メリー★クリスマス! 年末年始は町のイルミネーションも美しく、うきうきしますね。高校生、大学生のみなさんは冬休みを満喫されていますか?
◆ドクターの年末はいかに?
ドクターたちもみなさんの想像以上に年末行事を楽しみます。コロナ禍はそれどころではありませんでしたが、12月になると忘年会やクリスマス会、そしてその年の勤務最終日近くには、「メス納め」「ガス納め」という行事が手術室では恒例です。いずれも1年間、大きな医療事故もなく無事、手術ができたことをお祝いし、来年に向けて頑張りましょう!と一丸となる会です。外科医は「メス納め」、吸入麻酔薬(つまりガス)を扱う麻酔科医は「ガス納め」とそれぞれ呼ぶのです。
ドクターの中には芸達者な方々もたくさんいて、バンド演奏を披露したり、マジックをはじめとした一芸を披露して、医療スタッフを楽しませます。私の勤務する病院では、初老の男性ドクターが銀色のラメラメワンピを着てビヨンセになりきり、キレキレのダンスを踊ってくれたりしたこともあります(その先生のお部屋からは毎夜、ビヨンセの曲が漏れ聞こえてきていたのだとか)。羽目を外しすぎた芸を披露した研修医がエライ先生から怒られた忘年会があったのも懐かしい思い出ですし、おしゃべり病理医もオペ室に向かう廊下で、「逃げ恥」の恋ダンスを特訓したこともありました。
◆「クリスマス・年末特集号」が名物!由緒ある医学雑誌
ふだんはシビアな研究競争の現場となる医学雑誌においてもクリスマスを存分に楽しむムードが漂います。
1840年から180年以上も続く由緒ある医学専門雑誌「British Medical Journal」では、毎年クリスマス&年末特別号として、イグ・ノーベル賞イグ・ノーベル賞を彷彿とさせるユニークな記事がたくさん掲載されます。夏くらいにその年のクリスマス特集号に載せる記事を特別に募集するのです。データに基づく本格的な原著論文以外にもこの時ばかりは、エッセイのような軽い読み物までたくさんの記事が採択されます。
過去には「外科医の誕生日に行われた手術の死亡率」(実は死亡率が高いというデータが…。ちなみに慶応義塾大学の研究です)や「“血も凍るような”ホラー映画で血は固まるのか」(血が固まりやすいというデータが…)など、タイトルを見ただけで結果が気になる研究や、休憩時間の紅茶に合うビスケットの条件を検討したイギリスらしい研究、あるいは労働時間外に論文が投稿される比率を調査した研究(中国人研究者が週末や休日に論文を投稿する比率が高く、中国人研究者の勤勉性というか、働きすぎが実証された)もありました。
ここで、過去の記事の中でもひときわクリスマスらしいものをご紹介しましょう。研究タイトルは、「ルネサンス絵画にみるバビンスキー徴候」。
上記論文のfigureより。それぞれの絵画に描かれている赤ちゃんの足に注目。指が反り返っていたりします
バビンスキー徴候は、赤ちゃんに見られる原始反射のひとつです。足の裏の外側をかかとからつま先の方に向かってスーッと刺激すると、足の裏が反り返って指も一緒に広がるなんともかわいらしい反射です。だいたい1歳くらいを目安に見られなくなり、自分の意志で身体を動かすことができるようになっていきます。赤ちゃんにこの徴候が“みられない”のは異常ですが、大人でこの徴候が“みられる”ようになるのは運動神経機能の異常を意味します。
バビンスキー徴候がよくわかるYouTube(医学生のみなさん、国家試験に出ますよー)
この研究では、ルネサンスの絵画に描かれた赤ん坊のイエス・キリストの足に注目。バビンスキー徴候がどのくらい正確に描かれているかを調査しました。すると検索した302点中90点、約30%の絵画に描かれていたのだとか。ルネサンス絵画の写実性、驚くべし!の結果だったのです。なんともクリスマスらしい研究なのでした。
おしゃべり病理医としんしんも、このクリスマス特集号に研究論文を投稿してみたいね!と、ある作戦を練っているところです。みなさんにいつかお披露目できるように研究したいと思います♪
※参考文献:
「ルネサンス絵画にみるバビンスキー徴候」
投稿者プロフィール
- 趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。
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