、とにかく手洗いをします」
ウイルスバトルをプレイすると「手洗い最強」ということが実感されるわけですが、これは現実に即したものなのですね。
▲8チームが、それぞれウイルスチームとヒトチームに分かれての対戦。勝敗はほぼ互角。
ひととおりウイルスの挙動やヒトの防衛策を学んだみなさんに、2人からさらなるミッションが課せられました。各チームには、2枚の白紙カードが配られます。しんしん先生がにっこりと微笑みます。
「ウイルスバトルゲームに、あったらいいなと思えるカードを追加してみてください」
今日はじめて触れたゲームをブラッシュアップするという、これまた難易度が高いもの。けれども、すぐにアイデアが生まれていきます。
「ウイルスの経皮感染を防ぐカードがないから、ヒトが防護服でガードできるようにしよう」「ウイルスの感染経路として、母子感染カードを追加しよう」「母子感染を防ぐものとして、帝王切開カードをつくろう」
つくったカードはすぐさまプレイに投入。それぞれのチームが、自分たちのチームならではのルールを追加して、ウイルスへの理解を深めたのでした。
▲その場で調べ学習をするチームも。防護服の実際の値段が500円から25000円ということを調査し、カードの持ち点に反映させたとか。
▲右上のカードがその場で追加されたもの。N95と防護服で、ヒト側は完全防備。
ウイルスバトルゲーム、おもしろそうでしょう。MEdit Labが出張授業をするときには、トランプサイズのカード一式をお持ちします。が、じつはこのカード、みなさんもダウンロードできるんです!
こちらのSTEAM教材のサイトに、A4用紙に印刷できるカード一式とルールブックがアップされています。ぜひ、印刷して、ご自宅や学校で試してみてください。生物の点数が、一気にアップするかもしれません。
■金蘭千里中学校・高等学校への出前授業レポートまとめ
▷出張レポ:ついに、MEditチーム大阪進出!【金蘭千里学園MEdit授業】
▷中学:医者の必須スキルを鍛える「お絵かきゲーム」って?【大阪・金蘭千里中学での出前授業】
▷高校:ゲームで学ぶ、コロナウイルスの弱点【大阪・金蘭千里高校での出張授業】
投稿者プロフィール
- 聞き上手、見立て上手、そして何より書き上手。艶があるのにキレがある文体編集力と対話力で、多くのプロジェクトで人気なライター。おしゃべり病理医に負けない“おせっかい”気質で、MEdit記者兼編集コーチに就任。あんこやりんご、窯焼きピザがあれば頑張れる。家族は、猫のふみさんとふたりの外科医。