ふしぎな医学単語帳
ふしぎな医学単語帳 COLUMN
2024.01.08
2024.01.08
「エコノミークラス症候群」に要注意!
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元日、石川県能登半島を中心に大きな地震が発生しました。被災されたみなさまにおかれましては、さぞお辛い日々をお過ごしのこととお見舞い申し上げます。

避難所や慣れない場所での生活が長引く中、感染症の蔓延や持病の悪化など、様々なことが懸念されるのですが、狭い場所にじっと座ったままでいることで危険性が増す「エコノミークラス症候群」には特に注意が必要です。

◆飛行機で起こる病気?「エコノミークラス症候群」

エコノミークラス症候群は、「深部静脈血栓症」に起因する「肺動脈塞栓症」のこと。ビジネスクラスだったらかからない、というわけでもありませんので、最近では、「ロングフライト血栓症」という名称が使われることもあります。ただし、飛行機で発症する頻度が高いかというと、実は、入院患者さんや避難所生活を余儀なくされている方に多く発症することがわかっており、特に高齢の方は脱水になりやすかったり、血管が硬いため、よりリスクが高くなります。

この病気は、足の奥の静脈を流れる血液が固まって「血栓」が生じ、それが血流に乗って、肺の動脈を塞いでしまう(塞栓)病態をいいます。肺動脈が完全にふさがれてしまうと、いくら息を吸っても呼吸をしていないことと同じ状態になり、重篤な場合には亡くなってしまうこともあります。

狭い場所で長時間足を下にした状態で動かないと、静脈を心臓に戻すためのふくらはぎの筋肉のポンプ作用が利かなくなり、血が固まりやすくなります。妊婦さんなど、もともと足がむくみやすい状態だと一層、そのリスクは増しますし、スポーツ選手のような筋肉をしっかり鍛えている若い方でも、脱水で血液がどろどろになるとやはり血が固まりやすくなるので油断は禁物です。

特に避難所では、エコノミークラス症候群を発症される方が少なくありません。雑魚寝や車の中での無理な姿勢での就寝もリスクになります。こまめな水分補給や足の指全体でグーパーグーパーしたり、足首を回すなど、ふくらはぎの筋肉を適度に動かすことが予防策となります。

◆エコノミークラス症候群予防のための参考動画◆

▲「エコノミークラス症候群の予防」TKU official チャンネルより。簡単にトライしやすい短めの動画でおすすめです(by おしゃべり病理医

◆エコノミークラス症候群予防のための参考資料◆

厚生労働省「エコノミークラス症候群の予防のために(リーフレット)

 

投稿者プロフィール

小倉 加奈子
小倉 加奈子
趣味は読み書き全般、特技はノートづくりと図解。一応、元バレリーナでおしゃべり(おえかき)病理医。モットーはちゃっかり・ついで・おせっかい。エンジニアの夫、医大生の息子、高校生の娘、超天然の母(じゅんちゃん)、そしてまるちゃん(三歳♂・ビション・フリーゼ)の5人+1匹暮らし。