診療すごろく COLUMN
- 豊作の秋。順天堂大学でも実りの秋を迎えました!たくさんの「Student Doctor」が誕生し、病院へとデビューしたのです。
●学生なのか?医師なのか?
「Student Doctor」とは、病院での臨床実習を行っている医学部の4年~6年生のことです。医学部は6年制ですが、教室に座って授業を聞くような講義は3年半ほどしかありません。4年生の後半からは医師と同じように白衣をきて病院に通い、手術を見学したり、病棟で入院患者さんのお話を伺ったりしながら学びます。
患者さんへのお話の仕方や外科手技など、教科書だけでは学べないことを現場で学ぶ臨床実習は医学部生には欠かせません。一方で、医療の現場では患者さんの命に関わる場面も多く、医学部生全員がこの臨床実習に進めるわけではありません。全国共通の試験に受かる必要があるのです!
以前のコラムで研修医を若葉マークの医師とご紹介しましたが、車の免許に例えるならば、臨床実習は路上教習、「Student Doctor」認定証はそのための仮免許といったところです。ちょうど今年「医師法」が改正され、今までは医師しかできなかった「医業」を「Student Doctor」が行ってよいと認められました!ちなみに、仮免許がとれないと臨床実習に進めず、即留年が決定となりますので、4年生は1つの山場といわれます。
●全員問題がちがうテスト!?
「Student Doctor」になるための試験は、国家試験とは違って大学ごとに受験します。順天堂では4年生の8月末~9月に行われます。知識面を問うテスト、実技を問うテストの2種類の試験があります。
知識のテストは「Computer-based Testing (CBT)」といいます。その名の通り、コンピュータを使い、1時間のテストを1日で6コマ、その中で320問が出題されます。医師国家試験が2日間で400問ですので、1日の問題数としてはかなりハードです。
さらに、この試験の面白いところは受験生一人一人問題が違うことなんです!「項目反応理論」といって、問題の難易度を採点に反映させるテスト方式なのですが、実際に解く問題が違っても平等に評価できるようスコアが算出されます。
私も10年前にCBTに挑みましたが、なんとも不思議な気持ちでした!普通はテストの後に「あの問題、難しかったよねー」とか「これ忘れてた!」なんて友だちと盛り上がるものですが、CBTの時はお互いに話がまったくかみ合わないのです。結果が届くまでとてもソワソワしました。
●問題がわかっているのに、緊張する!
一方で、実技のテストは「OSCE(Objective Structured Clinical Examination)」といい、私たちは「オスキー」と呼んでいます。こちらでは、医学部の学生さんやボランティアの方を相手に診察をしているところを評価されます。例えば、聴診器で胸の音を聞く、心臓マッサージをする、採血をする…などです。
OSCE最大の敵は緊張です!OSCEでは出される問題は限られているので、事前に練習ができます。友達を相手に何度も練習して臨むのですが、受験生一人ひとりブースに入り、評価する先生が見つめる中で、初対面の方に診察する、という試験には受験生の多くが緊張します。私自身も大きな失敗はしなかった(はず)ですが、患者さんへの挨拶の声が震えていた記憶があります。
大きな2つの試験を乗り越えた「Student Doctor」が、先月から私たちの病院にも来ています。臨床実習では上級医から教わること以上に、病院でお会いする患者さんからたくさんのことを学びます。大学病院を受診される方には、外来や入院病棟で「Student Doctor」の診察や見学をお願いさせていただく場合があります。医療チームの一人として病院にたつ「Student Doctor」の実習にご協力をよろしくお願いいたします!
投稿者プロフィール
- 全方位に目があるんじゃないかという細やかな気配りのできる逸材。寛大で誠実、緻密な仕事ができるのに人に優しい。病理医とSTEAM教育研究者の二足の草鞋を履くお母さん。愛くるしいパンダに似ているのであだ名は「しんしん」。
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